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過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録

過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録
チュービンゲン大学の学生(第102回ピースボート)
ピースボートの船旅では、2005年から、ドイツのチュービンゲン大学とベルクホフ財団の提携の元で、平和教育プログラムを行っています。

この記事は、ピースボート第102回地球一周の船旅でのプログラムに参加したドイツ・チュービンゲン大学の学生によるラジオシリーズでの報告を、日本語訳し編集したものです。

(原文:レスリー・ハーヴェーナー、ヨシュア・ベーア、ヤンナ・アーティクス)
チュービンゲン大学の学生(第102回ピースボート)
ピースボートの船旅では、2005年から、ドイツのチュービンゲン大学とベルクホフ財団の提携の元で、平和教育プログラムを行っています。

この記事は、ピースボート第102回地球一周の船旅でのプログラムに参加したドイツ・チュービンゲン大学の学生によるラジオシリーズでの報告を、日本語訳し編集したものです。

(原文:レスリー・ハーヴェーナー、ヨシュア・ベーア、ヤンナ・アーティクス)

『ピースボートに乗船したチュービンゲン大学の学生の記録』

過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録
私たちがピースボートの船旅に参加する上での最大の取り組みは、「過去と向き合う」というテーマでプレゼンテーションを行うことでした。

第二次大戦中のナチス政権の戦争犯罪について、ドイツがどのように対処してきたか、中でも特に、戦争が現在どのように記憶されていて、ドイツの若者はどう捉えているのか、といったことを説明しました。

プレゼンテーションの後には、日本人の参加者と対話の機会をもち、過去の戦争の捉え方に関するドイツと日本での違いについて、刺激的な議論を交わしました。

日本の参加者はよく、とても驚いた様子で、どうしてドイツの過去についてそんなにオープンに話せるのかと尋ねてきました。

私たちは、「二度と繰り返さない」という原則がドイツを形成していて、それは異なる政治的信条をもつ人の間で共通であること、そして、過去の戦争についてドイツでは定まった理解が共有されていることを説明しました。

この説明に対する日本の人々の反応を見れば、ドイツと日本ではかなり状況が違うということが想像できます。

ドイツと日本の違い

過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録
ドイツでは学校で、ナチス政権の本質と犯罪について学ぶことが義務づけられています。

最初に歴史や語学の授業で、後に政治学の授業で、詳しく学びます。戦争をした過去を記憶し続けることは、ドイツの社会や教育制度にとって非常に重要なことです。

しかし日本では状況が違うということを、私たちは若い日本の参加者から学びました。

日本の戦争の話は、政治的にも普段の生活の中でも論争の的だから話題にするのは非常に難しいと言うのです。

結果として、彼らは第二次世界大戦における日本の役割についてほとんど教わっていないようです。

しかし、年配の参加者からは、日本軍が当時中国や韓国などで行った戦争犯罪について聞くことができました。

ドイツでも日本でも、占領国側が設置した戦争犯罪法廷がありました。

しかし、ドイツがナチスの指導者達を切り捨てたのに対し、日本では天皇が政治的・軍事的地位を放棄しただけで、皇室制度は維持され、裕仁天皇は1989年に亡くなるまで皇位を維持しました。

日本は平和の国として見られることが多く、原爆が投下された後にその灰の中から立ち上がった不死鳥かのような印象もあります。

学び方・伝え方

過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録
ドイツでは、学校でホロコーストについて学ぶとともに、記念館や強制収容所跡地を訪問して犠牲になった方々の話を聞きます。

EU内の学校や大学との交流プログラムがあり、集団としての戦争の記憶について話し合います。

私たちは、南京大虐殺や韓国のいわゆる「慰安婦」について、日本の歴史の教科書での記述内容や表現が長年議論されていて、学校の教室で、日本の戦争犯罪についての説明がされなかったり制限されたりしているということも学び、その状況を憂いています。

ピースボートの船内では、最初は躊躇していた方々も、段々と慣れて、食事の席やバー、デッキでも、ドイツと日本の戦争の見方についてもっと話したいと、多くの人が私たちに声をかけてくるようになりました。

日本人の学生と一緒に夜遅くまで語り合い、議論もしました。特別な思い出です!

話している中で、多くの人が、過去の戦争と折り合いをつけるためのロールモデルとしてドイツを見ていると気づきました。私たちにとっては不思議な、慣れない視点でした。

まだまだやるべきことがある

過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録
私たちは、ドイツが戦争記憶の文化のために何をしてきたのか、それが日本とどう違うのか、少しずつわかってきました。

平和を研究する者として、そして、ナチスドイツに暮らした祖父母や曾祖父母をもつ私たちとしては、戦争から長い年月が経った今でも、まだまだやるべきことがたくさんあると感じています。

最近ドイツでは、定着した戦争の記憶に対して、右翼団体からの攻撃が増加しているということも私たちは説明しました。

過去の戦争とは関係がないと感じ、それゆえにホロコーストを記憶する歴史的責任を感じない若者がいます。

ドイツでは、きちんと過去に向き合ったと言える状態になったものの、その成果は常に守り維持する必要があることを心に留めなければいけません。怠れば、過去が私たちの未来に影を落とすことになるでしょう。

会話を可能にする安全な空間

過去とどう向き合うのか:チュービンゲン大学の学生の記録
洋上でプレゼンを行うチュービンゲン大学の学生たち(第102回ピースボート)
私たちは、船旅の参加者と、興味深く、大切なことをたくさん話し合いました。ピースボートは安全な空間として、多様な会話をも可能にする存在です。

私たちが観光客として日本を訪れていたらできなかったであろう会話ばかりです。

素晴らしいピースボートでの航海でした!


*このレポートは、TuebingenのWueste Welleで放送されたラジオシリーズを基にしています。

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