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エルサルバドルで持続可能な生き方を学ぶ

エルサルバドルで持続可能な生き方を学ぶ
エコセンター・ラスアニマスで薬用植物や希少種について学ぶ若者
ここでは、第84回ピースボートで訪れたエルサルバドルの交流コースの様子をお伝えします。
エコセンター・ラスアニマスで薬用植物や希少種について学ぶ若者
ここでは、第84回ピースボートで訪れたエルサルバドルの交流コースの様子をお伝えします。
エルサルバドルで持続可能な生き方を学ぶ
サン・マルコスのセスタ本部で「自転車なくして地球なし」プロジェクトを見学する参加者
中米の小さな国、エルサルバドル。ピースボートは、同国で最も大きいNGOである環境NGOセスタを訪問し、そのプロジェクトを体験しました。

セスタはエルサルバドルで最も歴史のあるNGOであり、ピースボートが地球一周クルーズを始めた当初から受け入れ団体をしてくれているところです。

セスタは人々の生活や自然環境の持続可能性を求めてさまざまな活動をしています。例えば、絶滅の危機にあるウミガメの保護、農薬使用の危険性に対する啓蒙活動、そして政府への要請など活動は多岐にわたっています。

ピースボートの参加者は、首都サンサルバドルの東に位置する農村地帯ラスアニマスにある、「エコセンター」に一泊しました。この施設はセスタが運営する教育施設で、通常とは異なる生活が体験できる場所です。
エルサルバドルで持続可能な生き方を学ぶ
リカルド・ナバロ氏。ピースボート84回クルーズ水先案内人・セスタ創設者
施設では、マンゴーの木を植えたり、生活用水のための浄水フィルター作ります。またセンター内で育てた有機栽培作物で作った食事を楽しむことができます。それにより参加者は、持続可能な生活とはどういうものかという一端を垣間見ることができます。

「皆さんの家では、長い間暖かいシャワーを楽しむことができるでしょう。何の努力も要らないし、何かをしているのだという気すらしないと思います。しかし、ここでは自分ですべて行うことにより、エネルギー消費が少なくなるだけでなく、楽しみも感じることができるのです。これが、ラスアニマスから皆さんの生活の場に持ち帰ってもらいたいと思っている知識なのです」。そう説明してくれたのは、セスタの創始者である代表のリカルド・ナバロさんです。

ナバロさんは、ゴールドマン環境賞や国連グローバル500賞などを受賞している世界的に有名な環境活動家で、エルサルバドル政府にも常に提言を行ってきました。また、ピースボートにも何度も乗船しています。

翌日、サン・マルコスもありセスタのオフィスを訪れた参加者たちは、「自転車なくして地球なし」というプロジェクトを見学しました。

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ラスアニマスでマンゴーを植える参加者
ここでめざしているのは、実用的な技術研修をしながら、自転車利用者を増やそうということです。修理対象となる自転車は毎年数千台が米国とカナダから寄付されています。自転車の利用者が増えれば増えるほど、自動車優先の社会を変える力になるというのが彼らの考えでした。

現在は自転車の道路の整備もされていないため、国内でより安全に自転車を使える環境を整えたいという願いがあります。セスタでは年に数回、無料の自転車修理研修コースを実施しており、現在までに受講者は250人以上に上っています。

参加者の一人は興奮して次のように語りました。「こんな大規模に研修が行われているとは思っていませんでした。仕事への復帰方法として本当に効果的だと思います。おまけに、持続可能性の問題への気づきもうながすことができます」

ナバロさんは、自転車を現存の機械の中で最も重要なものの一つと位置づけています。

「国連は、全世界の人に一台ずつ自転車を与えることを目標にすべきです。ミレニアム開発目標の一つであるべきだったと思います。自転車中心の都市を創る事は私たちの生活スタイルを本当に変化させるでしょう。そうすれば、郊外のショッピングモールで買い物をしたり、仕事場から1時間のドライブを楽しんだりする代りに、もっと自分の地域内で用を足すようになるだろうし、それが持続可能性に繋がるからです」
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ラスアニマスで自家栽培の食材と伝統的オーブンでの ケーキの作り
エルサルバドルでは、1992年まで12年間に渡る激しい内戦が行われました。さらに、洪水や干ばつ、ハリケーン、土砂崩れといった災害が相次ぎ、人々の生活を圧迫しています。こうした大自然の猛威は、気候変動によって年々規模が大 きくなり、予測がしにくくなってきています。

セスタは、目標の一つに森林破壊の阻止をあげています。国内の森林破壊が進んでいて、それが洪水被害などをさらに深刻なものにしているからです。ナバロさんは、最近70ヘクタールの森林がゴルフ場建設のために破壊された件についてこう語りました。

「観光大臣はこれについて『国家の利益のための戦略的プログラム』だと説明し ています。というのは、日本やヨーロッパからの観光客誘致にゴルフが一役買うと考えているからです。実際はどうでしょう。この地域の洪水は森林が破壊され る前から既に深刻だったのです。森林が無くなればさらにひどくなるでしょう。つまりより多くの人が殺されるということなのです」

エコセンター・ラスアニマスはこのような問題の討論の場としての役割も果たしています。ナバロさんは言います。「私たちは教育にとても力を入れています。その理由は、気候変動やその他の環境問題というのは、人の考えや価値観から始まるからです。外側から起こるわけではありません」
「例えば金の採掘について考えてみてください。誰が金が重要だと言ったのでしょうか。金そのものは他の金属と変わりがありません。しかし人類はそれに価値を与え、金で作った装飾品を欲しがる事に決めました。だから金を掘るので す。誰が小さい車より大きな車を持つ方が良いことだ言ったのでしょうか。誰が新しい携帯電話が発売されたらすぐに古いものを捨てるべきだと言ったのでしょ うか。これらの意味づけは、私たちの心の中だけにあるものです。そのため、自分自身の価値観を再考するように働きかける事がとても重要なのです。私たちがラスアニマスでやっている事は、この消費社会を変えなければ、いずれ自分たちの破壊に繋がるのだという気づきを人々の中で高めることなのです」

セスタが強調するのは、環境問題の根本には社会的な問題や政治的な問題があるということです。そこに責任があるのは大企業や政治家ばかりではなく、一人一人の無駄な消費行動が、環境破壊につながっていっているのです。

特に日本人のように豊かな世界から来た人には、より大きな責任があるとナバロさんは語りかけます。
「豊かな人は消費行動で環境破壊に影響を与えます。ところが、その影響を受けるのは、圧倒的に貧しい人たちの方なのです。ここに気候変動問題の不正義があります。今の病を抱えた世界の状態は、医師が患者を救うために手を切断しなければならないような状態と同じです。そのまま放置すれば悪化して、腕全体を失うことになるでしょう。死んでしまうかもしれません。こういう事を言うと、急進的すぎると言って責められるのですが、本当の問題は急進的か急進的でないかではなく、私たちが生き残れるかどうかなのです」

ナバロ氏は、エルサルバドルから水先案内人として船に乗船し、持続可能な生活や気候変動に対してどのように考えるべきかといったテーマでレクチャーを行いました。

※当記事は、英語のリポートに基づいて編集されたものです。