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核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」

核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、2022年10月25日から11月12日にかけて、「第4回広島・ICAN核兵器アカデミー」(以下、アカデミー)を共催しました。

ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。
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核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と広島県は、2022年10月25日から11月12日にかけて、「第4回広島・ICAN核兵器アカデミー」(以下、アカデミー)を共催しました。

ピースボートはICANの国際運営グループメンバーとして、同アカデミーの企画・運営の中心的な役割を担っています。

原爆投下の実態や核兵器・世界の安全保障の動向について学びました

核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
今年のプログラムには、5つの核兵器保有国(米露英仏中)とその他の15か国(オーストラリア、オーストリア、ブラジル、フィジー、インド、イラク、イタリア、日本、レバノン、メキシコ、モンゴル、ルワンダ、南アフリカ、ウズベキスタン、ザンビア)から、計29名の参加者が集まりました。

「核兵器と持続可能性」を全体テーマとし、第一部はオンライン学習とウェビナーセッション、第二部は広島での現地セッションという構成で行われました。

気候変動や健康に関する危機的な状況への懸念が高まるとともに、核兵器の重大なリスクが現実味を帯びる中、参加者は、批判的かつインタラクティブな学習プロセスを通じて、現在の安全保障問題に対する持続可能な解決策を模索しました。

オンライン学習とウェビナーで視野を広げました

核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
近藤紘子さん(上)とメアリー・ディクソンさん
ウェビナーでは、「核兵器の人道的の影響」「核兵器と安全保障に関する政治的、法的、技術的側面」「市民社会の活動」「核軍縮と安全保障のための外交と国連の役割」という4つのテーマについて学びました。

10月25日に行われた第1回ウェビナーでは、幼い時に広島で被爆した近藤紘子さんにお会いしました。近藤さんは、「原爆傷害調査委員会」の医師による診察、エノラ・ゲイ副操縦士ロバート・ルイス大佐との出会い、1945年8月6日に父親が体験したことなどを説明。被爆後の数年間の体験から、どのように原爆や戦争を理解したかを話しました。

米国から参加したダウンワインダー(核実験の風下の住民)であり作家のメアリー・ディクソンさんは、米国における核実験の隠された被害について伝え、自身とその家族や友人が、いかに癌などの病気に影響を受けてきたかについて語りました。
核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
【11月9〜12日、広島でのプログラムにて】平和記念資料館を見学
10月28日、第2回ウェビナーのテーマは「核軍縮と持続可能な開発目標(SDGs)達成の関連性」。

へいわ創造機構ひろしま(HOPe)プリンシパル・ディレクターの島田久仁彦さんと、非営利団体PEAC Instituteの共同設立者で理事長のレベッカ・アービーさんが講師として参加しました。

島田さんは、HOPeの軍縮への取り組みや、核兵器をめぐる世界の考え方について話し、参加者とサステナビリティ、国連、原子力に関する質疑応答をしました。

アービーさんは、人種、軍縮、脱植民地化の関連性について話しました。参加者からは、先住民族の権利や核実験による土地汚染、国連システムに組み込まれた制度的権力や歴史的搾取、先住民族コミュニティに対する原子力の影響などについて質問がありました。
核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
【11月9〜12日、広島でのプログラムにて】中国新聞社を訪問
11月1日の第3回ウェビナーでは、「核兵器が環境に与える影響~過去・現在・未来」をテーマに、二―ジーランドのカーリー・バーチ研究員や共同研究者らが、核技術による放射能汚染と核植民地主義・核帝国主義との関連について話し、アカデミー参加者と小グループでのディスカッションを行いました。

続いて、ICAN国際運営グループおよび核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のメンバーであるアイラ・ヘルファンド医学博士から、将来戦争で核兵器が使用された場合、被害者に対応するための医療体制、経済・社会システムの破壊、「核の冬」による地球の気温と食料生産への影響など、人道的影響について話を聞きました。

今回のウェビナーでは、中満泉国連事務次長兼軍縮担当上級代表が登壇。核兵器が戦争で使用されるリスクが高まっている現状について、即時に軍縮に取り組む必要性を訴えると同時に、ジェンダーや環境などの分野においての核軍縮とSDGsの関連性について述べました。

質疑応答では、軍縮を達成するための「小さな」国や市民社会の役割、今後の核兵器禁止条約(TPNW)への期待、軍縮努力における若者の役割などが取り上げられました。
核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
【11月9〜12日、広島でのプログラムにて】ANT-Hiroshimaを訪問
11月4日、第4回ウェビナーのテーマは「核兵器の財務的側面~支出、企業、投資引き揚げ」。

ICANの金融セクター・コーディネーターのスージー・シュナイダーさんと、ドイツの銀行Bank für Kirche und Caritasの持続可能投資調査部長トミー・ピモンテさんが登壇しました。

スージーさんは、ICANの金融セクターキャンペーンが成し遂げたことについて、また、核兵器禁止条約加盟国の責務や国連の「ビジネスと人権に関する原則」が、金融機関からの協力を受けるための枠組みとなることを説明しました。

トミーさんは、リスク管理やユニバーサル・オーナーシップといった金融セクターの概念が、核兵器産業からの投資引き揚げを提唱するためにどのように活用できるか、また、自身の銀行の取り組みの実践例を説明しました。

持続可能性と正義の戦いという観点から議論される核問題

核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
小グループでの交流
アカデミー参加者29名のうち24名は、広島での4日間の対面セッションに参加することができました。5名はオンラインで参加しました。

広島では、平和記念公園のガイドツアー、平和記念資料館の見学、広島県、広島市、中国新聞社への訪問を行いました。

このほか、小グループに分かれて被爆者やそのご家族の方々と話をしたり、一緒に昼食を食べたり、その後、聞いた話をお互いに共有したりしました。

参加者からは、梶本淑子さん、堀江壮さん、宮崎千代さん(李鍾根さんの娘さん)、荒木史子さん、二川一彦さんとの出会いがプログラムの中でもとりわけ印象的だったと感想が寄せらています。
核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
マーシャル諸島出身のベディ・ラスゥレさんの発表
長崎の若者から長崎での平和教育や核軍縮の取り組み、マーシャル諸島出身のベディ・ラスゥレさんからは核実験の影響やマーシャル人の正義の戦いについて発表がありました。

太平洋地域における核実験の影響を研究している明星大学教授の竹峰誠一郎さんの研究内容もお聞きし、さらに見識を深めました。
核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
湯崎広島県知事とアカデミー参加者
参加者は、広島に滞在中、湯崎広島県知事や松井広島市長に会い、また中国新聞社を訪問しました。

湯崎知事と松井市長は、県と市が核軍縮のリーダーとして地域的・国際的な責任を共有していることを網羅的に説明しました。

中国新聞平和メディアセンター長の金崎由美さんは、被爆者や人道的な影響に関するたくさんの記事を紹介し、参加者の興味を集めました。

最後に、広島にある国際NGO「ANT-Hiroshima」を訪問し、活動内容を学びました。

また、核兵器の問題に対して積極的に活動する若者たちとの出会いは、アカデミー参加者が、広島で学んだことや感じたことを、他の人に伝える方法を見出す力を与えました。
核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
最終日、参加者による発表
最終日は、3つのグループに分かれ、アカデミーで学んだことをまとめ、発表しました。

今回の広島訪問で得たものについて語る人が多く、また核兵器はどこの国のものであっても私たち全員に影響する可能性があることを強調する参加者もいました。

核軍縮は、安全保障の問題だけでなく、人種差別、植民地主義、家父長制などの制度的抑圧に対処する正義の戦いであるという指摘が、発表とグループ討議の双方で繰り返されました。

多様な視点と世界中の新しい仲間をつくった参加者のみなさんは、今後、具体的に行動を起こし、核兵器の完全廃絶に向けた活動を続けていくことでしょう。

最後に

核兵器使用の懸念が高まる中、参加者が共に学んだ「広島・ICANアカデミー2022」
最終日、集合写真
広島で準備、運営・進行、受け入れをしてくれた4人のコーディネーター、アナリス・ガイズバートさん、岩崎由美子さん、福岡奈織さん、田代美怜さんに感謝いたします。

このプログラムは、ピースボートの川崎哲と渡辺里香が、広島県ならびにジュネーブのICANスタッフチームと協力して企画しました。
広島県およびICANから提供されたオンライン学習教材を閲覧できます。なお、プログラム参加者のみ閲覧できるようパスワード保護されている物もあります。

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