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核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告

核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告
(写真提供: ICAN/Alex Papis)
6月23日、オーストリアのウィーンで核兵器禁止条約の歴史的な第1回締約国会議が核兵器の全面廃絶に向けた宣言と具体的な道筋を示した行動計画を採択して閉幕しました。

それまでの1週間、ピースボートは核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と連携し、さまざまな催しを企画し、参加しました。核兵器の脅威が以前にも増して切迫した状況にあるなか、この一週間は、世界中の核被害者の声や若者の取り組みにもフォーカスし、市民社会、専門家、各国政府や国際機関の間のつながりと連携を強化するものとなりました。
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(写真提供: ICAN/Alex Papis)
6月23日、オーストリアのウィーンで核兵器禁止条約の歴史的な第1回締約国会議が核兵器の全面廃絶に向けた宣言と具体的な道筋を示した行動計画を採択して閉幕しました。

それまでの1週間、ピースボートは核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と連携し、さまざまな催しを企画し、参加しました。核兵器の脅威が以前にも増して切迫した状況にあるなか、この一週間は、世界中の核被害者の声や若者の取り組みにもフォーカスし、市民社会、専門家、各国政府や国際機関の間のつながりと連携を強化するものとなりました。

ICAN市民社会フォーラム

6月18日~19日に開催されたICAN市民社会フォーラムには100を超える多様なセッションが行われ、500人以上が会場に集まり、さらに多くの人々がオンラインで参加しました。オープニングではピースボートの川崎哲の司会のもと、核兵器の真の専門家である世界各国の核被害者の方々が登壇されました。長崎の被爆者である日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の木戸季市さん、米国の核実験の風下住民であるメアリー・ディクソンさん、タヒチで核実験被害者の権利救済に取り組むレナ・ノーマンさん、そしてコンゴ共和国でウラン採掘問題に取り組む環境活動家レミー・ザヒガさんがそれぞれの経験を語りました。このパネルディスカッションの後には、過去2年間にピースボートのオンライン証言会で発言された被爆者の声を集めたビデオ(以下)が上映されました。
市民社会フォーラムは、会場とオンラインのハイブリッド形式によるものでした。広島・長崎をはじめ、世界で核の被害を受けた地域とオンラインで生中継してプログラムが行われました。2日目には南オーストラリアとつなぎ、現地からは、先住民族の土地での核実験の歴史や現在も続く身体的・精神的影響についての悲痛な証言が行われました。続いて、広島と長崎の被爆者や市民の方々からお話を伺いました。広島からは、きのこ会(原爆小頭症の被爆者と家族の会)の証言とビデオが紹介されました(以下)。 長崎からは、恣意的な行政上の線引きにより、未だに日本政府が被爆者として認めていない人々の経験と数十年にわたる闘いが視聴者に伝えられ、真の意味で「誰ひとり取り残さない」被害者支援の必要性が強調されました。
核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告
ピースボートはこのほかにも、北東アジアの非核化に関するセッション、被爆者と世界の若者の交流、2021年12月の「世界核被害者フォーラム」のダイジェスト映像の上映など、フォーラム期間中にさまざまなプログラムに携わりました。ピースボートは、日本からウィーンのフォーラムに参加した多くの団体・個人をつなぐ役割を担いました。フォーラムでは他にも、パネル討論、パフォーマンス、VR体験など、参加者が点と点を結びつけ、「核」の全体像と他の緊急なグローバル課題とのつながりを考え、核兵器をなくすための計画を一緒に考えるためのセッションが盛りだくさん行われました。

核の非人道性に関する国際会議

核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告
核兵器の非人道性会議で証言する日本被団協の木戸季市さん。通訳はピースボートのメリ・ジョイス(写真提供: ICAN/Alex Papis)
6月20日には第4回「核兵器の人道上の影響に関する国際会議」がオーストリア政府主催で開催され、各国政府の代表、国際機関、科学者、被爆者、市民社会が一堂に会しました。オーストリアのアレクサンダー・シャレンベルク外務大臣、中満泉国連事務次長兼軍縮担当上級代表、ノーベル平和賞を受賞した国際原子力機関(IAEA)の元事務局長モハメド・エルバラダイ博士によるスピーチに続き、日本やマーシャル諸島のスピーカーによる多世代にわたる力強いスピーチが行われました。

長崎で被爆された木戸季市さんは、1945年8月のあの日の体験を語り、原爆によって奪われた無数の命のうち、家族に看取られることができたのはわずか4%であり、自分に何が起こったのかさえ理解できずに死んでいかなければならなかったことを強調しました。
核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告
(写真提供: ICAN/Alex Papis)
「KNOW NUKES TOKYO」共同代表で長崎の被爆3世である中村涼香さんは、核兵器が世代を超えて及ぼす未知の影響に対する恐怖と、被爆者が「悲劇の主人公」ではなくそれぞれの「人生を生きている」人々であるとして、その優しさと温かさについて語りかけました。

マーシャル諸島の学生団体である「MISA4thePacific」の共同設立者であるダニティ・ローコン氏は、核実験が人々、土地、文化に与えた継続的な被害、そして核兵器禁止条約によって義務付けられた被害者援助の必要性について訴えました。「マーシャル諸島の若い女性として断言しますが、引き起こされた人的被害は世代を超えて続いています。私は、毎日見ている人たちからそのことが分かるのです」と述べました。

核兵器禁止条約第一回締約国会議

核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告
核兵器禁止条約第一回締約国会議で声明を発表するメリ・ジョイス
そして6月21日から23日にかけて、歴史的な核兵器禁止条約第一回締約国会議が開催されました。アントニオ・グテーレス国連事務総長は開会セッションで、「かつては考えられなかった核戦争の可能性が、いまや再び現実のものとなっています。1万3000発の核兵器が世界中の兵器庫に保管されています。地政学的緊張と不信が蔓延する世界において、これは絶滅へのレシピに他なりません」と述べました。

オーストリアのアレクサンダー・クメント大使が議長を務めた3日間で、多くの締約国がロシアの行動を非難し、核兵器の使用がもたらす壊滅的な非人道的影響とそのリスクの増大を踏まえ、禁止条約の実施と核廃絶を前進させる決意を表明しました。これらの議論は、世界中の核被害から影響を受けている人々やコミュニティからの証言によって裏付けられました。
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(写真提供: ICAN/Alex Papis)
また、ピースボートは、2021年に開催した世界核被害者フォーラムの成果を踏まえ日本の市民社会の専門家がまとめた被害者援助と環境修復に関する提言について声明を発表しました。

締約国会議は、条約の実施と核兵器の完全廃絶という目標に向けた道筋を示す政治宣言と、具体的な行動計画を採択して閉幕しました。行動計画には、条約の普遍化、被害者援助と環境修復、国際協力、科学的・技術的助言、より広い核軍縮・不拡散体制の支援、条約に盛り込まれたジェンダー規定など、50の具体的行動が盛り込まれています。

核禁ウィーク in Japan & オンライン

核なき世界への道筋が示された――ウィーン報告
ウィーンでのプログラムに加え、ピースボートは核兵器廃絶日本NGO連絡会の一員として、1週間を通して日本やオンラインで行われた10以上のイベントのコーディネートに携わりました。絵本の読み聞かせ、医療や法律の観点からの講演、若者の討論会、そして現場からの最新情報を日本の多くの人々と共有するためのウィーンとのライブ中継が毎日行われました。

この1週間を通じて、核の被害が世代を超えて続くこと、核の威嚇は決して許されないこと、そして核兵器は廃絶されなければならないことが改めて明らかにされました。締約国、市民社会、その他の関係者は、核兵器によって被害を受けた人々や場所を支援するため、より多くの国が条約に参加するよう促すため、そして核兵器のない世界の実現に向けて協力と連帯を深めるために協力することを約束しました。日本政府は、核兵器禁止条約第一回締約国会議にオブザーバー参加すらしませんでしたが、日本の市民社会の力強いプレゼンスを示すことができました。

参加された皆さま、協力してくださった皆さまに感謝いたします。

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