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38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)

38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)
イースター島で固有種の木々を守る団体に農機具を届けた(2017年)
世界各地に支援物資を届けるUPA国際協力プロジェクト。国と国の利害関係に左右されない、人と人とのつながりをつくることを目的に、1984年に設立されました。これまで、鉛筆やサッカーボール、ミシンといった日常的に使うものから、車いすやカーブミラー、救急車といったインフラになるものまで、様々な支援物資を、56の国と地域にある420か所以上の施設に届けてきました。

UPAの担当スタッフである水口明子にこのプロジェクトの意義とその魅力について聞きました。後編は、UPAによる様々な国への支援やピースボートだからこそできる支援の形をお伝えします。
イースター島で固有種の木々を守る団体に農機具を届けた(2017年)
世界各地に支援物資を届けるUPA国際協力プロジェクト。国と国の利害関係に左右されない、人と人とのつながりをつくることを目的に、1984年に設立されました。これまで、鉛筆やサッカーボール、ミシンといった日常的に使うものから、車いすやカーブミラー、救急車といったインフラになるものまで、様々な支援物資を、56の国と地域にある420か所以上の施設に届けてきました。

UPAの担当スタッフである水口明子にこのプロジェクトの意義とその魅力について聞きました。後編は、UPAによる様々な国への支援やピースボートだからこそできる支援の形をお伝えします。

南米で日本文化の継承をサポート

38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)
チリで日系の若者と交流をし、浴衣や習字道具などを届けた(2017年)
編集部:支援物資として着物を集めることがあるとの話がありましたが、海外へ送る支援物資としては珍しいと思います。これらはどのように使われるのでしょう?

水口:UPAは着物やゆかた、日本の書籍、マンガ、和太鼓など日本ならではのものを、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルーなど南米の国々に届けてきました。送り先は、現地の日系協会や日本語学校などです。

これらの国には、かつて仕事を求めて日本から渡っていった日本人とその子孫が暮らしています。世界で一番日系人が多いブラジルには、約150万人の日系人が暮らしています。

今、これらの国に暮らす日系人の若者の多くが日系3世や4世で、日本に暮らしたことがありません。日系協会では自分たちのルーツである日本の文化継承に力を入れていますが、現地で日本のものを手に入れることは簡単ではありません。

UPAは文化継承をサポートするために、支援物資を届けています。日系協会では、これらの物資を使って日本の伝統行事を開催したり、文化教室を開いたりしています。

その結果、日系人への文化継承だけではなく、日本に興味を持つ人々や周辺で暮らしている人々との交流にも役立っています。

夏祭りや餅つきなど、日本の伝統行事が地球の裏側で開催され、日本にルーツを持つ人々だけでなく、その国の人々が交流をして、日本文化をより理解することにつながる。

支援物資を届けることで、そのような素敵な取り組みに参加できていることがうれしいです。

船を出し続けるピースボートだからこそできること

38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)
イラク各地の病院に車いすを届けた(2007年)
編集部:ピースボートが支援物資を届けるうえでの強みはなんでしょうか。

水口:1つは、やはり自分たちの船に支援物資を積み込んで、直接現地に届けることができることです。仕事柄、支援物資を送る活動をしている他の団体の方と話をすることもあるのですが、みなさん苦労されているのは輸送費です。

多くの物資を集めることができても、それを現地まで運ぶコストが膨大になってしまいます。ピースボートは独自に船をチャーターしているので、100箱の支援物資を一度に運ぶこともできますし、大型の楽器も届けることができます。

そして長年、定期的に支援する団体を訪れることで、物資を受け取る人々と十分にコミュニケーションをとることができることも大きな強みです。

ピースボートは地球一周の船旅で、これらの団体を訪れています。船が寄港する前には、スタッフが綿密に現地と打ち合わせをしています。

そこで支援物資が必要な現場の状況や、必要な物資と量を確認しています。そして、これまで届けたものがどのように活用されているかを確認することができます。

これまで38年間続けてきたUPAが持つ現地との深い繋がりがあるからできることです。

人々の持続可能な生活を実現するための活動

38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)
パプアニューギニアのバイニング族の村を訪れ文房具やスポーツ用品を届けた(2020年)
編集部:支援物資を届けるうえで、水口さんが大切にしていることや、気を付けていることはあるでしょうか?

水口:支援物資が、世界各地の現場で社会をより良くしようと活動している人々の邪魔になることは絶対に避けなければなりません。残念ながら、現地の状況をきちんと調査せずに必要のないところに物資が送られたり、必要以上の大量の物が送られているケースもあります。

私は、支援物資を送る上で一番重要なのは、現地の人々の持続可能な生活を実現するための支援でなければならないということだと思っています。

継続して支援ができることは強みですが、気を付けないといけないこともあります。ずっと支援を続けていると、支援物資を送ること、また現地の団体もそれを受け取ることがルーティーンになってしまい、本当に今その物資が必要なのかの確認を怠りがちになります。

現地の状況が変わっているにも関わらず、それをきちんと確認していないと、必要ではないものを送ることに繋がってしまいます。

私たちが届けているものはプレゼントではなく、あくまでも現地の人々が持続可能な生活を実現するための支援物資です。

UPAの活動は多くのスタッフや現地の人々が関わっているものなので、みんなでその意義を共有することは難しい面もありますが、UPAがこれからも現地の人々に寄り添った活動を続けられるように、この部分は大切にしたいと思っています。

現地の声を大切に

38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)
スリランカの養護施設。運動靴やランドセルを届けた(2013年)
編集部:これまで長年支援を続けてきた国は多くあると思いますが、たとえば他にどのような場所に支援をしてきたのでしょう?

水口:UPAは1984年から活動をしているので、本当に多くの国々でさまざまな支援物資を届けてきました。届け先は、56の国と地域にある420か所以上の施設に上ります。

たとえば、南太平洋のパプアニューギニアには1995年から支援を続けています。中でもミオコ島やマチュピット島など離島に暮らす人々は、2020年に私たちが訪れた時も、原始的な暮らしをしていました。少数部族が伝統を守り暮らしているところも多くあります。

そして自然災害の影響を受けやすく常に物資が不足している状態です。特に子どもたちへの教育現場でスポーツ用品が手に入りにくく、これまでサッカー、バレーボール、野球、ラグビー、その他様々なスポーツ用具や文房具などを支援してきました。

2020年に訪問したときには、学校で机や椅子なども数が足りていないことを知り、次回訪れる際には必要であれば支援をしたいと思っています。

スリランカの養護施設「シュリ・ヤソダラ・ガールズホーム」には、2004年から支援をしています。1983年から2009年まで続いたスリランカの内戦により両親を失った子どもや、家庭環境が理由で入ってきた女の子たちが暮らす施設です。

2013年にピースボートが訪れた際は、子どもたちの通学鞄が欲しいとリクエストを受けたので、丈夫で長持ちする日本のランドセルを提案したところ、了承が得られたので集めて持って行きました。

でも、次に訪れた際、ランドセルはスリランカの気候や子どもたちの生活にあまり合わなかったとの意見をいただき、それからはトートバッグやナップサックなどを届けています。

現地のニーズを逐一確認して、必要なものを必要な分だけ支援しています。

中米のパナマでは、先住民クナ族の村に2012年から支援物資を届けています。パナマで最も有名な民族手芸「モラ」は、クナ族の女性たちによって一つ一つ手作りされています。カラフルな色合いで鳥、魚、花、ヤシの木、虹など、自然のものを模した図案が特徴です。

クナ族は、自分たち独自の文化を守るため立ち上げた保全団体「クナ・オーソリティー」を中心に文化継承に励んできました。しかし、先住民族の減少や経済的理由による慢性的な物資不足などを背景に、伝統的文化を継承することが難しくなる地域が出てきました。

UPAは、「クナ・オーソリティー」と話し合いをしながら、その時々で必要なものを届けてきました。子どもたちの学習を支援するための文房具やコンピュータ、そしてモラを作っている工房に糸、ハサミなどの裁縫道具やミシンを届けました。

今ではモラを使った商品を観光客にお土産として売ることで、安定した収入を得られるようになりました。

何度も訪問して現地の方々と話し合うことが、彼らの生活向上と持続可能な生活をつくることに繋がっています。

次の船で支援物資を届けるために

38年間船旅を続けているピースボートだからこそできる支援・水口明子とUPA国際協力プロジェクト(後編)
南アフリカで子どもたちに音楽教育を提供するアフリカン・ユース・アンサンブルと交流を続け、楽器を届けている
編集部:新型コロナウイルスの影響で、船旅を出すことができない状況が続いています。支援物資を届けることもできませんが、UPAとして今活動していることはあるでしょうか?

水口:UPAは、訪れる場所で必要としているものを集めるので、船旅が出ていない現在は支援物資の募集ができません。

私たちが支援をしている地域は、貧困問題や教育格差など、様々な問題を抱えていますが、新型コロナウイルスの影響で、さらに状況が悪化しているところもあります。今わたしたちができることは、次にピースボートの船が出航する時、迅速に支援物資を届けることだと思います。

そのため、UPAはオンラインショップを開設しました。支援物資を待っている人々の手に届けるためには、人件費や国内外での運送費、通関費用、倉庫代などが必要です。利益分は全てこれらの費用に充てさせていただきます。

地球一周の船旅が再開したときに、現地のニーズにあった支援をすみやかにおこなうため、お買い物でUPA活動にご協力をお願いします。

また、SNSで情報発信もしています。インスタグラムとツイッターに、これまで世界各地で行なってきた支援について掲載しているので、こちらもご覧ください。(オンラインショップ、インスタグラム、ツイッターについては下にリンクがあります。)

そして地球一周の船旅が再開したときには、ぜひいっしょに支援物資を届けましょう。ボランティアスタッフとしてUPAの活動に参加してください。そして船旅に参加して、支援物資を待っている人々に直接手渡してください。きっと素晴らしい経験になるはずです。

UPAの活動には、船旅に参加できない方にもご協力いただきたいです。支援物資の募集はウェブでお知らせします。その時々、訪問する団体が必要としているものを集めていますので、支援物資を提供することで、UPAにご協力ください。

※支援物資の募集は、船旅の出航が近くなりましたら、改めてホームページやSNSでお知らせいたします。

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