パンフレットをでお届け
資料請求

第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました

第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました
ロシアのウクライナ侵攻で核兵器使用の懸念が高まる中、「核兵器のない世界のための国際有識者会議(IGEP)」の初会合が、12月10〜11日、広島で開催されました。
INFO
ロシアのウクライナ侵攻で核兵器使用の懸念が高まる中、「核兵器のない世界のための国際有識者会議(IGEP)」の初会合が、12月10〜11日、広島で開催されました。
IGEPは、岸田文雄首相の呼びかけで設立され、専門家がそれぞれの立場を超えて意見を交換し、「核兵器のない世界」の実現に向けた具体的な道筋について、率直に話し合う場となることを目指しています。

広島には15名の委員のうち、13名が集まり、熊本県立大学理事長で国際政治の専門家である白石隆さんを座長として議論を行いました。
開会セッションでは、バラク・オバマ元米国大統領がビデオメッセージで「核兵器のない世界」を呼びかけました。

オバマ氏は、2016年5月に現職の米大統領として初めて広島を訪問したことを振り返り、「世界中の核兵器の脅威を減らすという私自身の決意が強まり、この同じ決意によって今日ここにみなさんが集まっている 」と述べ、「私たちは子どもたちのために、核兵器のない世界を追求する義務がある 」と強調しました。

また、アントニオ・グテーレス国連事務総長がビデオメッセージを寄せ、「冷戦の暗黒時代以来、その使用についてこれほど明確な脅しを聞いたことはない」と、ウクライナにおけるロシアの核の脅威を批判する発言をしました。

オーストラリアのアンソニー・アルバ二ージー首相もビデオメッセージで、北朝鮮の核開発について「安定的で安全な、ルールに基づいたインド太平洋における共益を損なう」と述べ、「基礎となる核不拡散条約(NPT条約)」に尽力することを表明しました。
第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました
ローズ・ゴッテメラー元米国務次官(中央)
広島では2日間にわたって会議が行われました。

1日目に、被爆者である八幡輝子さんが英語で証言を行いました。八幡さんは現在85歳で、8歳の時に自宅で被爆しました。

2013年にピースボートの「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」に参加したことがきっかけで核兵器廃絶への思いが強まり、核兵器の脅威のもとで世界は厳しい選択を迫られていること、今回のIGEP会議が核兵器廃絶への一歩となることを願っていることを訴えました。

ローズ・ゴッテメラー元米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は、初めて自身の母語で被爆者の証言を聞き、強く心を動かされたと述べました。
第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました
同日、核兵器廃絶日本NGO連絡会がコーディネーターを務め、IGEPメンバーとNGO関係者との意見交換会が行われました。

日本被団協、広島県被団協、広島被爆者団体連絡会議、広島平和記念資料館、広島県朝鮮人被爆者協議会、韓国原爆被害者対策特別委員会、広島県原水協、核廃絶地球市民集会ナガサキ、ANT-Hiroshima、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)、カクワカ広島、原水爆禁止日本国民会議、世界連邦国会委員会、日本反核法律家協会(JALANA)、Know Nukes Tokyo、ピースボートから、19名のNGO関係者が出席しました。

ピースボートからは渡辺里香が参加し、畠山純子が通訳を担当しました。
第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました
この中で、広島県被団協の箕牧智之理事長は、原爆の威力は想像を絶し、生き残った人たちは目に見えない放射線障害に今も苦しんでいることを痛切に訴えました。その上で、「粘り強く核保有国と日本政府に核兵器禁止条約の署名批准を求め、核兵器廃絶を世界に訴えていこう」と呼びかけました。

日本被団協の木戸季市事務局長は、核兵器が戦争をなくす力になっていないことを踏まえ、核抑止論の欺瞞性を議論して欲しいと提案しました。また、武力で世界の紛争は解決できず、話し合い・対話でのみ解決できるのではないか、と訴えました。
第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました
核廃絶地球市民集会ナガサキの朝長万左男さんは、「核なき世界に到達する最も現実的な課題はこの核抑止政策の克服を全核保有国がそろって追及していくことだと信じます。日本の拡大抑止(核の傘)政策の克服も同様にわれわれ日本の市民にとって喫緊の課題であります。」と説明しました。

そして、IGEP委員に向けて、「核の傘」政策や核抑止論から脱却するための提案を追及するよう求めました。
第一回「国際賢人会議」のNGO意見交換会に参加しました
続いて、カクワカ広島の田中美穂共同代表は、次のように述べました。

「核廃絶までの道のりがいかに険しいものであるとしても、広島・長崎、そして世界中のヒバクシャが強いられ続けている苦痛は、核軍縮の議論における困難とは到底比べ物になりません。

彼らの苦しみを知りながら、ここに座って核兵器がなくなるのをただ願っているわけにはいかないのです。

賢人会議のメンバーのみなさん、核抑止ではなく核兵器禁止を勇気を持って世界に訴えてください。私たちはみなさんがここ広島から世界をリードしてくださることを望んでいます。」
NGO側からは、IGEPの委員がすべきこととして、次の提言をしました。

1)被爆者の生の声から学んだ人道的な影響に基づいて核問題を議論すること。
2)核兵器、核実験、ウラン採掘による健康被害、人権侵害、不均衡な性別による影響が、今日まで続いている深刻な問題であることを忘れない。
3)他人の犠牲の上にしか成立しない安全保障体制に違和感を覚える。
2日目は、平和記念公園で慰霊碑に献花した後、広島平和記念資料館を見学しました。

白石議長から、核軍縮の機運が盛り上がらない理由や軍備管理のあり方についての議論が中心となったこと、ロシアのウクライナ侵攻についてメンバー間で見解が分かれ、議論が難航したことなどが説明されました。

閉会式では、岸田総理が、今回のIGEP会合で「核兵器のない世界」に向け具体的な手段を議論し、2026年のNPT再検討会議へ提言を行うことを求めました。さらに、2023年5月に広島で開催されるG7サミットに向けてこの会合を継続し、強いメッセージを発信していくよう言及しました。

次回のIGEP会合は、G7サミットの前、2023年初旬の開催が予定されています。

このレポートを読んだ方におすすめ