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ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス

ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス
ギリシアの団体とともに難民支援を訴える(第88回ピースボート)
ここでは、第88回ピースボートで訪れたギリシャ(ピレウス)の難民支援をめぐる様子と、船内での取り組みについてお伝えします。
ギリシアの団体とともに難民支援を訴える(第88回ピースボート)
ここでは、第88回ピースボートで訪れたギリシャ(ピレウス)の難民支援をめぐる様子と、船内での取り組みについてお伝えします。

海を渡る難民

ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス
ピレウス到着前、船内で募金を集める若者たち
シリアをはじめ中東と北アフリカの一部地域に蔓延している政情不安や紛争の影響で、ヨーロッパを目指す難民の波が地中海に押し寄せています。

国を追われた何十万人もの人々の多くは、地中海を船で渡ります。この船の多くは定員を遙かに上回る人数を乗せており、沈没事故が跡を断ちません。2015年10月現在ではすでに前年の犠牲者を2割以上上回る、2600名の命が失われています。

第88回ピースボートのオーシャンドリーム号は、9月末にまさにその難民が渡る海域を航行しました。難民船に出会う可能性があることなど、この問題を身近に感じた船旅の参加者たちは関心を深め、船内で学んだり、支援の方法について話し合う場を持ちました。

NGOによる支援

ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス
世界の医療団ギリシャ支部代表に船上で集まった難民への支援金を渡す(第88回ピースボートにて)
中東から来る難民にとって、ギリシャはヨーロッパへの入り口となります。現在のギリシア政府も、難民に対して積極的に門戸を開こうという意思は示しています。しかし、ギリシアは財政危機を迎えているため、増え続ける難民を受け入れる態勢は整えることができません。

「世界の医療団ギリシャ支部 (Medicines du Monde Greece)」(以下「MdM-G」)のようなNGO組織は、懸命に対応をしていますが、人、モノ、場所、資金などあらゆるものが不足しています。

「人々に必要な物が多すぎて、十分に供給できることはないでしょう」とMdM-G代表のニキタス・カナキス医師は語ります。

MdM-Gでは、支援を必要とする全ての人々を受け入れるようにしています。アテネのオモニアという地区にある診療所では従来、アルバニアからの移民など社会福祉の対象外となっている人々に対して支援を提供してきました。

しかし経済危機の後は、医療費を払えなくなったギリシャ市民も助けを必要として訪れるようになりました。

最近ではその対象のほとんどが難民です。医療、法的手続きや住居について支援をするほか、路上生活をしている難民を訪ね、彼らが利用できるサービスを案内するボランティア活動も実施しています。

チャリティー・オークションを開催

ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス
船内でのチャリティ・オークションの様子
ピースボート船内では、難民支援に奮闘するMdM-Gの活動をサポートするため、、チャリティ・オークションを開催しました。

船長のサイン入り海図やダンスの個別レッスンなど様々なアイテムが出品されました。

また水先案内人として乗船されていた方々からもインドの平和活動家エラ・ガンジーさんからはサリー、執筆家の四角大輔さんからはニュージーランドにあるご自宅の湖で釣りにご招待など、出品がありました。

「自分も難民を支援したい」という参加者の方たちの思いが反映され、オークションで集まった額は75万3522円になりました。ボランティアが船内で集めた募金も合わせると、合計約100万円(約7304ユーロ)となります。

この寄付金は、MdM-Gの難民支援に渡すことになりました。

ギリシアの団体とともに「アテネ・アピール」を発表

ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス
ピースボートの入港を歓迎するピレウスの人々
第88回ピースボートがアテネの港ピレウスに入港した際は、地元地域の政府関係者や市民団体などが集まり、歓迎式典を催してくれました。

受け入れてくれたピレウス市の副市長や、MdM-Gの関連団体の代表者もスピーチ、ピースボートのクルーズディレクターとして田村美和子も挨拶しました。

ピースボートと現地の協力団体は共同で、難民によりそいすべての戦争に反対する「アテネ・アピール」を発表しました。入港やイベントの様子はギリシャのテレビでも放送されました。

近郊の2つの学校から生徒たちもかけつけてくれました。生徒たちは「命を大切に。戦争をやめよう」、「平和について話そう。お互いに助け合うチャンスを!」と書かれた横断幕などを掲げました。

中学生のアレクサンドラさんは「ギリシャは平和な場所だとみんなに知ってほしい」と訴えました。また、同級生のエレフセリアさんは「こんな状況の中で自分の国を離れるのはすごく辛いはず。彼らによりそっていたい」と語りました。

不足する難民支援

ギリシアにたどりついた難民に支援を – ピレウス
難民を支援する世界の医療団ギリシャ支部が運営する診療所を訪問(第88回ピースボートにて)
ピースボートのスタッフとボランティアのメンバーは、アテネのオモニア地区にあるMdM-Gの診療所を訪れました。

対応してくれた医師のカナキスさんによると、この診療所では毎日200人、年間10万人もの人を診察しています。公共の医療福祉サービスを受けられない人々に対して、ボランティアの医師や看護師が診療を施しています。また精神科のカウンセリングも行っています。

難民に認定される手続きを待っている人々のための宿泊施設も運営しています。この施設は、主に父子家庭や母子家庭に提供されています。

滞在者のほとんどは別の国に移住する予定ですが、認定がされるまで1年以上かかる場合もあります。そのためこの宿泊施設には、二段ベッドと台所、居間も設置されていて、少しでもましな生活ができるように配慮がされています。

MdM-Gが運営する診療所と宿泊施設は、アテネ市内だけでなく、多くの難民がヨーロッパで最初に辿り着くレスボス島(またはミティリニ島)とヒオス島にもあります。

しかし、こうした取り組みは現在の危機的な状況に追いついていません。様々な市民団体によって準備された同様の宿泊施設はギリシャ全土で900名分です。

つまり、アテネだけでも推定3000名とされる難民の多くは、住む場所がないままになっています。運良く住居を見つけても、小さなアパートの一室に20~30人もの人が寝泊まりしなければならない状況になるので、衛生状態も心配です。

カナキス医師との面会後、ピースボートの一行は施設内を見学し、MdM-Gの日々の活動について学びました。船内で募った支援金は、世界の医療団ギリシャの診療所と福祉施設で活用されることになります。

この訪問に参加したピースボート参加者の大学生は「支援があるとはいえ、ここにいる難民の方たちの表情を見ればどれだけ不安で深刻な状況にあるかがわかる。もっとできることがあるはずだと感じました」と語りました。彼は、卒業したら日本のNGOで働きたいと考えています。

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