パンフレットをでお届け
資料請求

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました
第99回ピースボートにおいて、パナマのクリストバル港から本船を離れ、ガラパゴス諸島を訪れるツアーを行いました。5才から70代まで幅広い年代層の参加者26名と一緒にガラパゴス諸島に暮らす人々や動植物と出会いました。
第99回ピースボートにおいて、パナマのクリストバル港から本船を離れ、ガラパゴス諸島を訪れるツアーを行いました。5才から70代まで幅広い年代層の参加者26名と一緒にガラパゴス諸島に暮らす人々や動植物と出会いました。

危機に直面するガラパゴス諸島の自然

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました
すべてを合わせても静岡県程度の面積しかないガラパゴスの島々は、それぞれが異なる自然環境を持ち、ダーウィンの進化論のキッカケとなった固有種が環境に適応して生息しています。1978年、ガラパゴス諸島は世界自然遺産第一号として登録されましたが、その後の観光客や移住者の増加により生態系が崩れ自然環境が破壊されてきました。

そして、これまで島外から人の手によって外来種や家畜が持ち込まれたことで、固有種が絶滅の危機に瀕しています。ツアーでは、ガラパゴス諸島の世界自然遺産としての美しい光の部分と、それらが失われようとしている影の部分を見つめてきました。

多様な自然環境が共存する島

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました
ガラパゴス諸島の玄関口となるバルトラ島の空港に降り立ち、渡し船とバスを乗り継いで、ガラパゴス諸島最大の町であるサンタ・クルス島のプエルト・アヨラに向かいました。その道中、ガラパゴス諸島でダーウィンの進化論が生まれた理由を目の当たりにしました。バスでの移動はたった45分間でしたが、この短い間にバスから見える景色が変化しました。

島の北側では乾燥していて緑もなく、葉のない真っ白なパロサントという木が生えているだけで、動物も見えない閑散とした景色が広がっています。そこから小高い山を上っていくと、霧がかかり湿度が高く木にコケが生えて緑も多くなりました。ひょっこり野生のゾウガメも顔をみせてくれました。そして南側の人が多く住む町の近くでは、海からの潮の香りと海岸に沿って生息しているマングローブ、そしてウミイグアナやガラパゴスアシカが町にとけ込んでいました。

チャールズ・ダーウィン研究所のゾウガメを守る試み

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました
ロンサム・ジョージの剥製
ガラパゴスの動植物の調査や研究、そして自然保護活動を行っているチャールズ・ダーウィン研究所を訪れました。ここには、ロンサム・ジョージの剥製があります。ロンサム・ジョージはガラパゴス諸島にあるピンタ島に生息していたピンタゾウガメの最後の一頭として「ロンサム(孤独な)・ジョージ」と呼ばれ有名になりました。2012年に彼が亡くなるまで、種を残すためにお見合いや自然繁殖プログラムが行われましたが結果的にうまくはいきませんでした。

かつてピンタゾウガメは食用として乱獲されていました。ロンサム・ジョージがピンタ島で発見された時、彼の周りには甲羅だけになったゾウガメの死骸が無数にありました。人間によって乱獲されてしまった仲間たちの光景を覚えていて繁殖活動ができないのでは、という専門家の話もありました。

ピンタゾウガメを絶滅から救うことはできませんでしたが、研究所では同様に絶滅の危機にあったエスパニョラ島のゾウガメの繁殖に尽力しました。「ディエゴ」という唯一の雄のエスパニョラゾウガメの繁殖に成功し、今では彼の子孫は1800頭にもなります。

島に住む人に聞くと、私が生まれてからゾウガメが死んでいるのを見たことがないとのことでした。研究所やナチュラリストガイド、また島に生きる人々によって現在はゾウガメ達の生きる場所が守られています。

ガラパゴスの高校生と植林活動

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました
ガラパゴス諸島は50年前に比べると原生林の8割が失われていると言われています。理由は生命力の強いキイチゴ、グァバ、キナの木(マラリアを防ぐ為に使われる植物)などの外来植物が原因です。人間によって持ち込まれた植物により、スカレシアというキク科のガラパゴス固有植物の原生林が多く失われました。その対策のひとつとして、島の97%を国立公園にして保護しています。人やモノの流れによる外来種の侵入を防ぐ為です。

今ツアーでは、2ヵ所でスカレシアの植林活動を行いました。1ヵ所はサンタクルス島のゾウガメ生息地であるランチョ・プリミシアスの農場です。地元の高校生15名と先生3名も一緒に活動しました。

農場ではゾウガメが泥浴びをしていました。メスは出産の時期になると産卵の為の柔らかい土を求めて、何キロもの道のりを移動していきます。その土の中で生まれたゾウガメの赤ちゃんは、母親のにおいを頼りに10日間ほどかけてゆっくりこのランチョ・プリミシアスまでたどり着きます。でも赤ちゃんのほとんどは敵に襲われてしまったり、外来植物によって母親のにおいが消え道がわからなくなりたどり着けません。

「このようなゾウガメの生態や外来種の影響について学んだことがある学生はいますか?」という現地ガイドさんの質問に、学生は誰ひとり手をあげませんでした。現地の学生にとって自分たちの島の環境問題について学ぶ機会はそう多くないそうです。このゾウガメたちを横目に私たちはランチョ・プリミシアスで100本のスカレシアの苗木を植えました。

ガラパゴスの環境を守るために

第99回ピースボートで「ガラパゴスの森再生プロジェクト」植林ツアーを実施しました
そしてもう1ヵ所は同じサンタクルス島の国立公園で50本植林しました。国立公園レンジャーのウィルソンさんが案内してくれましたが、広大な土地を守っていく為にはレンジャーの数が足りていないそうです。外来植物の駆除は人の手で行われます。駆除の為に薬をまくことは原生林にも影響してしまうのでできません。150ヘクタールを16人のレンジャーで保護しなければいけない状況なのです。

植林活動のあいまに、高校生たちに将来何になりたいか、という質問をしました。医者、弁護士、エンジニア、ナチュラリストガイドなどの答えが印象的でした。ガラパゴスには大きな病院がなく十分な医療サービスが整っていません。弁護士やエンジニアの数も少ないのが現状です。ガラパゴスという特殊な環境に生きる彼らだからこそ、今そこで求められているものになりたいという想いを感じました。

珍しくて美しい動植物をただ可愛かったと思うだけではなく、どうすればこの生き物たちが保護される必要なく、自由に生き生きと過ごすことができるのか。私たちにできることは何だろうと考えさせられる6日間になりました。



※2019年9月出航の第102回ピースボート「地球一周の船旅」内でも、同様のツアーを予定しています。参加者を募集中ですので、詳しくはピースボート事務局までお問い合わせください。

ピースボート事務局 メール:info@peaceboat.gr.jp

このレポートを読んだ方におすすめ