緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告

プロジェクト:紛争予防(GPPAC)
緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告photo:Patrick
ミャンマーでは、2月1日に国軍がクーデターを起こし、抗議する市民に対して武力による激しい弾圧を行っています。ピースボートは4月10日に緊急のオンラインイベントを開催し、ミャンマーの現状や日本政府の関わり、私たちに何ができるかなどについて取り上げました。登壇したのは、ミャンマー出身のキン・オーンマーさん(民主化・人権活動家)と、藤松りんさん(NGOプログレッシブ・ボイス)、木口由香さん(NGOメコン・ウォッチ)の3名です。ピースボートの川崎哲が司会をイベントは日英同時通訳で配信され、460名以上の人が参加されました。内容の一部を紹介します。

国軍の暴力は32年前と同じ:キン・オーンマーさん

緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告キン・オーンマー(Khin Ohmar)氏
※キン・オーンマさんは、民主化・人権活動家、NGOプログレッシブ・ ボイス諮問委員会議長。ミャンマー(ビルマ)出身。1988年の軍事クーデターの際、民主化を求める運動に学生として参加、それ以来、国連人権理事会などで報告するなど、民主化と人権のための運動を精力的に行なっている。

まず、私の故郷で民主化のために命をかけて闘い続けているすべての人たちのために、祈りを捧げます。 

32年前1988年、国軍が民主化運動に対して弾圧を始めました。その時、私は学生で抗議運動に参加しましたが、武力で弾圧され、その後は国外に出ました。ミャンマーは10年前に民政移管されました。しかし、当時抗議運動に関わった人が2000人も刑務所に収監されたのですが、当時を知る多くの人が今の軍のやり方は当時とそっくりだと考えています。

若い丸腰の市民に暴力を振るい、銃を放ち、拘束しています。現在(4月10日)までに、48人の子どもを含む、600人以上の市民が亡くなり、さらに多くの負傷者を出しています。また、新たに3000人以上が拘束されています。救急車や病院、市民団体や慈善団体などの事務所や家が襲撃を受けています。現場ではマシンガン、ロケットランチャーなどの強力な殺傷兵器が使用され、市民の頭を狙って狙撃しています。

しかし88年とは違う点もあります。それは多くの人々が不当なクーデターに抗議の声をあげ、団結して不服従運動を進めていることです。学生だけでなく、公務員や企業に勤める人々も多く参加しています。また、88年は国外に今起きていることを伝える手段はありませんでした。いまは若い人たちがソーシャルメディアを駆使した抵抗運動を行っています。地元のメディアも、免許を剥奪されているものの、粘り強く報道を続けています。

国軍はインターネットを遮断するなどして妨害していますが、それでも人々は民主主義を手にするまであきらめないと思います。選挙によって選ばれた国会議員たちによる国を必ず実現する、という強い決意を感じます。

危機の根幹は、国軍の責任が放置されてきたこと

緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告photo:Patrick
国軍は残酷な攻撃をやめようとしていません。私が特に危惧していることは、失踪したり拘束されている若い女性たちのことです。これまでも、拷問に加え、拘束された若い女性に性暴力が振るわれてきました。

国軍はそれにより恐怖心を植え付け、抵抗を終わらせようとしているのです。今この瞬間も、若い女性や子どもたちが犠牲になっていることを知ってほしいと思います。

私は、これ以上の流血の事態を止めるためには、国連安全保障理事会が介入するしかないと考えています。国軍が行っていることは、人道に対する罪で裁かれるべきです。

より本質的な問題は、国軍は、こうした殺人や性暴力、拷問などの残虐行為を何十年にもわたり行ってきたにもかかわらず、まったく責任が問われなかったということです。特に少数民族の地域ではこうしたことが継続的に続けられてきました。罪に問われないことにより、国軍の暴力や犯罪はエスカレートしてきました。国軍にはまったくモラルがありません。

いま、ミャンマーは国家として崩壊しかかっています。この危機を生んだ根幹には、何十年にもわたって国軍が少数民族に対して暴力を振るってきたにもかかわらず、何の罪にも問われなかった「不処罰」の問題があります。例えば3年前、少数民族であるロヒンギャの人たちへの暴力が明らかになった時、国際社会がもっと厳しく対処していれば、いまの危機は防げたかもしれません。

私たちが求める民主主義と自由を実現するためには、国軍が政治的な力を持たない仕組みをつくること以外にはありません。罪を問い正し、国民による政府をつくり直す必要があります。

私たちは、これまで30年以上にわたり民主主義のために声を上げてきました。しかし私たちの力だけでは現状を変えることができません。皆さんもぜひ一緒に声を上げてほしいと思います。いまこそ国際社会と日本の助けが必要です。国軍に流れるお金の流れを止めてください。武器の流れを止めてください。不処罰を放置するのではなく、責任を問う声をあげてください。

国際社会はどう動いたか?そして日本は?:藤松りんさん

緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告photo:Patrick
各国の対応を紹介します。イギリスと米国は、対象限定型の経済制裁を実施しています。これは、国軍の幹部や軍関連企業に制裁を科すものです。対象は、特に軍と関係の深い複合企業であるMECとMEHLの2社になります。ニュージーランドは、クーデターの直後から政治と軍事の接触、つまり外交を停止しています。

EU(欧州連合)は、 国軍の総司令官ら11人を対象とした制裁を定め、上記2社についても制裁を検討中です。カナダはすでに2社を経済制裁の対象としています。韓国は武器や軍事物資の輸出を中断、ODAも見直すと発表しました。オーストラリアは市民団体からのプレッシャーもあり、防衛協力を停止しています。また3月28日には、日本の自衛隊を含む12カ国の軍隊のトップが共同声明を通して暴力行為を批判する声明を出しています。

ASEAN(東南アジア諸国連合) は、ミャンマー情勢を話し合う特別首脳会議を開く準備を進めています。しかし、内政不干渉を原則としているため、国内の人権状況について触れないと考えられています。ロシアは「ミャンマーの真の友人」との立場をとり、ここ数年で関係性は強まってきました。軍事訓練のほか、武器も提供しています。

国連は、安全保障理事会で暴力を批判したり政治犯の釈放を求める声明を発表しているものの、中国やロシア、インドやベトナムといった国々の反対により、具体的な行動や制裁ができていません。特に中国は、「一方的な圧力や制裁の要求は、緊張と対立を悪化させるだけ」という姿勢をとっています。これに対して、ミャンマー最大の都市であるヤンゴンでは、中国に対する抗議の声が広まっています。 

最後に日本政府の対応です。日本はO D Aを一時停止すると報道されましたが、これを外務省は否定し、具体的な対応を取っていません。日本政府は過去の軍事政権の時代に、国際的な制裁から距離を置き、結果として軍政を支援し続けた過去があります。それによりミャンマー国軍と対話できるパイプがあるとアピールしていますが、具体的な成果は何もありません。そのような中で治安部隊による弾圧は悪化しています。

2017年以降、日本政府はミャンマーに対する国連決議をすべて棄権しています。あまりミャンマーを批判すると、中国側に行ってしまうとの懸念からだそうですが、ミャンマー市民が数百人も殺されているときに、国際関係を優先して人権問題を無視し続けていいのでしょうか?3年前のロヒンギャに対する虐殺の際も、日本政府は今回と同様に強い批判を行いませんでした。3年前と同じように、これ以上弾圧が悪化し犠牲者が増えないよう行動する必要があると思います。

ミャンマー国軍の資金源を断て:木口由香さん

緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告photo:Patrick
3月4日に、メコン・ウォッチを始め、日本のNGO32団体が共同で政府の関係機関に5項目の要請書を出しました。理由は、日本がミャンマーに多大な支援をしていたからです。

内容は、人道目的以外で公的資金による支援を新たに実施しないことや、JICAが実施中のODAによる援助(人道目的以外)の停止、国軍と関連している企業との関係を調査して明らかになった事実を公表し問題ある事業に対しては支援を取りやめる措置をとることなどを要請しています。

日本はミャンマーに対して、2018年までに有償無償合わせて総額で1兆9000億ほどの支援をしてきました。ミャンマーの経済規模は年間GDPが8兆円なので、その約4分の1という巨大な額になります。これだけのお金をつぎ込んでいる日本は、ミャンマーに大きな影響力があります。そして、一定の責任を持っていると言えるのです。

軍がこれほど暴力行為を続けられるのは、資金の裏付けがあるからです。ミャンマー国軍は、MECとMEHLという2社を所有、経営していて、この収入が軍の財源になっています。2社の子会社も合わせると、民間が所有するどの企業よりも多額の収入があります。そして、日本も含めて多くの外国企業が国軍系の企業と協力関係にあります。

また、資金の流れも不透明です。ミャンマーでは、民政化後も国軍とNLD(国民民主連盟)政権の二重の権力構造が続いていました。それを可能にしたのが民政化前に作られた憲法です。憲法には、安全保障分野の3閣僚の指名権は国軍のトップが決めるとか、軍事は国会の監視を受けないと定められていました。国防予算も会計監査の対象外です。そのため、NLD政権は国軍に対して監督どころか、どういう収入が入っているか確認することさえできない状態でした。

このような体制のもと、日本の公的資金が投入されたミャンマーの複数の事業で、国軍関係企業に流れた疑いがあります。私たちは、日本の公的資金と国軍とのつながりを調査するよう求めています。

そして国軍と関係があるならただちに断ち切ってほしいと要請しています。それに対して外務省は、情勢が流動的なので調査中としか答えていません。今後は、事業に関連する日本企業も含めてにアピールしていきます。

できることは小さいかもしれませんが、日本が関わっている金額は大きなものです。国軍に圧力をかけるには、日本で新しい法律をつくる必要はありません。いま持っているODAのカードを使えば、十分な効果を発揮できるのではないかと考えています。

皆さんも「#ミャンマー国軍の資金源を断て」のハッシュタグで情報を拡散してほしいと思います。

まとめとして

緊急イベント「ミャンマー:軍政と戦う人々~その声を聞く」報告photo:Patrick
オーンマーさんからは、日本の報道だけではなかなかわからないリアルな現場の声を聞かせていただきました。また、国際社会が国軍の残虐行為を見逃してきたことが、今回の市民への攻撃を許してしまっているのだというお話も印象的でした。

藤松さんと木口さんからは、日本がODAなどの形で、結果的に国軍を支援する形になってしまっている現状を伝えていただきました。そして、それだけに日本の私たちとしてできることがあるというお話でした。

今回の出来事は、ミャンマーで起きている大変な問題であるということと同時に、私たち自身も一定の関わりを持っていることを感じました。「#ミャンマー国軍の資金源を断て」というメッセージをぜひ広めていく必要があると思います。

ピースボートとしても、引き続きこうした動きと連帯していきたいと思います。
藤松りんさんと木口由香さんが講演の際に使った資料(PDF)を、以下からダウンロードすることができます

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