被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020

プロジェクト:核廃絶
被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020広島の原爆ドームが見える場所からの中継。湯崎英彦広島県知事(左)とメイン・コーディネータを務めたジャーナリストのアナリス・ガイズバートさん。
広島・長崎に原爆が落とされてから75年の今年、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、昨年に続き「核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー2020」(2020年7月13日~8月6日)を共催しました。ピースボートは、ICANの国際運営団体として同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。新型コロナウイルスの世界的感染拡大の中であっても、核兵器廃絶への取組みを進めるべく、オンライン学習やウェビナーを取り入れて開催しました。

オンライン教材による学習

被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020オークランド大学のテレサ・ダンワース准教授
同アカデミーのプログラムには4つのテーマがあります。1)核兵器の人道的影響、2)核兵器と安全保障に関する政治的・法的・技術的側面、3)市民社会の活動、4)核軍縮と安全保障のための外交と国連の役割です。これらの視点をもって、被爆の実相を知り、核兵器と安全保障をめぐる世界の動きを学びます。

今年の参加者は、核兵器国である米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国から15名、それ以外に、オーストラリア、ブラジル、コンゴ、ジョージア、ドイツ、インド、日本、ケニア、韓国、キルギス、メキシコ、モンゴル、オランダ、ポーランド、ウガンダの15カ国から16名の、あわせて31名。
時差もあり、参加者全員が同時に講義を聞く機会が限られるため、参加者は上記の4つのテーマごとのビデオと読み物でオンライン学習を進めました。一般に公開されている資料やメディア記事だけでなく、今回のアカデミーのために講師が特別に制作したビデオもありました。
※一部パスワードで管理されているものもありますが、オンライン学習教材は以下のリンクから閲覧できます。

国内外からの講師が広範囲のテーマでオンライン講義

被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020長崎大学の鈴木達治郎教授
7月後半から8月初めにかけて、2回のウェビナーがありました。最初のウェビナーはテーマ1(核兵器の人道的影響)に関するもので、広島で被爆者の救済にあたった谷本清牧師の娘であり、長年米国と日本をつなぐ平和活動をしてきた近藤紘子さん、広島市立大学でグローバルヒバクシャの研究をするロバート・ジェイコブス教授、赤十字国際委員会(ICRC)軍事ユニット政策顧問のマグナス・ロボルさんを講師に迎えました。事前にオンライン学習をしていたのでウェビナーの多くの時間を質疑応答に費やしました。被爆者は被爆後どのような支援を受けてきたのか、語られた証言や資料は被害を受けたコミュニティーが所有できるのか、核兵器の人道的影響を強調することで非核兵器を軍縮に向かわせることができるのか、などの質問が寄せられました。

テーマ2(核兵器と安全保障に関する政治的・法的・技術的側面)を考える2回目のウェビナーの講師は、オークランド大学のテレサ・ダンワース准教授、長崎大学の鈴木達治郎教授と中村桂子准教授、パリ政治学院のショーフ・エゲランド研究員でした。法律が世界情勢に応じて変容してきた例、核兵器の分野における新技術の誕生とその危険性、NPT(核不拡散条約)と2017年に国連で採択された核兵器禁止条約の補完的な関係などについて積極的な質問が出ました。また、核兵器や安全保障に興味をもったきっかけを共有する機会もあり、参加者同士の距離が近くなったのも印象的でした。

2020年8月6日、様々な視点から考える核廃絶への道

被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020近藤紘子さん
オンライン生配信による平和式典を視聴し、75年前広島に落とされた一発の原子力爆弾により犠牲になった人々に思いを馳せました。

式典の直後にもウェビナーを開催し、のべ6カ国(フランス、ドイツ、ロシア、南アフリカ、日本、メキシコ)の駐日大使もしくはその代理、日本の外務省の担当課長から、それぞれの国の核軍縮政策や核兵器禁止条約へのスタンスについて聞きました。

同日の夕方には、湯崎英彦広島県知事、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表、オーストリアのアレクサンダー・クメント元大使、ベアトリス・フィンICAN事務局長をパネリストに迎えて、「軍縮と安全保障をめぐる外交と国連の役割」をテーマに、多角的な意見がでました。市民社会が政府や地方自治体と共にできること、核軍縮の停滞をどのように打破するかなど様々な立場からの視点が紹介されました。参加者は全員オンラン参加でしたが、最後のウェビナーとなる今回は知事や司会者は広島の原爆ドームが見える場所から中継しました。広島のユース、メアリ―・ポペオさんも会場から活動を紹介しました。初回のウェビナーで被爆証言をし、この日も参加していた近藤紘子さんからは「この地球の未来のために、あなたたち若者に期待しています。ありがとう。」との言葉が送られました。それに対して、ブラジルと日本からの参加者が代表してスピーチをしました。「今回被爆者から直接話を聞くという機会に恵まれ、多くのものを得ました。感情は私たちの背中を押す大きな力になり得るものです。しかし、私たちはいつも声なき人たちの声に十分耳を傾けているでしょうか?多様な価値観を取り入れているでしょうか?こうした疑問を持ち続けない限り個人や国家は一つの視点で物事を見てしまいます。『核兵器は戦略的に欠かせない』との意見はどうでしょうか。被爆者が生きているうちに、核兵器ゼロの世界を作りましょう」と。
※2020年8月6日に開催した公開ウェビナーは以下のウェブサイトからご覧になれます。(英語のみ)

今回の学びを生かして、行動する参加者

被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020ブラジル出身の参加者、キャロリナ・パニコさん
今回のアカデミーの開催を決定した際、第一部はオンライン学習とウェビナーによる意見交換、第二部は広島市内での研修という二部構成で行うことが確認されました。(広島市内での宿泊研修については、新型コロナウィルスの国内外の感染状況を慎重に考慮した上で実施時期を判断します。)
31名の参加者は、すでに一か月ほど共に学んだ友人と広島で実際に会い、被爆者をはじめとする人々に会い、語り合うことを心待ちにしています。

第一部終了後、参加者たちは、それぞれの地域や立場で核兵器禁止条約への理解を深めたり、意識を高めるイベントを開催・参加しています。今回のアカデミーで出会った若者たちがそれぞれの国や地域を代表して、共により平和な世界のために多くのことを達成できる道を見つけてくれることを願っています。

コーディネートにあたって

被爆75年、未来のグローバルリーダーを目指して世界の若者が学びました~広島−ICANアカデミー2020
今回のオンラインによる学びの機会を実現するにあたって、ピースボートの「ヒバクシャ地球一周 証言の航海(おりづるプロジェクト)」がICANと共に行ったオンライン被爆証言会や広島・長崎の原爆資料館オンラインツアーの開催で培ってきた経験と技術が役立ちました。

また、3名のコーディネーターが、オンラインであっても一方的にならないように尽力し、横のつながりを感じながら学ぶことができました。メインコーディネーターの2名は米国出身で現在広島在住ジャーナリストのアナリス・ガイズバートさんと元ピースボートスタッフで現在は丸木美術館国際コーディネーターの岩崎由美子さん。2014年にユース非核特使として同プロジェクトに参加した福岡奈織さんは、学習用ビデオを企画・作成しました。ピースボートスタッフとしては、川崎哲が同アカデミーのプログラム作成を監督し、ICAN国際運営委員として参加者との議論に積極的に参加しました。渡辺里香は川崎と共にプログラムを作り、広島県、ICANと共にプログラムを運営しました。

ICANの国際運営団体を担うピースボートは、被爆地とICAN、そして未来のリーダーとの関係を築きながら、核なき世界の実現に向けて貢献できる具体的な形として、「核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー」を位置づけています。また、今回のオンライン学習の経験が、日本や被爆地に来るための物理的、経済的、時間的な負担を減らし、参加者のすそ野を広げることに繋がるものと信じています。

資料はこちら(英語のみ)

使用した教材やウェビナーの様子は以下の各リンクからご覧いただけます。
「広島県のウェビナーレポート(8月6日、日本語)」はこちらから。

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