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マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~

マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~
色鮮やかなマヤ族の衣装を身にまとうロサリナさん。オーシャン・ドリーム号のオープンデッキにて。
ここでは、第87回ピースボートに乗船された水先案内人、グアテマラのマヤ先住民族人権活動家であるロサリナ・トゥユックさんについて紹介します。トゥユックさんは、パナマのクリストバルからグアテマラのプエルトケツァルまでの区間に乗船され、船内で講座などを行いました。
色鮮やかなマヤ族の衣装を身にまとうロサリナさん。オーシャン・ドリーム号のオープンデッキにて。
ここでは、第87回ピースボートに乗船された水先案内人、グアテマラのマヤ先住民族人権活動家であるロサリナ・トゥユックさんについて紹介します。トゥユックさんは、パナマのクリストバルからグアテマラのプエルトケツァルまでの区間に乗船され、船内で講座などを行いました。
マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~
参加者と近い距離で話し合うロサリナさん
ロサリナ・トゥユックさんのピースボート乗船は、参加者にとって特別なものとなりました。彼女はこれまでの人生で大変辛い経験をしてきましたが、それを言葉や表現を通して訴え、平和の担い手になろうとしています。

彼女はおっとりとした人柄で、自然と会話し、感謝することを忘れません。ピースボートの船内では、グアテマラで起こった内戦当時の経験や、先住民コミュニティの代表としての活動について話しました。また、参加者をマヤ文化の世界へといざないました。

多くの困難な問題に直面している現在の世界にとって、先住民の知恵や知識、伝統は、自然と共生する方法を学び、現在の経済発展モデルから脱却するためには欠かせないものです。グアテマラ寄港前のトゥユックさんのお話を聞くことで、グアテマラ訪問がより充実したものになりました。

軍による自国民の虐殺

マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~
トゥユックさんは、キリスト教の活動や手工芸女性協同組合などを通して社会活動を始めるようになりました。当時は教義指導者や看護師補助として働いていました。彼女は言います。「80年代は恐怖に包まれた最も苦しい時期でした。家族がバラバラになり、命が危険にさらされ、楽しみも、家族のしきたりも奪われたのです。未亡人女性たちは子どもたちと共に取り残されてしまいました。その多くがまだとても幼い子どもを連れていたのです」。

1980年代、トゥユックさんの身にも、悲劇が襲いかかりました。父親のフランシスコ・ハビエル・トゥユックさんと、夫のロランド・ゴメスさんの2人が、軍によって誘拐され殺害されてしまったのです。

2人を亡くした後トゥユックさんは、同じ境遇にあった女性たちの信念と期待に応えるため、大衆運動に関わるようになりました。トゥユックさんはCONAVIGUA(グアテマラ未亡人協会)の創設者のひとりです。

この団体は当初、名もない女性団体として活動を始め、教会や地方自治体、または国際的な団体などに協力を求めました。グアテマラでは1960年から1996年までの間に約25万人の国民が自国の軍隊の手によって虐殺の被害者となったのです。

声を上げた女性たち

マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~
講座の後、通訳ボランティアを介して参加者の女性がロサリナさんに感想と質問を投げかけている様子
トゥユックさんの船内最初の講座では、グアテマラの内戦と自身のマヤ民族活動家としての役割についてお話しされました。
「女性たちは平和のために貢献し、命を守るために闘おうと一致団結しました。みんなの力を集結させれば前に進むことができる。誘拐で苦しんできた、これまでの犠牲を無駄にはしませんでした。女性たちは、声をあげることと死に対する恐怖心を拭い去ることができたのです。爆弾や覆面をつけた男たち、武装した兵士たち、誰も私たちの活動は止めることはできませんでした」。

内戦中、多くの女性たちは兵士による性的暴行に苦しみました。兵士たちは「夫を解放してやる」という嘘を言って、女性に金銭や食事を強要したり、洗濯をさせたりしました。夫を失った女性たちは、失望し恐怖におびえ、涙を流し空腹に苦しむしかない、非常に困難な状態にありました。

彼女たちはどうすれば夫や家族を見つけることができるのかわかりませんでした。このような状況の中からCONAVIGUAが誕生したのです。まずは遺体を見つけるための活動から始めました。

団体は、これらの訴えを国際舞台に持ち込み、女性たちの活動を支えました。アムネスティ・インターナショナルや先住民活動団体、国連人権委員会の前で訴えを起こしたのです。ただ単に訴えるのではなく、世界中の人々に何が起こっているのかを知ってもらうためでした。

トゥユックさんたちは長年にわたって、秘密墓地の存在を明らかにすることや、兵士たちが女性たちに執拗につきまとい、金銭や労働を強要することをやめるよう求めました。

「私たちが貧しい先住民の女性であるということで、当初は誰にも信じてもらえませんでした。軍は事実を隠ぺいしようとしました。正義のため、マヤ先住民に起こった大量虐殺のために戦うことはとても重要です。先住民族の命を奪ったホロコースト、森林破壊、環境破壊、文化的アイデンティティの破壊などのため、多くのマヤ民族の家族は土地を追われました。マヤ民族のアイデンティティ、言葉、文化を発展することは不可能となりました。長年の間、マヤの世界観を発展させることは許されなかったのです」。

内戦が終わった今も、グアテマラではマヤの人々が自然や大地を守るための行動を起こし、弾圧されています。中米諸国は自然資源が豊富なため、グローバル企業が鉱山開発を行い、景観を破壊し、周囲を汚染しています。トゥユックさんの2人の兄弟は2013年と14年に土地を守る活動をしていたことが原因で、殺害されました。この地域では不正と苦痛が今も続いているのです。

マヤ民族の世界観

マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~
マヤ族の世界観に関する講座の様子
トゥユックさんの2回目の講座は、マヤの世界観についてのものでした。マヤ民族の世界観とは、世界や生命、物事、時間との関わりや価値観を表すものです。

マヤ民族にって、自然界に存在する要素すべて、宇宙にあるものすべてが、魂や命を持っているのです。そしてお互いがお互いを補完しあっています。トゥユックさんは参加者にこの世界観について説明し、体の中にある様々なエネルギーについても話しました。

講座の中では、海に感謝の意を捧げる小さな儀式を行いました。そして甲板に出て、私たちをとりまくものすべての恵みを享受し、感謝するよう促しました。

トゥユックさんとの船内企画を担当したスタッフは、このように感じました。「彼女の自然に対する愛情、尊敬の念を表す姿に魅了されました。そして困難に負けず、前に進み、正義のために闘いつづける決意も感じることができました」。

同じ過ちを繰り返さないために

マヤ民族の目を通して見る世界~ロサリナ・トゥユックさん~
ロサリナさん、ジョン・パーキンスさんと通訳ボランティアの3名
トゥユックさんの乗船期間には、『エコノミック・ヒットマン』の著者である作家、活動家であるジョン・パーキンスさん(米国)も乗船していました。パーキンスさんは先住民文化についても詳しく、スペイン語を流暢に話します。トゥユックさんとパーキンスさんは、船内では絆を深めてそれぞれの経験を共有しあいました。

パーキンスさんはトゥユックさんのことをこにように語ります。「彼女はとても勇敢で、頭の良い人です。力強いマヤ民族のリーダーであり、世界中の女性の権利を守る人物です。彼女の友人になることができてとてもうれしいです。彼女はマヤの覚悟をはっきりと言葉にし、正しいことを正しいと言い、脅しや困難にも立ち向かいます。彼女の知恵や廉潔さ、そして素晴らしいユーモアセンスを尊敬します」。

内戦は過去のものとなりましたが、トゥユックさんの戦いは今も続いています。「グアテマラではまだまだやるべきことがあります。マヤ民族に対する過去の大量虐殺の罪を認めさせ、責任者たちが罰を受けさせなければいけません。前例を作らなければならないのです。すべての罪が認められなくとも、大量虐殺については責任者は罪を償うべきです。また同じ過ちがマヤ民族に対して、またその他の人々に対しても繰り返されることがないように。すべての人々に生きる権利があるのですから」。

トゥユックさんの強さを支えているのは、不正と闘うという確固たる決意です。

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