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ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました

ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、核兵器と安全保障に関する研修を通して世界に具体的に貢献し、グローバルに活躍できるリーダーを育成する「核兵器と安全保障を学ぶ広島・ICANアカデミー」(以下、アカデミー)を共催しています。その第6回となるアカデミー2024を2024年10月18日から11月16日にかけて行いました。ここでは、その報告を行います。

ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、2019年より同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。
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核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、核兵器と安全保障に関する研修を通して世界に具体的に貢献し、グローバルに活躍できるリーダーを育成する「核兵器と安全保障を学ぶ広島・ICANアカデミー」(以下、アカデミー)を共催しています。その第6回となるアカデミー2024を2024年10月18日から11月16日にかけて行いました。ここでは、その報告を行います。

ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、2019年より同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。

持続可能で安全な世界を築く方法を探りました

ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました
今年のプログラムには、4つの核兵器保有国(米英仏中)とその他の11か国(アルゼンチン、イタリア、ウクライナ、ウズベキスタン、オーストラリア、カナダ、ケニア、台湾、日本、ノルウェー、ボスニア‐ヘルツェゴビナ)から、計21名の参加者が集まりました。

「持続可能な安全保障を全ての人に(Sustainable Security for All)」を全体テーマとし、第一部はオンライン学習と4回のウェビナーセッション、第二部は広島での対面セッションという構成で行われました。

2023年のG7広島サミットでは、核不拡散・核軍縮の推進、クリーンエネルギーと環境保全、持続可能な経済発展など、安全保障と持続可能性に対する世界的な課題とその対応策に焦点が当てられました。

実際、今日の世界を見れば、安全保障と持続可能性が深く結びついていることは明らかです。核兵器を含む現在のグローバルな課題に対処するためには、安全保障に対する幅広い理解が必要です。軍事力を超えて、私たちは、分断と不平等を是正し、住みやすい地球を維持するための、人間と環境の安全保障を考えなければなりません。

核兵器がもたらす人道的・環境的影響を中心に、アカデミーは多様な声による議論を促進し、すべての人にとって持続可能で安全な世界を築く方法を模索しました。

オンライン学習とウェビナーで視野を広げました

ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました
オンライン学習とウェビナーでは、「核兵器の人道的の影響」「現在と将来における核リスク」「核兵器の社会的、経済的、環境への影響」「核軍縮と安全保障のための外交と国連の役割」という4つのテーマについて学びました。

10月18日に行われた第1回ウェビナーでは、広島の被爆者である二川一彦さん、そして米国から参加したダウンワィンダー(核実験の風下の住民)であり作家のメアリー・ディクソンさんを迎えました。

原爆投下時、まだ母親の胎内にいた二川さんは、家族が失ったもの、そしてその後の数年間に抱えた言葉にならない悲しみや不安について語りました。質疑の時間では、参加者からアメリカ大統領の広島訪問に対する二川さんの見解や、被爆者が直面する差別などについて質問が出ました。

次に、メアリーさんは、米国の核実験による放射線の影響を受けたダウンウィンダーとして、彼女自身と家族の経験、そして地域コミュニティの人たちの経験を共有しました。参加者は、核保有国内の被爆者の存在に驚き、政府へのアドボカシー活動について大きな関心を示しました。

10月21日、第2回ウェビナーでは、リーズ大学のローラ・コンシダイン教授が、核リスク削減の概念と核抑止力との関係について紹介し、参加者からの意見を引き出しました。

続いて、国連軍縮研究所(UNIDIR)のヤスミン・アフィナ研究員が、核兵器システムがサイバーやAIといった新しい技術とどのように関連し、影響を受けうるかについて話しました。参加者は、ゲストスピーカーからの講義を受け、自国の経験や専門分野を交えながらディスカッションを行いました。

10月24日の第3回ウェビナーのゲストは、広島市立大学歴史学部のロバート・ジェイコブス教授とハンブルク大学平和研究所のフランツィスカ・シュテルク研究員です。

ジェイコブス教授は、冷戦は実際には限定的な核戦争であったと主張し、放射性の波や粒子が人体を含む環境中でどのような影響をもたらすかを説明し、核実験とその遺産について説明しました。シュテルク研究員は、さまざまな正義の枠組みを通して、核兵器が地域社会や国際社会に及ぼすより広範な影響について考えるよう参加者に促しました。
ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました
10月28日、第4回ウェビナーでは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長も加わり、ICANの戦略や、市民一人ひとりが核軍縮のためにどのように支援できるかについて語りました。

また、ICANのアドボカシー・オフィサーであるフロリアン・エブレンカンプ氏も質疑応答に参加し、この活動で自分自身を維持するためには、楽しみながら、志を同じくする人々のコミュニティを見つけることが重要であると若い参加者たちを応援しました。

次に、国連軍縮部(UNODA)大量破壊兵器課のクリストファー・キング課長が、国連における軍縮活動の歴史と、国連がどのように世界の核軍縮に向けて各国を支援しているかを紹介しました。

様々な核被害をどう記憶するか

ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました
アカデミー参加者21名のうち20名は、広島での4日間の対面セッションに参加することができました。

広島では、平和記念公園のガイドツアー、平和記念資料館の見学、広島県知事、広島市長、放射線影響研究所の訪問を行いました。

このほか、小グループに分かれて梶本淑子さん、近藤紘子さん、宮崎千代さん(李鍾根さんの娘)、後東利治さんの4人から被爆の話を聞きました。一人ひとりの体験や視点の違いを知り、さまざまな核被害について理解を深めました。

その中には、韓国人被爆者2世が父親の被爆体験を語るなど、あまり知られていない証言も含めて聞く機会となりました。アカデミー終了後のアンケートでは、被爆者に直接会い話を聞けたことが、プログラムの中でもとりわけ印象的だったと感想が寄せられていました。
ノーベル平和賞に沸く広島で、「広島・ICANアカデミー2024」を実施しました
広島県知事と広島市長を表敬訪問した際には、平和と核軍縮を目指す各団体の活動概要を聞きました。また、韓国、中国、ロシア、東南アジア、連合国捕虜など、外国人被爆者の体験にも焦点をあて、現在の広島がどのように歴史を記憶しているかについて、現地コーディネーターとともに活発なグループディスカッションとなりました。

今回は2024年ノーベル平和賞受賞団体の日本被団協のメンバーと歓迎夕食会をしたり、ICANの条約コーディネーターのティム・ライトさんが広島セッションの全行程を参加者と共にしたりと、世界から集まった参加者が広島に集い、ノーベル平和賞の意義について考える機会にもなりました。

最終日は、3つのグループに分かれ、参加者がプログラム全体から得た主な学びと、今後取るべき行動を発表する公開セッションで幕を閉じました。

参加者はこの中で、広島に来て被爆者から直接学ぶことの大切さ、多様な視点からの歴史教育の重要性を強調しました。また、日本人以外の被爆者の体験談を知ることで、核兵器による破壊が、当時そこにいた人たちに非差別的に被害を与えたことを理解するのに役立ったことなども発表しました。

多様な視点を得て新しい仲間をつくった参加者は、すでに自国に帰り見聞きしたことを発表したり、オンライン証言会を企画しています。今後も、具体的に行動を起こし、核兵器のない世界に向けた活動を続けてくれると思います。

最後に

広島で準備、運営・進行、受け入れをしてくれた3人のコーディネーター、アナリス・ガイズバートさん、福岡奈織さん、田代美怜さんに感謝いたします。

このプログラムは、ピースボートの川崎哲と渡辺里香が、広島県ならびにジュネーブのICANスタッフチームと協力して企画しました。

資料はこちら(英語のみ)

以下より、「プログラム概要・講師およびコーディネーターの略歴」、広島県およびICANから提供されたオンライン学習教材を閲覧できます。
なお、オンライン学習教材に関しては、プログラム参加者のみ閲覧できるようパスワード保護されている物もあります。

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