G7広島サミット現地報告――首脳声明には失望、市民はさらに前へ
5月19~21日、G7広島サミットが開催されました。各国首脳の広島訪問に世界中のメディアが注目し、核兵器をめぐる議論を盛り上げました。ピースボートは、C7(Civil7)や核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の活動を通じて、G7サミットが核兵器のない世界への実質的な前進をはかる場となるようさまざまな働きかけをしてきました。サミット期間中は、川崎哲、畠山澄子、松村真澄が広島現地に入り、東京や世界とつないでさまざまな発信を行いました。
- プロジェクト: 核廃絶
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2023.6.16
2023.6.16
5月19~21日、G7広島サミットが開催されました。各国首脳の広島訪問に世界中のメディアが注目し、核兵器をめぐる議論を盛り上げました。ピースボートは、C7(Civil7)や核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の活動を通じて、G7サミットが核兵器のない世界への実質的な前進をはかる場となるようさまざまな働きかけをしてきました。サミット期間中は、川崎哲、畠山澄子、松村真澄が広島現地に入り、東京や世界とつないでさまざまな発信を行いました。
G7サミットは「雨」――C7が総括
サミット初日には首脳らが平和公園を訪問し、限られた時間でしたが、原爆資料館の見学と被爆者との面会が行われました。翌日からは招待8カ国首脳やウクライナのゼレンスキー大統領も加わり、平和をテーマに議論がくり広げられました。そして「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」など5つの声明と1つの首脳宣言(コミュニケ)が発出されました。しかしこれらの文書には、核廃絶を達成するという約束もなければ、いかなる核の使用・威嚇も許さないとの表明もなく、むしろ自らの核保有を正当化する言葉が盛り込まれていました。核兵器廃絶の観点からは「雨」、その他の分野のC7のコーディネーターらもサミットの成果に軒並み厳しい評価を示し、C7による全体としての評価は「雨」となりました。
「世界の指導者らの重大な失敗」――ICANが声明
初日の夜に発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」と2日目に出された首脳宣言に対して、ICANは即座に声明を発表しました。広島ビジョンは「核兵器不使用の継続」「核兵器数の減少傾向の維持」を掲げたものの、核兵器の禁止にも廃絶にも触れませんでした。ICANは、G7が「核軍縮を前進させることに失敗」したと評価し、彼らが「核兵器を使用する権利を持ち続けることの重要性さえ強調」していると批判しました。被爆者や日本のNGOからも、広島ビジョンへの失望の声が相次ぎました。
G7期間中、現地から生配信を行いました
サミットで首脳たちがどのような議論を行い、被爆者や現地市民がどのように受け止めたのか、ピースボートは期間中毎日、2つの番組として生配信しました。パルシステム連合会、KNOW NUKES TOKYOと協力して4日間行われた「ヒロシマサミットアクション」では、G7の動きの解説に加え、合唱や被爆ピアノ演奏も行いました。
被爆者の声を国内外に発信しました
5月19日夜、広島県内の被爆者の方々と若者らによる記者会見を行いました。首脳らによる資料館訪問が今後の核軍縮に生かされる期待を持ちつつも、訪問時間の短さや不透明さが指摘されました。5月21日午後には、カナダ在住の被爆者サーロー節子さんによる記者会見を行いました。サーローさんは「広島まで来てこれだけしか書けないかと思うと、胸がつぶれそうな思いがする」と、落胆を隠しませんでした。
市民の運動は前へ
期待外れのG7首脳声明は、多くの被爆者のみなさんと市民を失望させるものでした。しかし、首脳らが被爆の実相の一端に触れ、また、多くのメディア報道を通じて世界が広島および核兵器の問題について注目したことは、今後の運動の広がりにつながるものです。ピースボートとしてはまた、C7を通じて、多くの国内外のNGOと協働できたことじたいが大きな成果であったと考えています。このつながりを、今後の活動に活かしていきます。