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「どこか遠い世界」から「共に生きる世界」へ〜2018年秋期地球大学報告〜

「どこか遠い世界」から「共に生きる世界」へ〜2018年秋期地球大学報告〜
第99回ピースボート地球一周の船旅(2018年9月1日~12月18日)にて、地球大学プログラムを実施しました。国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の根底となるビジョン『誰一人取り残さない、持続可能な社会をつくる』 をメインテーマに、全24寄港地をめぐる108日間の航海を通して、異文化理解、気候変動、貧困や人権など、世界各地のさまざまな課題について計40回の洋上ゼミを通して学びを深めました。
今回は17歳~34歳の27名の若者が参加し、ピースボートと提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が2名、正規留学プログラムとして地球大学を履修しました。
第99回ピースボート地球一周の船旅(2018年9月1日~12月18日)にて、地球大学プログラムを実施しました。国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の根底となるビジョン『誰一人取り残さない、持続可能な社会をつくる』 をメインテーマに、全24寄港地をめぐる108日間の航海を通して、異文化理解、気候変動、貧困や人権など、世界各地のさまざまな課題について計40回の洋上ゼミを通して学びを深めました。
今回は17歳~34歳の27名の若者が参加し、ピースボートと提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が2名、正規留学プログラムとして地球大学を履修しました。

【アジア区間】誰が「取り残されている」のだろうか?

「どこか遠い世界」から「共に生きる世界」へ〜2018年秋期地球大学報告〜
他国の若者も交えて行った交流とディスカッション
今回、受講生が地球大学への参加を決めた理由は、「自分の目で世界を見て学びたい」「志の高い仲間とともに学びたい」「地球一周を通して、世界で起こっていることへ行動していける力がほしい」などさまざま。
旅の始まりのアジア区間では、異なる背景や目的を持って集った仲間と安心して学び合う土台作りとして、お互いを知るためのチームビルディングと、自分自身の感情に目を向ける内省に力を入れながら、多文化共生について多様な角度から体感を通して学びを広げました。

鳥取大学教授のキップ・ケイツさんによる異文化理解ワークショップは、実際に異なる文化を生きるアジア6カ国から若者が参加した「地球大学特別プログラム」との合同授業として実施しました。言語や文化の壁を越えたワークショップで交流を深めながら、「誰一人取り残さないってどういうこと?」という問いのもと、受講生の身近で起こっているマイノリティや差別に関する社会問題を取り上げたディスカッションを行いました。LGBT(セクシュアル・マイノリティ)、人身売買、障がい児教育、人種差別といったテーマが、当事者性のある受講生自身から投げ掛けれられ「そんなことが起こってるなんて知らなかった!」という声も。世界で起こっている問題をより身近に感じるきっかけとなりました。

その後は、モルディブの環境活動家であるマイード・ザヒールさんから、世界的な気候変動の現状やモルディブが直面している海面上昇の問題について学びました。現地モルディブでのビーチクリーンアップ活動にも数名の受講生が参加し、地元住民が直面している海洋ゴミの現状を目の当たりに。美しい海というイメージだけでなく、現地での問題の深刻さを感じ、環境問題について考える大きなきっかけとなりました。

●参加者の声●
「ワークショップやディスカッションを通して、色んな目線での考え方を学ぶことができる洋上ゼミの中でも、いちばん刺激的だったのは、ディスカッションを用いたゼミ。いろんな人の意見を聞くことで、そんな考え方もあるのか!と他人の意見に対して納得させられることもあれば、自分の考えを再確認したりと、新しい発見に繋がりました。」―大阪府より参加・21歳

【ヨーロッパ区間】多様で寛容な社会とは?

「どこか遠い世界」から「共に生きる世界」へ〜2018年秋期地球大学報告〜
「多数派」と「少数派」のつくられ方を体感するワークショップ
ヨーロッパを航行する区間では、「多様で寛容な社会をつくる」をテーマとして、クルーズディレターであり一般社団法人ひきこもりUX会議代表をつとめる恩田夏絵が、自らの体験を共有しながら、受講生とともにより生き心地のよい社会について考えました。日本社会や洋上の環境における具体的な事例を挙げ、言語・ジェンダー・障害などの視点から検証していき、多様で寛容な社会とはどんなものか、なぜ多様さと寛容さが必要かといった問いについて掘り下げていきました。その過程で、「多様で寛容であると思っていたことでも、見方を変えると取り残されている人がいるジレンマに気づいた」という受講生もいました。

ヨーロッパで実際に訪れた国々にまつわるテーマとしては、深刻な難民問題を抱える地中海や北アイルランド紛争の歴史を取り上げました。問題のあまりの大きさに直面しながらも、ワークショップなどで紛争の原因や構造を紐解いていきました。

また、クルーズの折り返し地点ではここまでの洋上ゼミや寄港地での体験を踏まえ、関心のあるテーマを研究した発表会を行いました。発表のテーマは「モルディブから考える環境問題」「難民」など寄港地にちなんだものから「不登校」「LGBT」「自殺問題」「わたしの経験とビジョン共有」など様々。多くのメンバーから共通して挙げられたのは、「知ることの大切さ」というキーワード。ここまで、訪れる寄港地にちなんだテーマを事前に学び、現地を訪れることを通して世界が広がってきた参加者ならではの実感として印象的でした。難民やLGBTといった様々な課題を当事者や支援者から学び、全く別の問題だと思っていたことに”社会的弱者”という共通点が見えてきたという人たちもいました。

●参加者の声●
「難民や貧困など、自分には無関係と思っていた問題を知れば知るほど、日本の生活とも繋がっていることに気づき、身近な問題でもあると痛感しました。問題解決に向けてどうしたらいいのかをみんなで考えていく中で、自分と相手の考えをどちらも尊重することの大切さを改めて感じることもできました。」―佐賀県より参加・28歳

【南北アメリカ区間】貧困、人権、偏見に切り込む

「どこか遠い世界」から「共に生きる世界」へ〜2018年秋期地球大学報告〜
ペルー在住の写真家・義井さん(左から2人目)を迎えて
米国〜中南米を航行した区間は、ペルー在住の写真家・義井豊さんをお招きし、ペルーの子どもたちの置かれた現状を学びながら、4回の集中ゼミで貧困や人権問題について考えました。

世界一の大都市ニューヨークを抜け、キューバやジャマイカ・パナマといった中米諸国の人々との出会いを経て訪れたペルーでは、貧富の格差が大きく、働かなくては生きていけない子どもたちがいる現状を目の当たりにしました。そんな子どもたちも等しく持っている人権について学びながら、「貧困とは何か」、「貧困をなくすには何が必要か」といった問いを受講生自身で定義づけする中で、貧困は決して遠い国の問題ではないという気づきが見えてきました。

また、世界数カ国からの乗船者とともにステレオタイプについて考えるワークショップも行いました。多様な文化や年齢などの異なるバックグラウンドから、ひとつのモノの見方もさまざまであることを痛感した受講生からは、自分の中に存在するステレオタイプについて「自分で気づくのは難しい」「ステレオタイプをもっていることに気づくことが大切」「偏見から誰かを排除しようとすることが問題」といった気づきがありました。

●参加者の声●
「日本で生活をしているとあまり考えることのない「人権」について深く考えることができました。その当たり前にあるような「人権」は簡単に侵害されており、「人権」を尊重することで多くの問題は解決されるのではないかと気づくことに繋がりました。
以前はあまり意見を言う方ではなかったけれど、地球大学を通して自分の意見を言うようになりました。そして、同じ議題で意見交換をするうちに、自分の中の偏った考えに気づき、多様な考え方や視点を持てるようになりました。」―福岡県より参加・27歳

【太平洋区間】船旅を経て考える、「持続可能な社会」とは

「どこか遠い世界」から「共に生きる世界」へ〜2018年秋期地球大学報告〜
有志で下船後にチャレンジしたいことを発表。
日本へと向かう太平洋区間では、自分たちが見てきた世界各地の課題と、それに対する取り組みをSDGsのゴールに結びつけながらまとめました。
船旅の最後には、地球一周を通しての経験と学びを乗船者に向けて発表。実際に現地に訪れてみて感じた思いをトークライブ形式で振り返ります。「地球大学を受講する前に持っていた考えが、問題の構造を理解し現地の人々と出会うことで固定概念であることに気づいた」という声も。

また、受講生のうち数名は、地球一周でみつけたこれからの進路について発表しました。「持続可能な暮らしを模索するため有機農業にチャレンジしたい」「これからの時代の働き方について研究し、発信していきたい」「たくさんの問題を学び、まずは日本の問題に取り組もうと決めた」など、受講生は既に次のステップへの行動をはじめています。

地球をキャンパスに108日間を通して学び合い、世界の課題や取組みをより身近に捉え始めた彼らが歩む道のりは、きっと一歩ずつ「持続可能な社会」に繋がることでしょう。

●参加者の声●
「振り返れば地球大学の仲間たちと一緒に、どれもこれも壮大な世界の難問に向き合ってきました。正直、船をおりた今でもその大半は消化できていないのが現状です。だけど、地球大学を受講したからこそ見えた世界があるということは確信しています。小さくても自分が行うことで解決できる課題があることも知ることができました。また、まだ若いと思っていた自分でさえも凝り固まった考えがあることに気づき、自分自身や人生について考え直す機会を得ることができました。」―群馬県より参加・24歳

「海外へ行くのも初めてでしたが、実際に世界各地に足を運んで学べるこの機会を逃したら二度と経験することはないと思い地球大学を受講しました。船を降りてみて、毎日いろんなことに対して考えることができた地球大学の時間の貴重さを感じています。地球大学のおかげで、より充実した船内生活になりました。」―東京都より参加・21歳

「私は「人が変わる姿を見たい」という理由で地球大学の受講を決めました。たくさんのことを学びながら地球を一周しましたが、結局一周して変わったのは“人”ではなく、“自分”でした。もし地球大学に行っていなかったら、自分自身が変わったことにすら気づかなかったかもしれません。
地球大学は誰もが恥ずかしがらず、みんなで意見を出せる“居場所”だと私は思っています。普段中々話す場所や考える時間がない、自分自身の体裁にこだわって本当のことが言えない、そんな人にこそピッタリだと私は思います。「知るきっかけ」を作るだけでも見える世界は変わります。ぜひみなさんも一歩踏み出してみて下さい!」―福岡県より参加・24歳

ゼミにご協力頂いた水先案内人の皆様(順不同)

・キップ・ケイツさん(鳥取大学地域学部国際地域文化コース教授)
・マイード・ザヒールさん(環境保護活動家、エコケア・モルディブアドボカシーディレクター)
・小槻文洋さん(神戸山手大学准教授)
・義井豊さん(写真家、NGO「Cussi Punku」代表)
・榎本英剛さん(よく生きる研究所 代表)

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