未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-

プロジェクト:核廃絶
未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-広島-ICANアカデミー2019の参加者たち
ノーベル平和賞受賞団体である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、「第1回核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー」(2019年7月31日から8月8日)を共催しました。ピースボートは、ICANの国際運営団体として同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を果たしました。参加者は、核兵器国(米国、中国、フランス、イギリス、ロシア)から8名、非核兵器国(ドイツ、オランダ、ベルギー、韓国、オーストラリア、日本)から7名の、あわせて15名。世界に具体的に貢献し、グローバルに活躍できるリーダー育成を目指して、核兵器と安全保障について学びました。

フィールドワークを通して感じる広島

未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-広島の若者とアイディアを出し合う参加者
ICANアカデミーのプログラムでは、以下の3点が柱となりました。1つ目は、被爆地・広島での開催だからこそできることを経験すること。2つ目は、市民社会、各国政府、国際機関という三者の視点を取り入れながら、核兵器をめぐる世界の概要を知ること。3つ目は、国連や外交の実践家・研究者から学び、最終日には学んだことを発表することです。

また、8月6日には平和記念式典に参加し、被爆ピアノとバイオリンの演奏も聴きました。全体を通して、核兵器の非人道性について考える、濃密な9日間となりました。

15名の参加者のうち、半数は日本に来るのも初めてでした。そこで、プログラムの前半はまず広島でしか経験できないフィールドワークを中心に行いました。平和公園を歩き、平和記念資料館を見学。

8歳の時に爆心地から2.4kmのところで被爆した小倉桂子さんと、在日コリアンの李鐘根さんからお話を聞きました。李鐘根さんは、韓国人であり被爆者であるということで、二重の差別を受けてきました。その後、被爆者団体の代表者にも会い、同団体の歩んできた歴史や、被爆者たち自身が呼びかけている「ヒバクシャ国際署名」についても理解を深めました。

医師で広島大学名誉教授である鎌田七男さんや、放射線影響研究所からは、放射線の世代を超えた身体的、精神的影響の科学的研究についてのお話を伺いました。

また、紛争後の復興や世界遺産、安全保障に関する研修を実施しているユニタール(国連訓練調査研究所)広島事務所や、被爆樹木を大切にしながらの独自の平和教育を行っている、広島市立矢野南小学校も訪れました。

松井一實・広島市長と広島の地方紙・中国新聞の話からは、自らも被爆を経験しながら核廃絶を積極的に推し進める都市とメディアの可能性と重要性を感じました。

フィールドワークの中でも一際盛り上がったのが、Social Book Cafeハチドリ舎で行われた、地元広島の若者との意見交換でした。「核をめぐる状況を変えるために何をすべきか」というテーマは、核廃絶に関わる人々が常に頭を悩ます問いですが、参加者は人々の意識を高めること、公教育の重要性、核抑止力を問い直すことに高い関心を示しました。

国内外からの講師が広範囲のテーマで講義

未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-講義に続き、多くの質問がでました
広島市立大学のロバート・ジェイコブス教授による内部被爆や世界の核被害者(グローバルヒバクシャ)についての講義は、被爆者から直接証言を聞いた後だったこともあり、大きな気づきを与えました。

長崎大学の鈴木達治郎教授と中村桂子准教授による北東アジア非核地帯構想や、一橋大学の秋山信将教授による地域的安全保障としての核軍縮の話に関しては、多くの質問が出ました。

パリ政治学院のショーフ・エゲランド研究員からは、核時代の幕開け、冷戦を経て、NPT(核拡散防止条約)の誕生までの核兵器の歴史について講義を受けました。

ハーバード大学のレベッカ・ギボンズ研究員は、人道的観点に着目した核兵器禁止条約について話し、参加者の関心を集めました。

また、核兵器禁止条約が国連で採択されることに貢献したICANの取り組みを紹介したICANメディア担当のルセロ・オヤルスンの講義にも、興味津々でした。

また、核兵器の抑止力によらない安全保障を追求するため、政治的・文化的・経済的・組織的な課題を議論するという難度の高い講義もありました。

広島の平和式典に出席

未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表と
2019年8月6日。74年前この広島に一発の原子力爆弾が落とされたことを改めて実感しながら、原爆の投下された8時15分を雨の中で迎えました。

広島県知事、広島市長、総理大臣、平和を願う広島の子どもの生の声に、テレビやインターネットではなく自分が広島にいることを実感したという参加者もいました。

式典の後には、のべ8カ国(ドイツ、カザフスタン、日本、ロシア、フランス、メキシコ、フィリピン、南アフリカ)の駐日大使もしくは代理の方から、それぞれの国の核戦略や核兵器禁止条約へのスタンスについて聞く機会がありました。

また、同じく式典に出席するために帰国されていた中満泉 国連事務次長・軍縮担当上級代表からもお話を伺いました。

命の尊さを伝える、被爆ピアノとバイオリンの音色

未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-ピースボートの船上で開かれたコンサート
8月6日の夕方、広島港に着岸しているピースボートの船上で、明子さんの被爆ピアノとロシア人音楽教師・パルチコフさんの被爆バイオリンの演奏を聴きました。

これは、「ピースボート2019夏  平和と音楽の船旅」の一環で開かれたコンサートです。アカデミーの参加者は、あの日キノコ雲の下で何が起こったのかを一緒に想像し、核兵器のおそろしさと平和や命の尊さを考える良い機会になったと話しました。

経験を生かして、学びの形を創造

未来のグローバルリーダーを目指して、広島で核兵器と安全保障を学ぶ −ICANアカデミー2019報告-被爆者から直接話を聞く機会を得て、これからの学びに続けます
最終日には、5つのグループに分かれて、学んだことを発表する機会を持ちました。それぞれのグループから提示された内容は、以下の5つでした。

①直接聞いた被爆者の証言を広める方法として、双方向オンラインプラットフォームの構築、②国際法、特に核兵器禁止条約が軍縮の規範を人道的観点の方向に変える可能性、③北朝鮮などの国が核兵器保有に進んでいく理由の分析、④核抑止論ではない新しい安全保障論、⑤核兵器の問題への若者を含めた市民の取り組み案。

プログラムを終了した参加者は、一様に満足な表情を浮かべ、「共に学んだ仲間の存在を信じて、より平和な世界のために多くのことを達成できると実感した」と話していました。

被爆の実相を体験者の声で伝えることや、それを継承しようとする人々の取り組みなどは、ピースボートの「ヒバクシャ地球一周 証言の航海(おりづるプロジェクト)」で培ってきた経験とネットワークが、プログラム作りにも役立ちました。

ユース非核特使として2014年に同プロジェクトに参加した福岡奈織さんが、広島のフィールドワークを企画・実行してくれたことは、同アカデミーの成功に大きく寄与しました。

また、ピースボートで地球大学を担当していた元スタッフの寺地亜美さんがメインコーディネーターとして関わり、地球大学の目指す「現地での直接的な体験と対話を通して学ぶ」ことが広島でも実現できる要因となりました。

ICANの国際運営団体を担うピースボートは、被爆地との協力を強めながら、核なき世界の実現に向けて貢献できる具体的な形として、「核兵器と安全保障を学ぶ広島-ICANアカデミー」を今後も続けていきたいと考えています。


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