揺れ動く世界に触れて、ジブンゴトに ― 2017年夏期 地球大学報告
第95回ピースボート地球一周の船旅(2017年8月13日〜11月25日)において、地球大学プログラムを実施しました。全23寄港地を巡る104日間に及ぶ航海を通して、貧困・食糧問題、難民・テロ問題、異文化理解やメディアリテラシー、自然エネルギーと持続可能な生活など様々なテーマを取り上げました。計50回の洋上ゼミを通して、世界各地で起きている問題と自分たちとの関係性の発見を繰り返すことで、知見を広めるとともに考察を深めました。
今回は18〜33歳までの33名の若者が参加し、ピースボートと提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が7名、正規留学プログラムとして地球大学を履修しました。
今回は18〜33歳までの33名の若者が参加し、ピースボートと提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が7名、正規留学プログラムとして地球大学を履修しました。
- プロジェクト: 地球大学
- クルーズ: 第95回 地球一周の船旅
船
2018.1.30
2019.3.26
第95回ピースボート地球一周の船旅(2017年8月13日〜11月25日)において、地球大学プログラムを実施しました。全23寄港地を巡る104日間に及ぶ航海を通して、貧困・食糧問題、難民・テロ問題、異文化理解やメディアリテラシー、自然エネルギーと持続可能な生活など様々なテーマを取り上げました。計50回の洋上ゼミを通して、世界各地で起きている問題と自分たちとの関係性の発見を繰り返すことで、知見を広めるとともに考察を深めました。
今回は18〜33歳までの33名の若者が参加し、ピースボートと提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が7名、正規留学プログラムとして地球大学を履修しました。
今回は18〜33歳までの33名の若者が参加し、ピースボートと提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が7名、正規留学プログラムとして地球大学を履修しました。
学びはじめは知られざるアジアの歴史から 〜アジア区間〜
今回、受講生が地球大学への参加を決めた理由は、「世界のことをもっと知りたい」「将来に向けて自分を成長させたい・変えたい」「今まで考えてもみなかったことへ挑戦して自分の価値観を広げたい」など様々。
船が日本を出航したばかりのアジア区間は、多様なバックグラウンドを持つ参加者同士が知り合うためのチームビルディングに力を入れる一方で、アジアの歴史を知ることに重点をおきました。地球大学を長年コーディネートしてきたピースボートの川崎からは世界の見方と歴史を学ぶゼミや、人道支援、開発支援の現場で長年活躍されてきた忍足謙朗さんによる世界を学び人前で伝えるためのプレゼンワークショップなど、多くのゲストを迎え学びをスタートさせました。
また、アジア十数カ国から若者たちが参加しこの区間で実施された「地球大学特別プログラム」との合同授業では、世界と日本の貧困問題を比較し考えるディスカッションなども行い、他国の視点を学ぶことができました。
船が日本を出航したばかりのアジア区間は、多様なバックグラウンドを持つ参加者同士が知り合うためのチームビルディングに力を入れる一方で、アジアの歴史を知ることに重点をおきました。地球大学を長年コーディネートしてきたピースボートの川崎からは世界の見方と歴史を学ぶゼミや、人道支援、開発支援の現場で長年活躍されてきた忍足謙朗さんによる世界を学び人前で伝えるためのプレゼンワークショップなど、多くのゲストを迎え学びをスタートさせました。
また、アジア十数カ国から若者たちが参加しこの区間で実施された「地球大学特別プログラム」との合同授業では、世界と日本の貧困問題を比較し考えるディスカッションなども行い、他国の視点を学ぶことができました。
日本の差別・世界の問題と私たちの距離 〜インド洋区間〜
アジアを抜けヨーロッパへと向かう長い洋上区間では、知っているようで知らなかった日本での差別の問題や、紛争地や難民をめぐり起こっている国際問題と、自分たちとの関係性を学びました。
主にアフリカや中東、東ティモールなどを取材し世界中の子どもたちの写真を撮るフォトジャーナリスト・佐藤慧さんには、世界の劣悪な環境でたくましく生きる人々の現実と、世界を学ぶおもしろさを三回シリーズでお話いただきました。これまで貧困や紛争、難民などの社会問題を抱える地域を含む66の国と地域で公演を行っている在日コリアンで世界的パフォーマーのちゃんへん.さんからは、自身の在日差別体験から、日本から近いようで遠い北朝鮮問題を学びました。
また、講師陣からのアドバイスもいただきながら、この区間に地球大学としての第一回目の船内報告会を行いました。テーマにはそれまでに寄港地で訪れた「中国」「シンガポール」「ミャンマー」「スリランカ」のアジア4カ国を取り上げ、船内講座と寄港地での体験を通してそれぞれが学んだことを、各々工夫しながら船内の数百名の乗船者へ向けて発表しました。
主にアフリカや中東、東ティモールなどを取材し世界中の子どもたちの写真を撮るフォトジャーナリスト・佐藤慧さんには、世界の劣悪な環境でたくましく生きる人々の現実と、世界を学ぶおもしろさを三回シリーズでお話いただきました。これまで貧困や紛争、難民などの社会問題を抱える地域を含む66の国と地域で公演を行っている在日コリアンで世界的パフォーマーのちゃんへん.さんからは、自身の在日差別体験から、日本から近いようで遠い北朝鮮問題を学びました。
また、講師陣からのアドバイスもいただきながら、この区間に地球大学としての第一回目の船内報告会を行いました。テーマにはそれまでに寄港地で訪れた「中国」「シンガポール」「ミャンマー」「スリランカ」のアジア4カ国を取り上げ、船内講座と寄港地での体験を通してそれぞれが学んだことを、各々工夫しながら船内の数百名の乗船者へ向けて発表しました。
テロの脅威からみる欧州の民主主義〜地中海・大西洋区間〜
ヨーロッパを航海する区間では、寄港するひと月ほど前にテロがあったバルセロナやロンドンを訪れるにあたって、そもそもテロとは何なのか、昨今の欧州の民意の変化などをこの区間の軸として取り上げました。
多岐に渡る世界情勢を鋭く、かつわかりやすく解説する国際ジャーナリストのアンドレアス・ツマフさんを迎えたテロについてのゼミのほか、地中海区間ではドイツのチュービンゲン大学から平和研究と国際政治を学ぶ学生13名が乗船し、戦後補償や現在右傾化していく国際社会の問題に焦点を当てたプレゼンやディスカッションなどを企画。多くの地球大学生も通訳を介しつつ積極的に意見交換をしていました。
他にも、旧ユーゴ内戦の歴史をビデオジャーナリストでノンフィクションライターでもある木村元彦さんから現地の映像を交えて学んだり、脱原発弁護団全国連絡会の共同代表もつとめる弁護士・河合弘之さんからは、戦後日本史からアイスランドの自然エネルギーまで紹介していただきました。さらに、ニュージーランドで半自給自足しながらプロデューサー、執筆家など幅広いジャンルで活躍される四角大輔さんからは、自分たちから始める持続可能な環境への取り組みを学ぶなど、多方面から国際問題を知るきっかけが多かった区間でした。
その後ヨーロッパを抜け、国連本部のあるニューヨークへと向かう大西洋上では、国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」について、持続可能な発展の教育者として多方面で活躍している若手活動家のハナ・スタントンさんによるワークショップも行われました。
またこの区間では二回目の報告会を実施し、単なる「報告」ではなく、それまでゼミで学んできた「難民」「紛争」「自然エネルギー」「若者の無関心」の4つのテーマについて、来場者とのディスカッションの時間も設けました。国籍や年齢問わず、話ができるよう様々な工夫をこらし、関心がある分野で議論していく中で、活発な意見交換がなされ、企画側・参加側ともに、得られる発見も多かったようです。
多岐に渡る世界情勢を鋭く、かつわかりやすく解説する国際ジャーナリストのアンドレアス・ツマフさんを迎えたテロについてのゼミのほか、地中海区間ではドイツのチュービンゲン大学から平和研究と国際政治を学ぶ学生13名が乗船し、戦後補償や現在右傾化していく国際社会の問題に焦点を当てたプレゼンやディスカッションなどを企画。多くの地球大学生も通訳を介しつつ積極的に意見交換をしていました。
他にも、旧ユーゴ内戦の歴史をビデオジャーナリストでノンフィクションライターでもある木村元彦さんから現地の映像を交えて学んだり、脱原発弁護団全国連絡会の共同代表もつとめる弁護士・河合弘之さんからは、戦後日本史からアイスランドの自然エネルギーまで紹介していただきました。さらに、ニュージーランドで半自給自足しながらプロデューサー、執筆家など幅広いジャンルで活躍される四角大輔さんからは、自分たちから始める持続可能な環境への取り組みを学ぶなど、多方面から国際問題を知るきっかけが多かった区間でした。
その後ヨーロッパを抜け、国連本部のあるニューヨークへと向かう大西洋上では、国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」について、持続可能な発展の教育者として多方面で活躍している若手活動家のハナ・スタントンさんによるワークショップも行われました。
またこの区間では二回目の報告会を実施し、単なる「報告」ではなく、それまでゼミで学んできた「難民」「紛争」「自然エネルギー」「若者の無関心」の4つのテーマについて、来場者とのディスカッションの時間も設けました。国籍や年齢問わず、話ができるよう様々な工夫をこらし、関心がある分野で議論していく中で、活発な意見交換がなされ、企画側・参加側ともに、得られる発見も多かったようです。
変わりゆくアメリカと革命を成し遂げた国々 〜北中米区間〜
世界は、知れば知るほど複雑なもの。地球大学生たちもそれぞれの興味や悩みのポイントが違う中、受講生同士で授業の提案をし合うようになりました。
そんなタイミングでニューヨークからご乗船された国際ジャーナリストの伊藤千尋さんからは、変わりゆく米国のトランプ政権、激動の中南米史をはじめ、80カ国におよび取材されている数々の国際問題や人々の選んできた歴史を3回のシリーズゼミを伝えていただきました。地球大学生も積極的に質問を行い、それぞれのもやもやを解消していく区間になりました。
他にも「いのちの日」と題した一日がかりのイベントも、多くの受講生が他の乗船者とともに企画実施。胎内記憶、エシカルファッション、性教育、経皮毒、動物実験、自殺問題、大量生産される命など、様々な観点から「生命」を考えるきっかけとなりました。
また、2017年10月に行われた衆議院議員総選挙の際、船上でも何かしたいという声から連動して行った「選挙企画」では、船内の模擬選挙を行うため、受講生たちが中心となって各党のマニフェストを表にまとめるとともに模擬選挙を呼びかけました。投票することの意義と結果をそれぞれ試行錯誤して企画した結果、選挙に行ったことがない人にも興味を持ってもらうことが出来ました。
そんなタイミングでニューヨークからご乗船された国際ジャーナリストの伊藤千尋さんからは、変わりゆく米国のトランプ政権、激動の中南米史をはじめ、80カ国におよび取材されている数々の国際問題や人々の選んできた歴史を3回のシリーズゼミを伝えていただきました。地球大学生も積極的に質問を行い、それぞれのもやもやを解消していく区間になりました。
他にも「いのちの日」と題した一日がかりのイベントも、多くの受講生が他の乗船者とともに企画実施。胎内記憶、エシカルファッション、性教育、経皮毒、動物実験、自殺問題、大量生産される命など、様々な観点から「生命」を考えるきっかけとなりました。
また、2017年10月に行われた衆議院議員総選挙の際、船上でも何かしたいという声から連動して行った「選挙企画」では、船内の模擬選挙を行うため、受講生たちが中心となって各党のマニフェストを表にまとめるとともに模擬選挙を呼びかけました。投票することの意義と結果をそれぞれ試行錯誤して企画した結果、選挙に行ったことがない人にも興味を持ってもらうことが出来ました。
最後のアウトプットに向けてのインプット 〜太平洋区間〜
日本へ向かう太平洋上でおこなった地球大学として最後の報告会では、受講生たちだけで何度も打ち合わせを重ねて作り上げました。途中しゃべり場やディベートも挟みながら、試行錯誤してインプットしたことをアウトプットするために企画を作っていくのは、地球大学ならではの体験です。
船内の人々に伝えたい思いをデモに仕立てた宣伝や替え歌、各々がプログラムを通じて感じた変化をスピーチしたり、メディアリテラシーを問題提起するドキュメンタリーの作成・上映など、多くのアイデアが詰め込まれた報告会になりました。
最初は「クラスメイト」と仲良くなることさえ勇気が要る中で、知識と意識の差をものともせず、次第に行動した分だけ何かを得ていく、周りに触発されながら育ち合う「共育」。
今回タイムリーに世界で起きた、初寄港であるミャンマーでのロヒンギャ難民問題、欧州各地でのテロ問題、トランプ政権下での変化が注目を集めたニューヨーク・キューバ問題。更に寄港数週間前に災害が起こったキューバ・メキシコへの災害支援募金など、まさに私たちの進む中で動いていく世界を感じる航海となりました。
最後に、参加者の感想をいくつか掲載します。
▼地球大学生は人一倍世界に関心を持つ個性的な乗船者が多く、彼らとの関わりの中で新しい価値観や視野を得ることが多かった。世界は思っている以上に理不尽で不平等で偏在的である。地球大学生として地球一周したことによって、世界の広さも深さも、同時に日本に対して無知であることもより一層感じられた。この目で見た世界と地球大学での活動を通して、これからの生き方を見つめ直し、自分をもう1段階ステップアップさせる良い機会になった。(神奈川県から参加 26歳)
▼地球大学では、全3回の報告会を行いました。私は1回目の報告会で、戦時中に日本がシンガポールに対して行った加害の歴史について触れました。世代も、国籍も異なる人たちと戦争の話を共有するという行為は、想像以上に覚悟が必要で、歴史を語ることの難しさを痛感しました。自分なりに言葉を選んで表現しても、誰の反感も買わない言葉を見つけることは出来ません。しかし私は、自分が「正しい」と思う言葉を選ぶように努力をすることで、言葉の尊さを再確認することが出来ました。(愛知県から参加 18歳)
▼今まであまり日本や世界の政治や情勢について学ぶことに積極的になれなかったけど、地球大学に入って水先案内人の方の講義やワークショップを受けたり、地球大学の中で話すことによって自分ごとに考えるきっかけになり、もっと知りたいと思えるようになりました。
またこれから人や地球に優しい生き方についてどう行動していけばいいのか船降りても考え行動して行きたいです。(福岡県から参加 27歳)
▼私は地球大学というカリキュラムに惹かれてピースボートに乗りました。(中略)私が体験した95回クルーズでは同じ地球大学生であっても、それぞれのモチベーションや地球大学をとった理由に差があり、話合いをしてもなかなかまとまらず、いつも試行錯誤していました。しかし、最後の報告会では「終わりは始まりでもある」というテーマに沿って自分たちが見てきた世界を少しずつ明らかにしていくことができました。私たちの船旅は終わってしまいましたが、95回地球大学生の活動はこれから始まっていきます。今回出会った地球大学生とは、これからたくさん情報共有をして、お互いを刺激し合える存在でいたいと思います。(大阪府から参加 25歳)
船内の人々に伝えたい思いをデモに仕立てた宣伝や替え歌、各々がプログラムを通じて感じた変化をスピーチしたり、メディアリテラシーを問題提起するドキュメンタリーの作成・上映など、多くのアイデアが詰め込まれた報告会になりました。
最初は「クラスメイト」と仲良くなることさえ勇気が要る中で、知識と意識の差をものともせず、次第に行動した分だけ何かを得ていく、周りに触発されながら育ち合う「共育」。
今回タイムリーに世界で起きた、初寄港であるミャンマーでのロヒンギャ難民問題、欧州各地でのテロ問題、トランプ政権下での変化が注目を集めたニューヨーク・キューバ問題。更に寄港数週間前に災害が起こったキューバ・メキシコへの災害支援募金など、まさに私たちの進む中で動いていく世界を感じる航海となりました。
最後に、参加者の感想をいくつか掲載します。
▼地球大学生は人一倍世界に関心を持つ個性的な乗船者が多く、彼らとの関わりの中で新しい価値観や視野を得ることが多かった。世界は思っている以上に理不尽で不平等で偏在的である。地球大学生として地球一周したことによって、世界の広さも深さも、同時に日本に対して無知であることもより一層感じられた。この目で見た世界と地球大学での活動を通して、これからの生き方を見つめ直し、自分をもう1段階ステップアップさせる良い機会になった。(神奈川県から参加 26歳)
▼地球大学では、全3回の報告会を行いました。私は1回目の報告会で、戦時中に日本がシンガポールに対して行った加害の歴史について触れました。世代も、国籍も異なる人たちと戦争の話を共有するという行為は、想像以上に覚悟が必要で、歴史を語ることの難しさを痛感しました。自分なりに言葉を選んで表現しても、誰の反感も買わない言葉を見つけることは出来ません。しかし私は、自分が「正しい」と思う言葉を選ぶように努力をすることで、言葉の尊さを再確認することが出来ました。(愛知県から参加 18歳)
▼今まであまり日本や世界の政治や情勢について学ぶことに積極的になれなかったけど、地球大学に入って水先案内人の方の講義やワークショップを受けたり、地球大学の中で話すことによって自分ごとに考えるきっかけになり、もっと知りたいと思えるようになりました。
またこれから人や地球に優しい生き方についてどう行動していけばいいのか船降りても考え行動して行きたいです。(福岡県から参加 27歳)
▼私は地球大学というカリキュラムに惹かれてピースボートに乗りました。(中略)私が体験した95回クルーズでは同じ地球大学生であっても、それぞれのモチベーションや地球大学をとった理由に差があり、話合いをしてもなかなかまとまらず、いつも試行錯誤していました。しかし、最後の報告会では「終わりは始まりでもある」というテーマに沿って自分たちが見てきた世界を少しずつ明らかにしていくことができました。私たちの船旅は終わってしまいましたが、95回地球大学生の活動はこれから始まっていきます。今回出会った地球大学生とは、これからたくさん情報共有をして、お互いを刺激し合える存在でいたいと思います。(大阪府から参加 25歳)