クラスター爆弾の基礎知識(2023年版)
ピースボート地雷廃絶キャンペーンP-MACは、地雷と同様に多くの市民を傷つけるクラスター爆弾の廃絶を目指しています。ここではクラスター爆弾の特徴や現在の被害状況、世界の動きを紹介しています。
- プロジェクト: 地雷廃絶キャンペーン(P-MAC)
INFO
2023.12.28
2023.12.28
ピースボート地雷廃絶キャンペーンP-MACは、地雷と同様に多くの市民を傷つけるクラスター爆弾の廃絶を目指しています。ここではクラスター爆弾の特徴や現在の被害状況、世界の動きを紹介しています。
クラスター爆弾の特徴「戦争が終わっても長年続く被害」
クラスター爆弾は、ひとつの容器(親爆弾)の中に数個から何百個もの子爆弾が入った爆弾です。爆撃機などから投下されると空中で破裂し、子爆弾が広い範囲にばらまかれます。子爆弾の中には金属の破片などが仕組まれており、建物や人の身体を貫いて破壊します。
クラスター爆弾は、広い範囲にばらまかれるため、戦争に直接関係のない人々が被害に遭うことがとても多い兵器です。クラスター爆弾の被害に遭うと、死亡する確率も高く、命が助かったとしても手や足を失ったり、体中に傷跡が残ったりと、深刻な障がいが残ります。
また、子爆弾は不発弾となって残ることがとても多く、この不発弾は地雷と同じように、半永久的に人々を危険にさらします。戦争が終わった後もクラスター爆弾の被害が絶えません。
子爆弾は鮮やかな色をしているものもあり、子どもたちが興味本位で手をふれてしまい、被害に遭うことも多いです。また、不発弾の処理もたいへん危険な作業で、除去作業員への被害も多く伝えられています。
クラスター爆弾は、広い範囲にばらまかれるため、戦争に直接関係のない人々が被害に遭うことがとても多い兵器です。クラスター爆弾の被害に遭うと、死亡する確率も高く、命が助かったとしても手や足を失ったり、体中に傷跡が残ったりと、深刻な障がいが残ります。
また、子爆弾は不発弾となって残ることがとても多く、この不発弾は地雷と同じように、半永久的に人々を危険にさらします。戦争が終わった後もクラスター爆弾の被害が絶えません。
子爆弾は鮮やかな色をしているものもあり、子どもたちが興味本位で手をふれてしまい、被害に遭うことも多いです。また、不発弾の処理もたいへん危険な作業で、除去作業員への被害も多く伝えられています。
クラスター爆弾の被害「被害者は子どもをはじめとした一般市民」
《被害者》
クラスター爆弾についての情報を公表している「Cluster Munition Monitor」によると、1960年代以降2022年末までに24,274 人の死傷者が報告されています。クラスター爆弾の被害は他の不発弾との区別がつきにくかったり、記録そのものがないことも多く、全体では56,600人に上ると推測されています。
2022年には8カ国で1,172人がクラスター爆弾によって死傷したと報告されています。この数は「Cluster Munition Monitor」が報告を開始した2010年以来最多です。
クラスター爆弾の被害には、空爆などの攻撃そのものによる被害と、不発弾による被害の2つがあります。
クラスター爆弾の攻撃による死傷者は、2012年から2021年までは報告されませんでしたが、2022年はミャンマー、シリア、ウクライナの3カ国で987人が死傷しました。その大部分である890人はウクライナで被害に遭いました。
また、クラスター爆弾の不発弾による死傷者は少なくとも185人いました。2021年に記録された149人から大幅に増加しています。シリアとウクライナではデータが不足しているため、死傷者ははるかに多い可能性が高いです。
クラスター爆弾による死傷者のうち95%が一般市民で、年齢がわかる被害者の71%は子どもでした。
ウクライナではロシア軍がクラスター爆弾を繰り返し使用したことにより多くの死傷者が出ています。また、ウクライナ軍もクラスター爆弾を使用し、死傷者が出ています。
ウクライナ以外では、シリアでのクラスター爆弾使用とイエメンでのクラスター爆弾の不発弾によって死傷者が増えています。
ミャンマーは2022年に初めてクラスター爆弾による死傷者が確認されました。
・2022年の国/地域別被害者数
<クラスター爆弾の攻撃による被害>
ウクライナ 890人
シリア 84人
ミャンマー 13人
<クラスター爆弾の不発弾による被害>
イエメン 95人
イラク 41人
ウクライナ 26人
ラオス 9人
シリア 6人
レバノン 5人
アゼルバイジャン 3人
《クラスター爆弾の埋設国》
29の国と地域でクラスター爆弾が埋設されていると推測されます。
・埋設国と地域(2022年12月末現在)
アフガニスタン、アンゴラ、アルメニア、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、チャド、チリ、コンゴ民主共和国、ジョージア、ドイツ、イラン、イラク、ラオス、レバノン、リビア、モーリタニア、セルビア、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、タジキスタン、ウクライナ、ベトナム、イエメン、コソボ、ナゴルノ・カラバフ、西サハラ
かつて埋設国であった10カ国は除去活動を完了しました。
・除去を完了した国。カッコ内は完了年
アルバニア(2009年)、クロアチア(2020年)、グレナダ(2012年)、ギニアビサウ(2008年)、モンテネグロ(2020年)、モザンビーク(2016年)、ノルウェイ(2013年)、パラオ(2010年)、コンゴ(2012年)、ザンビア(2010年)
《クラスター爆弾の製造》
16カ国がクラスター爆弾を製造している、あるいは製造する権利を保持しています。
ロシアは2022年も新たなクラスター爆弾の生産を続け、その中には2022年からウクライナで使用している新開発のクラスター爆弾も含まれます。
米国は2016年に製造を終了しましたが、クラスター爆弾の代替兵器を生産しています。
《クラスター爆弾の使用》
2022年8月から2023年7月までにウクライナ、ミャンマー、シリアでクラスター爆弾が使われました。
クラスター爆弾についての情報を公表している「Cluster Munition Monitor」によると、1960年代以降2022年末までに24,274 人の死傷者が報告されています。クラスター爆弾の被害は他の不発弾との区別がつきにくかったり、記録そのものがないことも多く、全体では56,600人に上ると推測されています。
2022年には8カ国で1,172人がクラスター爆弾によって死傷したと報告されています。この数は「Cluster Munition Monitor」が報告を開始した2010年以来最多です。
クラスター爆弾の被害には、空爆などの攻撃そのものによる被害と、不発弾による被害の2つがあります。
クラスター爆弾の攻撃による死傷者は、2012年から2021年までは報告されませんでしたが、2022年はミャンマー、シリア、ウクライナの3カ国で987人が死傷しました。その大部分である890人はウクライナで被害に遭いました。
また、クラスター爆弾の不発弾による死傷者は少なくとも185人いました。2021年に記録された149人から大幅に増加しています。シリアとウクライナではデータが不足しているため、死傷者ははるかに多い可能性が高いです。
クラスター爆弾による死傷者のうち95%が一般市民で、年齢がわかる被害者の71%は子どもでした。
ウクライナではロシア軍がクラスター爆弾を繰り返し使用したことにより多くの死傷者が出ています。また、ウクライナ軍もクラスター爆弾を使用し、死傷者が出ています。
ウクライナ以外では、シリアでのクラスター爆弾使用とイエメンでのクラスター爆弾の不発弾によって死傷者が増えています。
ミャンマーは2022年に初めてクラスター爆弾による死傷者が確認されました。
・2022年の国/地域別被害者数
<クラスター爆弾の攻撃による被害>
ウクライナ 890人
シリア 84人
ミャンマー 13人
<クラスター爆弾の不発弾による被害>
イエメン 95人
イラク 41人
ウクライナ 26人
ラオス 9人
シリア 6人
レバノン 5人
アゼルバイジャン 3人
《クラスター爆弾の埋設国》
29の国と地域でクラスター爆弾が埋設されていると推測されます。
・埋設国と地域(2022年12月末現在)
アフガニスタン、アンゴラ、アルメニア、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、チャド、チリ、コンゴ民主共和国、ジョージア、ドイツ、イラン、イラク、ラオス、レバノン、リビア、モーリタニア、セルビア、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、タジキスタン、ウクライナ、ベトナム、イエメン、コソボ、ナゴルノ・カラバフ、西サハラ
かつて埋設国であった10カ国は除去活動を完了しました。
・除去を完了した国。カッコ内は完了年
アルバニア(2009年)、クロアチア(2020年)、グレナダ(2012年)、ギニアビサウ(2008年)、モンテネグロ(2020年)、モザンビーク(2016年)、ノルウェイ(2013年)、パラオ(2010年)、コンゴ(2012年)、ザンビア(2010年)
《クラスター爆弾の製造》
16カ国がクラスター爆弾を製造している、あるいは製造する権利を保持しています。
ロシアは2022年も新たなクラスター爆弾の生産を続け、その中には2022年からウクライナで使用している新開発のクラスター爆弾も含まれます。
米国は2016年に製造を終了しましたが、クラスター爆弾の代替兵器を生産しています。
《クラスター爆弾の使用》
2022年8月から2023年7月までにウクライナ、ミャンマー、シリアでクラスター爆弾が使われました。
ウクライナのクラスター爆弾問題
2022年にクラスター爆弾によって死傷したと報告された1,172人のうち、大部分の916人がウクライナで被害に遭っています。
ウクライナでは、以前から紛争でクラスター爆弾が使用されていましたが、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、より多くのクラスター爆弾が使用され、甚大な被害を生みだしています。
ロシア軍はウクライナの広範囲で繰り返しクラスター爆弾を使用しています。また、ウクライナ軍もクラスター爆弾を使用しています。2023年7月には米国がウクライナへクラスター爆弾を供与し、ウクライナ軍によって使われています。
これらによって多くの人々が死傷し、また住宅地や学校、病院などにもクラスター爆弾が落とされたことが確認されています。
2022年のウクライナで報告された死傷者は916人ですが、紛争中のウクライナで記録を取ることは困難で、より多くの被害があると考えられます。またクラスター爆弾の使用は今も続いています。今後も攻撃による被害、そして不発弾として残った後の被害も長年続くことが懸念されます。
ピースボートは、ウクライナにおけるクラスター爆弾の使用停止を求めています。詳しくは、一番下の「この記事を読んだ方におすすめ」から詳細をご覧ください。
ウクライナでは、以前から紛争でクラスター爆弾が使用されていましたが、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、より多くのクラスター爆弾が使用され、甚大な被害を生みだしています。
ロシア軍はウクライナの広範囲で繰り返しクラスター爆弾を使用しています。また、ウクライナ軍もクラスター爆弾を使用しています。2023年7月には米国がウクライナへクラスター爆弾を供与し、ウクライナ軍によって使われています。
これらによって多くの人々が死傷し、また住宅地や学校、病院などにもクラスター爆弾が落とされたことが確認されています。
2022年のウクライナで報告された死傷者は916人ですが、紛争中のウクライナで記録を取ることは困難で、より多くの被害があると考えられます。またクラスター爆弾の使用は今も続いています。今後も攻撃による被害、そして不発弾として残った後の被害も長年続くことが懸念されます。
ピースボートは、ウクライナにおけるクラスター爆弾の使用停止を求めています。詳しくは、一番下の「この記事を読んだ方におすすめ」から詳細をご覧ください。
クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)
2007年2月、クラスター爆弾の被害に危機感を抱いた各国政府やNGOが、ノルウェーのオスロに集まり会議を開きました。そして、2008年末までにクラスター爆弾禁止条約(通称オスロ条約)を作ることを宣言。その後、条約作りに賛同する国々が会議を重ね、2008年5月には条約案が完成しました。同年12月3~4日にはオスロで調印式が行われ、日本を含む94カ国が条約に署名しました。2023年11月末現在、オスロ条約に123カ国が署名し、110ヵ国が批准しています。
オスロ条約の成立には、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)と同様、世界中のNGOが重要な役割を果たしました。クラスター爆弾廃絶を目指す世界中のNGOのネットワークであるクラスター兵器連合(CMC)が世界各地でキャンペーンを展開し、各国政府はクラスター爆弾の廃絶へ動き出しました。また条約作りにも大きな力を発揮し、その結果、ただの軍縮条約にとどまらない、被害者支援なども盛り込んだ人道的条約が完成しました。
〈クラスター爆弾禁止条約の主な内容〉
・クラスター爆弾の開発、製造、保有、移譲を禁止する
・これまで保有してきたクラスター爆弾を遅くとも8年以内に廃棄処分する
・不発弾となったクラスター爆弾を10年以内に除去する
・被害者に対して、適切な支援を提供する
・条約加盟国である他の国に対しても支援を行う
・未加盟国に対して、条約加盟を働きかける
オスロ条約の成立には、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)と同様、世界中のNGOが重要な役割を果たしました。クラスター爆弾廃絶を目指す世界中のNGOのネットワークであるクラスター兵器連合(CMC)が世界各地でキャンペーンを展開し、各国政府はクラスター爆弾の廃絶へ動き出しました。また条約作りにも大きな力を発揮し、その結果、ただの軍縮条約にとどまらない、被害者支援なども盛り込んだ人道的条約が完成しました。
〈クラスター爆弾禁止条約の主な内容〉
・クラスター爆弾の開発、製造、保有、移譲を禁止する
・これまで保有してきたクラスター爆弾を遅くとも8年以内に廃棄処分する
・不発弾となったクラスター爆弾を10年以内に除去する
・被害者に対して、適切な支援を提供する
・条約加盟国である他の国に対しても支援を行う
・未加盟国に対して、条約加盟を働きかける
日本のクラスター爆弾対策
日本は、これまで一度も使用したことはありませんが、クラスター爆弾保有国でした。2008年12月にクラスター爆弾禁止条約に署名し、2009年7月に批准しました。
それまで自衛隊が保有していたクラスター爆弾は2015年2月に廃棄処分が終了しました。日本政府は、条約では規制されない最新式のクラスター爆弾も含めて「今後いかなるクラスター爆弾も導入しない」と明言しました。また、日本政府はクラスター爆弾の被害者への支援を行い、条約未署名の国々に対しては署名を働きかけていくとしています。
2010年、全国銀行協会はクラスター爆弾製造そのものを目的とした銀行融資を禁止しました。2017年12月、すべての金融機関が、目的にかかわらず製造企業への投融資を禁止するよう方針を変更しました。
『クラスター爆弾に関わる日本の課題』
日本はオスロ条約加盟国のため現在はクラスター爆弾を保有していませんが、米国はオスロ条約に加盟していません。そのため、在日米軍はクラスター爆弾を保有しています。日本政府は、在日米軍基地は日本の管轄外だとして米軍のクラスター爆弾使用や保有は禁じられていないと発表しています。沖縄では2010年、米軍がクラスター爆弾の投下訓練をおこなっていることが明らかになりました。
日本政府は安全保障関連法案の議論の中で、法的には自衛隊の後方支援活動として弾薬を運ぶことは可能で、その中にはクラスター爆弾も含まれるとしています。
2017年、国民の年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がクラスター爆弾製造企業の株式を保有していることが明らかになりました。
※オスロ条約の第一条には「この条約によって締約国に対して禁止されている活動を行うことにつき、いずれかの者に対して、援助、奨励し、又は勧誘すること」をおこなってはならないと書かれています。そのため、クラスター爆弾廃絶を目指す世界中のNGOのネットワークであるクラスター兵器連合(CMC)は、クラスター爆弾製造企業への投融資も禁止されていると判断し、投融資をなくすための活動をおこなっています。すでに法律により投融資を禁止した国もあります。
参考: 「Cluster Munition Monitor 2023」 クラスター兵器連合(CMC)発行
それまで自衛隊が保有していたクラスター爆弾は2015年2月に廃棄処分が終了しました。日本政府は、条約では規制されない最新式のクラスター爆弾も含めて「今後いかなるクラスター爆弾も導入しない」と明言しました。また、日本政府はクラスター爆弾の被害者への支援を行い、条約未署名の国々に対しては署名を働きかけていくとしています。
2010年、全国銀行協会はクラスター爆弾製造そのものを目的とした銀行融資を禁止しました。2017年12月、すべての金融機関が、目的にかかわらず製造企業への投融資を禁止するよう方針を変更しました。
『クラスター爆弾に関わる日本の課題』
日本はオスロ条約加盟国のため現在はクラスター爆弾を保有していませんが、米国はオスロ条約に加盟していません。そのため、在日米軍はクラスター爆弾を保有しています。日本政府は、在日米軍基地は日本の管轄外だとして米軍のクラスター爆弾使用や保有は禁じられていないと発表しています。沖縄では2010年、米軍がクラスター爆弾の投下訓練をおこなっていることが明らかになりました。
日本政府は安全保障関連法案の議論の中で、法的には自衛隊の後方支援活動として弾薬を運ぶことは可能で、その中にはクラスター爆弾も含まれるとしています。
2017年、国民の年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がクラスター爆弾製造企業の株式を保有していることが明らかになりました。
※オスロ条約の第一条には「この条約によって締約国に対して禁止されている活動を行うことにつき、いずれかの者に対して、援助、奨励し、又は勧誘すること」をおこなってはならないと書かれています。そのため、クラスター爆弾廃絶を目指す世界中のNGOのネットワークであるクラスター兵器連合(CMC)は、クラスター爆弾製造企業への投融資も禁止されていると判断し、投融資をなくすための活動をおこなっています。すでに法律により投融資を禁止した国もあります。
参考: 「Cluster Munition Monitor 2023」 クラスター兵器連合(CMC)発行