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核被害者援助に関してピースボートが声明を出しました

核被害者援助に関してピースボートが声明を出しました
核兵器禁止条約第一回締約国会議で声明を発表するメリ・ジョイス
6月22日、ウィーンで開催された核兵器禁止条約第一回締約国会議において、メリ・ジョイスがピースボートを代表して声明を読み上げました。これは同条約第6・7条の「核被害者への援助と環境の修復」に関するNGOの声明の一環としてなされたものです。
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核兵器禁止条約第一回締約国会議で声明を発表するメリ・ジョイス
6月22日、ウィーンで開催された核兵器禁止条約第一回締約国会議において、メリ・ジョイスがピースボートを代表して声明を読み上げました。これは同条約第6・7条の「核被害者への援助と環境の修復」に関するNGOの声明の一環としてなされたものです。

核兵器禁止条約第6・7条に関するピースボートの声明

ご参加の皆さま

日本に拠点をもつ国際NGOピースボートを代表してお話しする機会をいただいたことに感謝します。ピースボートは1983年の創立以来、核による被害を受けた人々や地域を訪ねる活動を、日本において、また、私の出身国であるオーストラリアをはじめとする世界各地で行ってまいりました。

私はまず、核の被害者の皆さまに敬意を表します。核の被害を直接に体験してこられた方々による訴えこそが、核兵器禁止条約の成立を導きました。今週の一連の会議でなされた被害者たちの証言は、その重要性を示すと共に、現在の各国の制度や国際的な支援が不十分であることも浮き彫りにしました。私は、ここウィーンにいらっしゃる核の被害者の方々はもとより、ここウィーンに気持ちを向けてくださっている方々、さらに、既に旅立たれた被害者の方々に対しても、感謝を表したいと思います。

昨年12月、ピースボートとICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)は世界核被害者フォーラムを共催しました。フォーラムには、五大陸から核被害者らが集まり、それぞれが抱えている状況、取り組み、ニーズを分かち合い、健康と生活、文化、環境に対する危害について語り合いました。これらは過去の問題ではなく、長期にわたって続いています。健康上の影響は今日の問題であり、人々は日々亡くなっています。放射線は消えることなく、心の苦しみは世代を超えて続いています。本日の私の声明は、この世界核被害者フォーラムからのメッセージや、日本の市民社会が提出した核兵器禁止条約第6条・第7条に関する共同提言、およびこの核兵器禁止条約第一回締約国会議に先だってなされた核被害者の証言に基づいています。

私たちは第一に、核兵器の人道上の影響は世代を超えて進行する苦しみであることを強調します。被害四世においてすら、異常がみられています。核被害者の方々は、核兵器による身体的な影響のみならず、社会的・心理的な影響についても証言しています。本日ここにいらっしゃる長崎の被爆者木戸季市さんは、被爆後に苦しむ子どもたちや親を助けることができなかったことへの苦悩や、死に至る病にかかるかもしれないという「時限爆弾」を体に抱えたまま生きていくことの不安について、お話をされています。しかるに、こうした世代を超えた影響の多くは認められないままです。マーシャル諸島では、核の汚染により人々が先祖代々からの土地を離れざるを得なくなり、伝統文化からも切り離され、そのことが糖尿病や他の非伝染性疾患などの二次疾病の増加につながっているといわれています。オーストラリアにおけるイギリスによる核実験の被害三世であるコカタ族の女性ミア・ハセルダインさんは、お腹の中の女の子が腎臓と心臓と脳に腫瘍ができて死産となったことの苦しみについて語ってくれました。彼女は、自分の子どもたちが自分と同じ苦しみを感じるときが来るのではないかと心配しています。このような世代を超えて続く影響は、数十年先にも援助が必要であることを示しています。締約国は、核被害者の援助について定めるときに、複数世代にわたる影響や、核による心理的被害を含む継続的被害についての幅広い理解を含める必要があります。

私たちはまた、各国における現行の援助制度は不十分であることを強調します。そして、締約国に対して、核の被害を受けた人々や地域に対してとられている法的または保健上の諸制度について徹底的に調査するよう求めます。構造的で排他的な欠陥は、核の被害者をより幅広くとらえる枠組みによって正されなければなりません。行政上の区分によって被害者を特定する方法ではなく、これまで被害者と認定されてこなかった人々も含め、多面的な影響と継続的な被害を包含した真に被害者中心の方法をとる必要があります。私たちは、被害者自身が決定権をもつ形での被害者の幅広い定義を求めると共に、責任と決意の宣言を求めます。

これまで多くの政府が核兵器について虚偽や隠蔽をくり返してきました。だからこそ私たちは、より多くの研究とデータを求めます。核の植民地主義や人種差別の構造の中で検閲が行われ沈黙が強要されてきたことが認識されなければなりません。調査やデータは被害者が入手可能なものにすべきであり、被害地域の人々が話す言語へ翻訳するなど、アクセス可能であると共に文化的に適切な形で伝えられなければなりません。

私たちは、核兵器の歴史と遺産についての教育と意識啓発の重要性を強調します。先の世代の物語を語り続け、それを学校のカリキュラムに入れていくことが必要です。これは、締約国政府および市民社会が共に重要な役割を果たせる分野です。核兵器が地域、人々、環境へもたらしてきた影響を過小に語ろうとする動きが絶えない中で、これに反対する動きをもっと強めなければなりません。

条約第6・7条は、核兵器の被害を受けた国々はもとより、すべての締約国そして非締約国も含む幅広い連帯の枠組みの中で履行されていくべきです。それは、実際的に即座に開始され、被害者自身を含む市民社会の参加と定期的な報告を伴って行われるべきです。その過程は、被害地域の人々に対して開かれアクセス可能な形であるべきです。私たちは締約国に対して、情報提供を受け付け検討する恒常的組織を設置すると共に、援助履行のための国際信託基金の設立を検討するよう勧告します。

そして何よりも、私たちは締約国に対して、被害を受けた人々が被害者援助と環境修復の議論の中心にいなければいけないことを確認し、自らを核被害者と認識する人々すべてを幅広く含むあらゆるステークホルダーからの意見を集めるよう求めます。これまで見えないところへ追いやられてきた人々をも適切に援助するために、締約国は被害者援助において「誰一人取り残さない」という目標を掲げるべきです。私たちは、各国の代表者に対して、広島・長崎や世界の他の核の被害地域を訪ね、被害者と対話し、関係施設を訪問するよう求めます。そうすることによって、核の被害についてしっかりと理解し、被害者自身が求める援助を提供することができるようになります。

もっとも重要なこととして、私たちは、すべての政府に核兵器禁止条約に加わることを求めます。それは、地球上の核被害者に対しよりよい支援と便宜を提供するための一歩であり、さらに、自分たちが経験した苦しみを他の誰にも味あわせたくないという核被害者たちの最大の願いを実現するための一歩でもあるのです。

ありがとうございました。

(2022年6月22日、発表:メリ・ジョイス)

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