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「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告

「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告
2016年8月18日〜11月30日、第92回ピースボートで地球大学プログラムを実施しました。106日間に及ぶ航海を通して、異文化理解と多文化共生、難民問題、国連の開発目標、米国と中南米の関係やグローバリゼーションなど様々なテーマを取り上げ、「世界の今」を現場から学び、計45回のゼミを通して考えを深めました。

18〜28才の14名の若者が参加し、地球大学と提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が3名、正規留学プログラムとしてピースボート地球大学を履修しました。プログラムを通して、どこか遠く感じられた世界の諸問題がたしかな「自分ごと」になったとの手応えを多くの参加者が感じました。
2016年8月18日〜11月30日、第92回ピースボートで地球大学プログラムを実施しました。106日間に及ぶ航海を通して、異文化理解と多文化共生、難民問題、国連の開発目標、米国と中南米の関係やグローバリゼーションなど様々なテーマを取り上げ、「世界の今」を現場から学び、計45回のゼミを通して考えを深めました。

18〜28才の14名の若者が参加し、地球大学と提携を結ぶ神戸山手大学からは、観光文化学科の学生が3名、正規留学プログラムとしてピースボート地球大学を履修しました。プログラムを通して、どこか遠く感じられた世界の諸問題がたしかな「自分ごと」になったとの手応えを多くの参加者が感じました。

多様な船内で異文化理解を深める 〜アジア区間〜

「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告
「今各国で起きている問題を学び、自分にできることを考えるきっかけになると感じた」
「自分の意見を人に伝える力を身に付けたい」
「現地に行かないとわからない。世界の現状を少しでも肌で感じ自分自身の成長につなげたい」
「国際社会のことをもっと知りたい」―地球大学へ参加を決めた理由は様々。

年齢・出身・学歴や職歴が異なる多様な参加者が集まる地球大学では、ディスカッションやワークショップを通してお互いから学ぶことを大切にしていきます。船が日本を出発したばかりのアジア区間は、チームビルディングやコミュニケーショントレーニングに力を入れ、アジアを始めとした世界各国から集まった参加者との交流もおこないました。

多文化共生や平和学を専門とする早稲田大学教授の金敬黙さんや、開発教育を専門とする近藤牧子さんなどをゲストに迎え、文化グループの形成と排除を体感する異文化理解のためのワークショップや、日本国内と船内に存在する多様性などについてのディスカッションをおこないました。

難民問題を自分ごとへ 〜インド洋区間〜

「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告
地球大学生が企画したワークショップのようす。難民受け入れに対する異なる立場を設定し、ロールプレイの形で受け入れの是非を議論しました。
「私たちが航海をしている今この瞬間も、命をかけて同じ海を渡っている人たちがいる」。インドを出発しヨーロッパへと向かう洋上では、シリア難民の問題をテーマに取り上げました。

混乱を極めるシリア内戦の状況、その歴史的背景や政治情勢を、国際政治学者の高橋和夫さんがわかりやすく解説してくださいました。また、ギリシャのNGOで最前線で難民支援に取り組む医師のアントニオス・ロンポスさんから難民受け入れの現場の状況を伺い、中東・ヨーロッパ・日本の視点から難民問題を紐解いていきました。

中でも印象深かったのは、「自分の家の隣に難民キャンプができたら」と想定し、難民受け入れの是非を話し合ったゼミです。当然受け入れるべきという人道的な理想に対して、自分自身の持つ難民に対するネガティブなイメージや、周りの反発とそれに対してどう説得するか、言語や文化の違いをどう乗り越え共生できるかといった、様々な意見が飛び交いました。問題の背景を理解し、当事者のおかれた立場を想像することの大切さを感じました。

この区間の最後には、地球大学生が主体となって、船旅の参加者とともに難民問題について考えるワークショップを行いました。また、ロンポスさんの所属する世界の医療団ギリシャ支部への募金活動も行いました。

17の目標のためにボクたちにできること 〜大西洋区間〜

「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告
ヨーロッパを抜け、国連本部のあるニューヨークへと向かう大西洋の洋上では、国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」について学びました。

SDGsとは2015年9月に国連で採択された世界共通の目標で、2030年までに持続可能な社会の実現を目指すものです。貧困や飢餓の撲滅、気候変動への具体的な対策、平和な社会の実現など17の目標と169の指標から構成され、すべての国々がSDGsの達成に取り組むことが求められています。

船旅の折り返し地点となるこの区間では、前半で学んだことを、SDGsの17のゴールと関連づけて振り返ると同時に、それぞれの課題のつながりと解決策について話し合いました。また、船内でのSDGsの認知を高めるべく、地球大学生が中心となってフォトアクションや展示を行い、「17の目標のためにボクたちにできること」と題してワークショップもおこないました。

このワークショップではまず、地球大学生がSDGsの概要を紹介し、4つの目標をピックアップして船旅での学びを共有しました。具体的には、カンボジアで考えた教育機会の不平等と豊かさについて(ゴール4:質の高い教育をみんなに)、気候変動という地球規模の課題に市として取り組むベルギーのゲント市での発見について(ゴール13:気候変動に具体的な対策を)、交流ツアーで感じた、国家間の外交ではなく人と人の出会いとつながりを作る大切さについて(ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう)などです。

ワークショップ後半では、参加者と一緒に、SDGs達成のために、船内でもできることを考えました。船内の限られた資源を無駄にせず有効に使うということや、講座や交流の場に積極的に参加し、世界の問題について知ることのできる環境を大切にしようといった考えを共有しました。

グローバリゼーションの光と影 〜中米区間〜

「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告
水先案内人のパブロ・ロモさんと共に、グローバリゼーションのもたらす影響について話し合いました。
ニューヨークを出航後、船は南へと針路をとり、アメリカ合衆国と近年国交正常化を果たしたばかりのキューバを含め、中米の国々を訪れました。

この区間、地球大学の講師を務めてくださったのは、メキシコ在住の人権活動家・メキシコ自治大学講師のパブロ・ロモさん。植民地化を含む現代までの歴史や、特にメキシコにおけるグローバリゼーションの実態について学び、そこから日本での自分たちの生活とグローバリゼーションのつながりについて考えていきました。

具体的には、アメリカ合衆国との貿易協定などによる貿易の自由化や様々な規制緩和がもたらしたメキシコ国内の経済や社会に対する影響などを話していただきました。政治的・軍事的な植民支配は終わっても、経済的・文化的支配は終わっていないのでは、という問題提起をしていただきました。

モノ、人、お金の移動が自由になることで、日本での私たちの生活は豊かになり、選択肢が増えたように感じられる一方、その恩恵を本当に受けているのは誰なのか、外国のモノや習慣がより多く入ってくることは何を意味するのかーー。パブロさんの問いかけや、「目を開いて、批判的な目で物事をよく見てほしい」という言葉が多くの受講生の心に残りました。

学んだことの発信、そして次のステップへ 〜太平洋区間〜

「セカイの問題」が「ジブンの問題」になった! ― 2016年夏期 地球大学報告
最終報告会の様子。地球一周でとりあげたテーマについて振り返りました。
太平洋を横断し日本へと向かう船旅最後の区間では、受講生がそれぞれ関心のある問題について積極的に発信し、企画へ携わる姿が見られました。

例えば、豊かさ・幸せの価値観を見つめ直す目的の「Ohハッピーデー」というイベントでは、地球大学生の一人がディレクターとなって、環境やお金、地域、農業など、多岐にわたるテーマの企画を他の参加者と共に一から考えました。ドキュメンタリー上映やワークショップ、フェアトレードカフェなど一日を通して様々な企画を行いました。

また、平和について考える目的で開催した「ピースデー」では、船旅の参加者の方から聞き取った戦時体験談を中心とした展示や、乗船されていた被爆者の方々との交流を通じて原爆について学んだことの報告をおこないました。

一方で、ゼミの中では、鹿児島で電気・水道・ガス契約なしの持続可能な生活を営み、メディアからも注目を集める水先案内人のテンダーさんを招き、非暴力コミュニケーションやシステム思考、プレゼンテーションの手法など、実践的なスキルを学びました。最後に、全員で地球大学の報告会を行い、参加者と共に地球一周の学びを振り返る機会を設けました。受講生の一人は、難民問題に心を打たれ、下船後は難民支援に携わっていきたいと力強く宣言しました。

帰国後も、母校の高校で船旅の経験を講演したり、在籍中の大学のゼミで学んだことを報告するなど、積極的に活動しています。

以下に、参加者の感想をいくつか掲載します。

「地球大学は学びたい自分を大事にできる場所。”学ぶことの大切さ”を学び、地球で起こる様々な社会問題や環境問題への焦りを感じるようになり、今まで生活していた環境へのありがたさに改めて気づいた。パブロの”批判的な目で物事をみてほしい”という言葉が印象に残っているので、今後も現状の裏側を見つめるような生き方をしていきたいと思います。」(福岡県から参加、21歳)

「地球大学は、ただ楽しむだけではなく、学ぶために海外に出ているということを常に思い出させてくれた。今後も学び続けたい課題は、中東問題。シリアやイラクでの紛争をなくすためにはどうすればいいか。船を降りてからももっといろいろなことを学びたいと思い、今現在も学校に通っている。世界情勢に興味がある人々に対して今世界で何が起こっているかを、今後自分でもっと研究した上で伝えていけるような仕事に就きたい。」(岐阜県から参加、25歳)

「テレビでは素通りだった難民問題などに関心が持てるようになった。また、発表の仕方にも色々あるし、司会進行などをする機会がなかったので、まさかここですると思わなかった。(他の地球大学生が)上手に堂々と進行するのを見てすごいと思う反面、私も負けてられないな…。改善しないとと前向きに考えられ、励まされた。」(鹿児島県から参加、27歳)

「地球大学のゼミがあることで、あまり若者の参加率が高くなかった国際問題に関する講座等にも、船旅の最初から最後まで意欲的に足を運ぶことができたと思う。講座を聞いた後に、それについて話し合う場があることが良かった。地球大学のゼミがあることで水先案内人の方との距離が近く、その分野の第一線で活躍している人を間近で見ることができた。そのことは、その分野に将来自分が関わらないとしても、貴重な体験ができたと思う。」(愛知県から参加、28歳)

ゼミにご協力いただいた水先案内人の皆様(順不同)

・高橋和夫さん(放送大学教授)
・金敬黙さん(早稲田大学教授)
・近藤牧子さん(開発教育協会[DEAR]評議員)
・忍足謙朗さん(国連世界食糧計画[World Food Programme/WFP]元アジア地域局長)
・アチン・ヴァナイクさん(元デリー大学教授)
・アントニオス・ロンポスさん(世界の医療団ギリシャ支部)
・リヒテルズ直子さん(オランダ教育研究者・日本イエナプラン教育協会特別顧問)
・四角大輔さん(執筆家・アーティストインキュベーター)
・羽後静子さん(中部大学教授)
・蝦名大助さん(神戸山手大学准教授)
・パブロ・ロモさん(人権活動家・メキシコ自治大学講師)
・マルタ・エレナさん(ダンサー)
・テンダーさん(ヨホホ研究所主宰)

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