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地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)

地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)
スナハイ村の小学校に通う子どもたちと
ピースボート地雷廃絶キャンペーン(P-MAC)は、これまで20年以上にわたって活動してきました。P-MACの活動の1つである「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」は、200万㎡以上の土地の地雷除去を支援し、大きな成果を上げています。その活動の中心メンバーである森田幸子が、これまでの歩みを振り返ります。最終回となる3回目は、長い関わりとなったスナハイ村での活動や、カンボジア地雷検証ツアーの様子、そしてコロナ禍で現地に行けない中でもできることなどを紹介しています。
スナハイ村の小学校に通う子どもたちと
ピースボート地雷廃絶キャンペーン(P-MAC)は、これまで20年以上にわたって活動してきました。P-MACの活動の1つである「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」は、200万㎡以上の土地の地雷除去を支援し、大きな成果を上げています。その活動の中心メンバーである森田幸子が、これまでの歩みを振り返ります。最終回となる3回目は、長い関わりとなったスナハイ村での活動や、カンボジア地雷検証ツアーの様子、そしてコロナ禍で現地に行けない中でもできることなどを紹介しています。

20歳のソッキーア校長と子どもたち

地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)
スナハイ小学校の先生たち。左がソッキーア校長
2011年から地雷除去支援を続けているプレアヴィヘア州のスナハイ村は、ジャングルだった場所に、土地を持たない貧しい人々が移り住んだことで、2005年にできた新しい村です。人々は引っ越してきてから、この土地が地雷原だと知りました。P−MACは、これまでに村の5か所で地雷除去支援をしました。2016年には地雷除去と小学校の建設をしたので、それからは毎年この小学校を訪れて、校長先生と話をしています。

パウ・ソッキーアさんは20歳のとき、スナハイ小学校の開校と同時に校長としてやってきました。彼は教師養成学校を卒業後に、18歳で教師になりました。1回目の記事で書いたように、カンボジアでは教師不足が続いていて、特に地雷原が残る村にまで来て教師をしようと思う人はなかなかいません。スナハイ小学校に赴任してきても、ジャングルに囲まれて何もない村で暮らすことが難しく、短期間で去ってしまう先生も多くいました。

ソッキーア校長はそんな状況の中でも「ここは生まれ故郷によく似ているし、ここの子どもたちが大好きだから」と、小学校の隣に家を建て、この村で暮らしていくことを決意しました。

スナハイ村に行くたびにソッキーア校長と話をすると、いかに大変な状況の中でも工夫をこらしながら学校運営を続けていることがわかります。村の中にはまだ地雷が残っているので、学校でも地雷について子どもたちに伝えています。机やイスが足りなくなったら、自ら大型トラックを運転して他の村の学校でいらなくなった備品を引き取りに行きました。

村人は家の周辺にゴミを捨てたままにしていましたが、小学校では子どもたちに掃除することや、ゴミはゴミ箱に捨てる習慣をつけるよう指導しています。子どもたちのために図書館をつくりたいと、休日には他の先生や村人の協力を得て、図書館の建設作業をしていました。手洗いの習慣もなかったので、遊んだ後やトイレの後には手を洗うことを教えました。

ハッピーシェアで手洗い習慣

地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)
子どもたちと歌を歌いながら手洗いの方法を教えている
この手洗い習慣を子どもたちに根付かせたいというソッキーア校長の話から、私たちがスナハイ村を訪問するたびに、石けんを届けるようになりました。ピースボートには「ハッピーシェア地球便」というプロジェクトがあり、LUSH(株式会社ラッシュジャパン) の協力を得て、必要な場所に石けんを届けています。2017年からはスナハイ小学校に石けんを届ける「カンボジア手洗いプロジェクト」をはじめました。

私たちは石けんを届けて、子どもたちに手洗いの仕方を教えます。普段は、先生たちがその石けんを管理し、学校で使えるだけではなく家に持って帰って使うように日々、指導しています。石けんを使いだしてから、子どもたちの体調不良はかなり減りました。ピースボートがこの村を訪れるのは年に2回ほどなので、このような活動を続けていくには校長との協力関係はとても大切です。

実はスナハイ小学校では、他にも様々な問題があります。近くにはまだ地雷原が残っていたり、手洗いに必要な井戸が枯れてしまったり、生徒数が増えて教室が足らなくなったり、校舎に雷が落ちたり、必要な経費が出ないなど、数え上げればきりがありません。それでも、子どもたちのことを第一に考えて、できることから少しずつ行動にうつしているソッキーア校長は、私たちにとって貴重なパートナーです。

行ったからこそわかること

地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)
スナハイ村の子どもたちと交流
P-MACは、ピースボート地球一周の船旅で「カンボジア地雷問題検証ツアー」を行ってきました。このツアーではカンボジアの内戦の歴史を学び、地雷除去現場を見学し、地雷被害者や支援をしている村の人々と交流します。私は、このツアーのプログラム作りを担当しています。2003年頃からこれまでに約40回のツアーを行い、のべ800人が参加しました。

私がツアーを作るうえで大切にしていることは、参加者にツアーで出会った人々とカンボジアという国を好きになってもらえるようなプログラムにすることです。参加者の多くが、船に乗る前にボランティアスタッフとして「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」の街頭募金活動に参加します。勉強会などを通して地雷問題の深刻さを知り、自分たちができることとして募金活動に参加してくれます。そして、自分たちが集めた募金がどのように使われているかを知りたい、支援をしている人々に直接会って話がしたいという想いから、ツアーに参加します。

そんな彼らが実際に参加して一番驚くことは、「とても楽しいツアー」だということです。参加者が事前に学んでいたことは、今も地雷被害に遭う人がいること、毎日地雷除去作業が行われていること、地雷原のすぐそばで暮らしている人々がいることなど、カンボジアの深刻な状況です。もちろんツアーの中でも、聞くだけで辛くなるような地雷被害者や地雷原の村で生活する人々の話しを聞く機会が多くあります。それと同時に、彼らとの交流の時間は本当に楽しいものです。

地雷被害者と一緒にダンスをしたり、車いすバスケットボールをしたり、カンボジアの伝統楽器の演奏を教えてもらったり...。コーケー村やスナハイ村の小学校で子どもたちと縄跳びやサッカーをしたり、歌を歌ったり...。そのような交流を通して参加者の気持ちは「支援をしてあげる」から「私の知っている人たちの力になりたい」に変化するのだと思います。

イメージとのギャップに悩む人も

地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)
地雷被害者を支援するNGOで話を聞く
ただ、中にはカンボジアに来る前に知ったことや思っていたことと、自分の目で見たカンボジアとのギャップに苦しむ人もいます。事前に学んできたからこそ、目の前にいる地雷被害者や子どもたちの楽しそうな様子が、あまりにもイメージとかけ離れていて、「深刻な状況だと聞いたけれど、一緒に過ごしてみたらそんなに大変そうじゃない」「本当に支援は必要なのか?」と悩みます。そう考える人は、それだけ強い想いを持って、募金活動やこのツアーに参加しているということだと思います。

そんな時は、できる限り事実を伝えることが大事だと思っています。ツアーで出会う人々はほんの一部の人たちです。私たちの前で体験を語れる地雷被害者は、辛い時期を乗り越えたり社会復帰を目指せるようになった人たちです。その後ろには何百人もの自殺したり、心を病んだり、ひきこもりになったりしている被害者がいます。ツアーで聞いた体験談や自分の目で見た状況以外にも多くの事実があります。そんな事実を丁寧に伝えていくことが、私にできることだと思います。

ツアーの最後の感想で「募金活動している時は与える側だと思っていたけど、カンボジアに来てみたら逆にいろんなことを与えてもらった」「出会った人たちに元気をもらった」「またカンボジアに来たい」というような感想をもらえた時は嬉しくなりました。

地雷問題を解決するためには長い時間がかかるものだからこそ、参加者には地球一周の船旅が終わった後も、それぞれができる方法で地雷をなくすための行動に移してもらいたいと思っています。その第一歩として、ツアーで出会った人々やカンボジアのことを好きになってもらえるように、学べるかつ楽しくておもしろいプログラム作りを考えています。

コロナ禍でもできること

地雷被害は過去のものではない・森田幸子と「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」(Vol.3)
スタディーツアーで地雷除去現場を訪問
2021年2月現在、新型コロナウイルスの感染拡大のため、これまで全国で行っていた街頭募金活動が行えないまま1年が経とうとしています。ピースボートの地球一周の船旅も2020年はすべてが中止となりました。それでも、地雷をなくすための活動はこれからも必要です。

今、この状況でできることとして、オンライン勉強会やSNSでの情報発信に力を入れています。P-MACのオンラインショップもオープンしました。ご購入いただくと利益分はすべて地雷廃絶のための活動に使われます。また、ご寄付の受付も行っています。下に詳細ページへのリンクを載せているので、ご覧ください。

カンボジアでは1992年に地雷除去活動が始まり、2019年末までに約1,900㎢の土地の地雷除去が完了しました。その結果、107万個の対人地雷と25,158個の対戦車地雷、281万個の不発弾が処理されました。

それでも、カンボジアには更に2,000㎢もの地雷除去が必要な土地が残っています。最近は、カンボジアの地雷問題というと過去のことと思っている人も多いですが、決して過去のものではありません。これからもより多くの方に「カンボジアから地雷をなくそう100円キャンペーン」に参加したり、私たちと一緒にカンボジアを訪れてもらいたいと思っています。ぜひ一緒に、地雷をなくす活動に参加してください。

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