「変革の時代に平和を築く」をテーマに広島-ICANアカデミー2025を実施しました

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、核兵器と安全保障に関する学びを通して世界に具体的に貢献し、グローバルに活躍できるリーダーを育成する「核兵器と安全保障を学ぶ広島‐ICANアカデミー」(以下、アカデミー)を共催しています。その第7回目となる同アカデミー2025を、2025年7月15日から10月18日にかけて行いました。ここでは、その報告を行います。
ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、2019年より同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。
ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、2019年より同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。
- プロジェクト: 核廃絶
INFO
2025.11.10
2025.11.10
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、核兵器と安全保障に関する学びを通して世界に具体的に貢献し、グローバルに活躍できるリーダーを育成する「核兵器と安全保障を学ぶ広島‐ICANアカデミー」(以下、アカデミー)を共催しています。その第7回目となる同アカデミー2025を、2025年7月15日から10月18日にかけて行いました。ここでは、その報告を行います。
ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、2019年より同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。
ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、2019年より同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。
今日、世界中の多くの地域で武力紛争が激化しており、国際人道法を含む国際法が無視される中、危険にさらされた民間人が避難を余儀なくされ、負傷し、命を落としています。国際機関はその役割を果たせず、軍備管理や軍縮に関する合意が踏みにじられそうになっています。国家間の関係は劇的に変化し、緊張は高まり続けており、核兵器使用の脅威がそれを際立たせています。
そこで、広島・ICANアカデミー2025は「変革の時代に平和を築く」をテーマとし、80年前に戦争で初めて核攻撃を受けた広島の経験から学びつつ、核兵器の人道的影響を考え、国際的な平和と安全を構築するための道筋について議論しました。
第一部はオンライン学習と5回のウェビナーセッション、第二部は広島での対面セッション、という構成で行われました。ウェビナーセッションはこれまでとは違い、興味・関心のある人に広く幅広く門戸を開き、約300名の参加者が共に学びました。その後の広島セッションには、17か国20名が選ばれました。
そこで、広島・ICANアカデミー2025は「変革の時代に平和を築く」をテーマとし、80年前に戦争で初めて核攻撃を受けた広島の経験から学びつつ、核兵器の人道的影響を考え、国際的な平和と安全を構築するための道筋について議論しました。
第一部はオンライン学習と5回のウェビナーセッション、第二部は広島での対面セッション、という構成で行われました。ウェビナーセッションはこれまでとは違い、興味・関心のある人に広く幅広く門戸を開き、約300名の参加者が共に学びました。その後の広島セッションには、17か国20名が選ばれました。
約300名の参加者と学んだ核兵器の被害

核兵器国である米国市民もヒバクシャになることを自分の経験から力強く話すメアリー・ディクソンさん(画面左上)
7月15日に開催された第1回ウェビナーには、広島被爆者の二川一彦さんと、核実験場の風下住民(ダウンウィンダー)であり作家のメアリー・ディクソンさんを迎えました。原爆投下時、まだ母胎にいた二川さんは、父と姉の死について語り、残された家族の尽きることのない努力や差別などの、生涯にわたる深い悲しみについて話しました。
メアリーさんは、米国での核実験による放射能の影響を受けた風下住民としての経験と、その活動について共有しました。
参加者からは、意見の相違や政治的分極化の中で、効果的なアドボカシー活動を行う方法や、メアリーさんが世界中の核被害者とどのようにつながってきたかなど、多くの質問が寄せられました。
メアリーさんは、米国での核実験による放射能の影響を受けた風下住民としての経験と、その活動について共有しました。
参加者からは、意見の相違や政治的分極化の中で、効果的なアドボカシー活動を行う方法や、メアリーさんが世界中の核被害者とどのようにつながってきたかなど、多くの質問が寄せられました。

グローバルヒバクシャについて語るロバート・ジェイコブズさん
7月18日、第二回ウェビナーは「核兵器の社会的・環境的・経済的影響」がテーマでした。広島市立大学名誉教授で歴史家のロバート・ジェイコブズさんをお迎えし、放射性物質や核実験の遺産、そしてそれらに影響を受けた世界中の被爆者=グローバルヒバクシャについてお話いただきました。
参加者からは、被爆地域への賠償と修復、原子力発電に伴う課題、政策枠組みへの被爆者の声の反映方法など、多岐にわたる質問が寄せられました。
7月22日の第3回ウェビナーは、「核抑止」をテーマに開催されました。リーズ大学国際政治学准教授のローラ・コンシダインさんをお迎えし、核抑止の概念と、それが生み出す安全保障上のジレンマや課題について解説いただきました。
参加者からは、フェミニストの視点から見た抑止論、非核保有国が核によらない安全保障の枠組みをどう作ることができるかなど、多様なテーマについて活発な意見交換が行われました。
参加者からは、被爆地域への賠償と修復、原子力発電に伴う課題、政策枠組みへの被爆者の声の反映方法など、多岐にわたる質問が寄せられました。
7月22日の第3回ウェビナーは、「核抑止」をテーマに開催されました。リーズ大学国際政治学准教授のローラ・コンシダインさんをお迎えし、核抑止の概念と、それが生み出す安全保障上のジレンマや課題について解説いただきました。
参加者からは、フェミニストの視点から見た抑止論、非核保有国が核によらない安全保障の枠組みをどう作ることができるかなど、多様なテーマについて活発な意見交換が行われました。

多様な個人と市民社会の力の必要性を話すオラミデ・サミュエルさん(画面左上)
7月24日第4回ウェビナーは、全体テーマでもある「変革の時代に平和を築く」について考えました。オープン・ニュークリア・ネットワークのオラミデ・サミュエルさんと、軍備管理協会の事務局長であるダリル・キンボールさんに、それぞれの専門分野から進行中の核軍縮の取り組みについて伺いました。
新たな核軍拡競争が台頭する中でも、軍縮に向けた取り組みの事例を上げて、多様な個人や市民社会のセクターが連携すれば、核軍縮と平和構築を進めていくことができると強調しました。
7月30日の第5回ウェビナーのテーマは「核軍縮に向けた国連と市民社会の役割」でした。ICAN事務局長のメリッサ・パークさんは、核兵器の人道的影響への認識を深めることと、核兵器禁止条約(TPNW)への参加国を増やすことに尽力する、ICANのキャンペーンについて説明しました。
国連軍縮局大量破壊兵器課長のクリストファー・キングさんは、国連の軍縮活動の歴史と、主要な軍縮枠組みについて講演しました。参加者は「若者が核軍縮を推進するために何ができるか」について積極的に質問し、両講演者は励ましと力づけの言葉を送りました。
新たな核軍拡競争が台頭する中でも、軍縮に向けた取り組みの事例を上げて、多様な個人や市民社会のセクターが連携すれば、核軍縮と平和構築を進めていくことができると強調しました。
7月30日の第5回ウェビナーのテーマは「核軍縮に向けた国連と市民社会の役割」でした。ICAN事務局長のメリッサ・パークさんは、核兵器の人道的影響への認識を深めることと、核兵器禁止条約(TPNW)への参加国を増やすことに尽力する、ICANのキャンペーンについて説明しました。
国連軍縮局大量破壊兵器課長のクリストファー・キングさんは、国連の軍縮活動の歴史と、主要な軍縮枠組みについて講演しました。参加者は「若者が核軍縮を推進するために何ができるか」について積極的に質問し、両講演者は励ましと力づけの言葉を送りました。
様々な核被害を知り、コミュニティーで語り理解を深める

広島ーICANアカデミー2025の参加者
10月14日から18日までの5日間は、17の国と地域(米国、イギリス、フランス、中国の核兵器国と、インド、オーストラリア、オーストリア、カザフスタン、カナダ、ケニア、トルコ 、ナイジェリア、日本、パキスタン、ブラジル、ポーランド、メキシコ)から20名が広島に集まり、「広島セッション」を開催しました。
世界各地から集まった参加者たちは、平和記念公園のガイドツアー、平和記念資料館の見学、広島県知事、広島副市長、放射線影響研究所の訪問を行いました。広島の被爆体験と記念碑の意味を学び、戦前の街の姿にも思いを馳せながら、核兵器廃絶と平和構築に向けた学びと対話を深める貴重な時間を過ごしました。
世界各地から集まった参加者たちは、平和記念公園のガイドツアー、平和記念資料館の見学、広島県知事、広島副市長、放射線影響研究所の訪問を行いました。広島の被爆体験と記念碑の意味を学び、戦前の街の姿にも思いを馳せながら、核兵器廃絶と平和構築に向けた学びと対話を深める貴重な時間を過ごしました。

参加者からの質問に丁寧に答える梶本淑子さん
今回は、3人の被爆者(梶本淑子さん、近藤紘子さん、笠岡貞江さん)と体験伝承者(茂津目恵さん)との対話を通じて、「原爆投下による経験」と一言に言っても、一人ひとりの体験や視点が異なることを知り、さまざまな核被害について理解を深めました。

湯崎英彦広島県知事との面会と意見交換
また、韓国、中国、ロシア、東南アジア、連合国捕虜などの、非日本人被爆者の存在と差別、原爆小頭症を患った被爆者の苦悩を知り、参加者は衝撃を受けました。また、長崎被爆の特徴も含めて、被爆の多様性にも焦点を当てて、グループディスカッションを行いました。
湯崎英彦広島県知事を表敬訪問した際には、県の平和・核軍縮への取り組みについて活発な意見交換が交わされました。中井幹晴副市長からは、広島市の核廃絶への取り組みを伺い、参加者からは政策や国際連携に関する鋭い質問が寄せられました。
湯崎英彦広島県知事を表敬訪問した際には、県の平和・核軍縮への取り組みについて活発な意見交換が交わされました。中井幹晴副市長からは、広島市の核廃絶への取り組みを伺い、参加者からは政策や国際連携に関する鋭い質問が寄せられました。

ワークショップをするICANのフロリアン・エブレンカンプさん
最終日の公開セッションでは、参加者がプログラム全体を通じて得た学びと、今後の行動計画を発表しました。核被害の多様性や心に残った体験談が共有され、核兵器廃絶に向けた新たな視点と意志が示されました。
参加者間での振り返りでは、多くの参加者が広島で育まれた連帯感(コミュニティーの意識)に言及し、その絆が今後も続いていくことを確信しました。
このセッションを通じて、参加者は核兵器の非人道性を深く理解し、平和の実現に向けた国際的な連携の可能性を実感しました。広島-ICANアカデミーは、次世代の平和の担い手を育む場として、今後もその歩みを続けていきます。
参加者間での振り返りでは、多くの参加者が広島で育まれた連帯感(コミュニティーの意識)に言及し、その絆が今後も続いていくことを確信しました。
このセッションを通じて、参加者は核兵器の非人道性を深く理解し、平和の実現に向けた国際的な連携の可能性を実感しました。広島-ICANアカデミーは、次世代の平和の担い手を育む場として、今後もその歩みを続けていきます。
最後に
広島で準備、運営・進行、受け入れをしていただいた3人のコーディネーター、アナリス・ガイズバートさん、福岡奈織さん、田代美怜さんに感謝いたします。
このプログラムは、ピースボートの川崎哲と渡辺里香が、広島県ならびにジュネーブのICANスタッフチームと協力して企画しました。
このプログラムは、ピースボートの川崎哲と渡辺里香が、広島県ならびにジュネーブのICANスタッフチームと協力して企画しました。
掲載メディア
2025年10月18日・読売新聞 広島の平和活動 副市長紹介 ICANアカデミー外国人参加者らへ





