パンフレットをでお届け
資料請求

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
世界各地をめぐりながら、現地に暮らす人びとと直接出会う国際交流は、ピースボートの船旅の醍醐味です。近年ではクルーズ乗船者も日本以外にアジア各地から集い、寄港地だけでなく船内にも国際色豊かな空間が広がっています。

洋上では毎日大小さまざまなイベントが行われ、言語や文化を超えて多くの方が参加できるよう、さまざまな工夫が凝らされています。船旅の参加者自らが主体となって企画や準備から運営にまで携わることができるイベントも多く、ピースボートでは船内のいたるところで草の根の国際交流を目にすることができます。こうした手づくりで等身大の交流には、共生社会を築くためのエッセンスが含まれているはずです。
世界各地をめぐりながら、現地に暮らす人びとと直接出会う国際交流は、ピースボートの船旅の醍醐味です。近年ではクルーズ乗船者も日本以外にアジア各地から集い、寄港地だけでなく船内にも国際色豊かな空間が広がっています。

洋上では毎日大小さまざまなイベントが行われ、言語や文化を超えて多くの方が参加できるよう、さまざまな工夫が凝らされています。船旅の参加者自らが主体となって企画や準備から運営にまで携わることができるイベントも多く、ピースボートでは船内のいたるところで草の根の国際交流を目にすることができます。こうした手づくりで等身大の交流には、共生社会を築くためのエッセンスが含まれているはずです。
2025年8月に出航した地球一周の船旅 Voyage121では「Time For Peace 誰一人取り残さない」というクルーズテーマを掲げ、109日間の船旅を通じて、すべての人びとの人権と尊厳が守られ、誰もが一員として包摂される社会のあり方について考えました。このレポートでは、地球一周の船旅のハイライトの一つで毎回1,000名以上の乗客が参加する「洋上大運動会」の実行委員長を務めた森光音々さんのインタビューから、共生社会を実現するためのヒントについて考えます。

ピースボートは「ひとつの社会」

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
森光音々さん(写真中央)
私が船に乗って最初に感じたのは、ピースボートは単に乗客が乗り合わせているだけではなく、この船自体がひとつの社会であり世界である、ということでした。乗客や乗組員を含めて船内にいる人びとは出身地や文化、世代も多様で、もちろん飛び交っている言語は日本語だけではありません。もちろん船内でのマジョリティは日本語話者なのですが、中国大陸や台湾、シンガポール、韓国などからの乗客もいるため船内のアナウンスなども必ず日英中韓の4言語対応になるため、日本国内と海外の狭間のような空間でした。

一人ひとり歩んできた人生が異なるため、日々の船内生活を通じてさまざまな考え方や価値観にふれることができました。

運動会の実行委員長に立候補!

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
洋上大運動会の実行委員長に立候補
さまざまなイベントに積極的に参加したいと思って乗船した船旅ではありましたが、船に乗るまで、まさか自分が運動会の実行委員長をやるとは想像もしていませんでした。もともと学生時代は何かと運営側にまわることが多かったのですが、乗船前は「実行委員はさんざん経験したから船では絶対にやらない、イベントは参加者として楽しむ」と言っていたんです。ところが船旅が始まってさまざまな船内企画に参加するうちに、1,000人以上の乗客を巻き込む運動会づくりに自分の経験や知識がどれだけ活かせるのか試したいという気持ちが湧きあがり、実行委員長に名乗りを上げました。

今回のクルーズテーマが「Time for peace 誰一人取り残さない」だったので、実行委員長を務めるにあたって、運動会に参加する乗客はもちろんの運営側の実行委員も含めて誰一人取り残さないイベントをつくる、と決心しました。

最初の山場は競技決め

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
運動実行委員ミーティングの様子
運動会づくりを進めるうえで最も難航した事柄のひとつが競技決めでした。「運動会」はある種日本特有のイベントです。日本で生まれ育った人同士では通じても海外の人にとっては意味やルールを理解するのは難易度が高いであろうこと、初めて運動会の文化にふれる人に向けた言語対応も必要になることなどが想定され、これがグローバルなイベントづくりなのか……と思わされました。

結果的に全部で30〜40ぐらい競技の案が出てそれらを絞るだけでもひと苦労でした。言語やジェンダー、衛生面、安全面などで基準に満たないため却下せざるを得ない競技もあった一方、発案者の希望も最大限叶えられるようにしたかったので、そのバランスをとるのが大変でしたね。

最も苦心した言語対応

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
応援のメッセージも日英中韓の4言語
もうひとつ大変だったのは、日英中韓4言語でのアナウンスでした。この船旅には日本以外にもアジア各地からの乗客が参加しているので、競技の説明や事務連絡など、あらゆる伝達事項に言語対応が求められます。何かを説明する際には必ず日英中韓の各言語でアナウンスをするため、時間も4倍かかります。

例えば、司会が「皆さん盛り上がっていますか?」と全体に投げかけるとします。最初に日本語で言うと全体のうち比率の多い日本語話者だけが先に反応してしまいその後に続く言語でのアナウンスがかき消されてしまうため、日本語を解さない人たちが取り残されてしまう。かといって「盛り上がっていますか?」と聞かないのも物足りません。解決策として、先に日本語以外の言語でアナウンスをした後、最後に日本語で「盛り上がってますか?」と聞いたりと、さまざまな工夫を凝らしました。ほかにも、拍手を求めるタイミングひとつとってもそうした配慮が必要です。その試行錯誤が何よりも大変でした。

励みになった「気にかけてくれてありがとう」の声

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
言語も年代もさまざまな人たちが参加する運動会
競技のルールなども、口頭で説明するだけよりも視覚的に示したほうがわかりやすいので、デモンストレーションを盛り込むなど工夫しました。やはり船内のマジョリティは日本語を話す人たちなので、どうしても競技練習や装飾の集まりでも中心に近い部分は日本語話者ばかり集まってしまい、日本語を理解しない人は周縁化されてしまいます。なので、私自身海外からの参加者とも積極的にコミュニケーションを取ることを心がけ、また周囲にもそのように働きかけました。お互いの共通言語がない中でもこちらのつたない英語で意図を伝えたり、スマホの翻訳アプリなども駆使しながら意思の疎通を図りました。

皆さんとても寛大で、まったく日本語がわからないにもかかわらず、身振り手振りで伝えたことを理解してくれました。嬉しいことに海外の方から「気にかけてくれてありがとう」「運動会楽しみにしているよ」という言葉をたくさんもらい、次第に普段の船内生活でも声を掛け合うようになって交友の輪も広がりました。

本番当日は1,200名が参加!

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
運動会当日の人数カウントには約1,200名が集まりました
運動会当日はデッキに集まった参加者の人数をカウントするのですが、およそ1,200名もの人びとが集まりました。たくさんの方が楽しんでいる様子が伝わってきて、やった甲斐があったと思いました。
もうひとつ印象に残っているのが、運動会の準備を通して主に言語の壁を乗り越える方法について考え続けたことで、それ以外のハンディにも注意が向くようになったことです。

準備段階では海外からの参加者をどう巻き込むかで頭がいっぱいだったのですが、当日本番を迎えてみたら、荷物を置いて座席を確保していると足の不自由な方が座れないと本部に言いに来てくれた方がいたり、子どもたちが危なくないか、きちんと楽しめているかを気にかけてくれている人がいたりと、一つ何かを気に掛けたことがきっかけとなって、他のさまざまなことまで気を配れるようになっていたんです。

運動会を通じて、それ以外にも多様な人の多様な状況を踏まえた視点を持つことの大切さを学びました。ここで学んだことは、絶対に今後の人生で役に立つと思います。

「誰一人取り残さない」と向き合い続けること

【特集:共生の船】「誰一人取り残さない」洋上大運動会を目指して
ともに「誰一人取り残さない」運動会をつくり上げた実行委員のメンバー
運動会の準備期間中は、”囚われている”といえるほど「誰一人取り残さない」に向き合い続ける日々でした。今振り返って感じるのは、世界中の人びとが「誰一人取り残さない」という考えをもつことができれば、今回の洋上運動会のような平和な空間が生まれるのではないかということです。もっと多くの人が「誰一人取り残さない」という視点を取り入れられれば、日々の生活の中でも「あ、この人困っていそうだな」とさまざまなことに気付けるようになるのではないかと思います。

私がそのために大切だと感じるのは、人の意見をきちんと聞くことです。いくら個人で「誰一人取り残さない」と考えていても限界があって、私も運動会の準備中に「海外の人にはそれでは伝わらない」と指摘され初めて気付くことがたくさんありました。自分では気付いているつもりでも、抜け落ちてしまっていたり思い込んでいたりすることが人知れず誰かを傷つけているかもしれない――「つもり」ではいけないということも、運動会の実行委員長を通して得た大切な学びです。

このレポートを読んだ方におすすめ