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大都市バンコクで人身取引の最前線から学ぶ – タイ

大都市バンコクで人身取引の最前線から学ぶ – タイ
IOM-Xのバンコクオフィスにて
ここでは、第97回ピースボート・アジアグランドクルーズで訪れたタイ(バンコク)で行われたツアーを紹介します。ツアーでは、国際的な人身取引の拠点として利用されているバンコクの影に立ち向かう人々と出会い、彼らの活動に学びました。
IOM-Xのバンコクオフィスにて
ここでは、第97回ピースボート・アジアグランドクルーズで訪れたタイ(バンコク)で行われたツアーを紹介します。ツアーでは、国際的な人身取引の拠点として利用されているバンコクの影に立ち向かう人々と出会い、彼らの活動に学びました。

大都市バンコクの影の部分に目を向ける

大都市バンコクで人身取引の最前線から学ぶ – タイ
バンコクの市街地を歩くツアー参加者
タイ国民のほとんどは農業従事者です。地方の人々は豊かな富を求め、経済活動の中心地である大都市バンコクに流れ込んでいます。その流れは、残念なことに国際的な人身取引ビジネスも盛んにしてしまっています。

世界奴隷指標(グローバル・スレイブリー・インデックス)の推計によると、世界の約4300万人の人身取引の被害者から、年間で約1500億ドルの利益が生み出されています。

またタイは、その指標で世界167カ国中人身取引が盛んな国の20位に選出されています。この問題を学ぶため、ピースボート参加者はバンコクを訪れ、最前線で取り組む人々と出会いました。

漁師の8割が搾取されている現実

大都市バンコクで人身取引の最前線から学ぶ – タイ
はじめに訪れたのは、NGO・国際移住機関人身取引防止キャンペーン(IOM-X)のバンコクオフィスです。ここでは、人身取引への注意を呼びかけるキャンペーンを行い、その効果も調査・分析しています。

プログラムリーダーであるタラ・デルモットさんは言います。「人身取引とは、加害者が利益を得るために他人から搾取することを目的として、本人の意思に反して騙され、売られ、奴隷のような状況に強制的に貶められることを言います。タイでの人身取引の職業は主に、性サービス従事者、家庭内労働者(いわゆるお手伝いさん)、漁師などです」。

水産業での搾取問題は、その他の人身取引の形態に比べてあまり公にされてはいません。しかし、タイは世界第4位の魚の輸出国でありながら、推計で漁師の8割が搾取されているという統計もあります。

若年層に効果的なアプローチを

IOM-Xは、あらゆる形態の人身取引に立ち向かうため、米国国際開発庁(USAID)や、国連移住機関と密接に連携しています。

IOM-Xのキャンペーンの対象年齢は、主に15歳から35歳です。IOM-Xのスタッフであるバレットさんは、「若年層は搾取に対して最も無防備で、しかも世界の将来を担う世代だからです」と言います。

IOM-Xの啓蒙活動の多くは、主にインターネット上で展開されています。タイでは人口のおよそ82%が、日常的にインターネットを利用しているため、キャンペーンのコンテンツをフェイスブックやユーチューブにアップすることが効果的なツールになっています。

最近配信された、家庭内労働者の人身取引をテーマにした動画は、数か月間で8000万ビューを獲得したといいます。

歓楽街に拠点を設ける支援組織

大都市バンコクで人身取引の最前線から学ぶ – タイ
次に、バンコクの歓楽街にあるシティ・ライトというカフェに向かいました。このカフェの母体は、ナイト・ライトというNPOで、性産業にいる女性たちに選択肢を与える活動をしています。

ナイト・ライトのスタッフ、アシュレイさんは言います。「成人した人が性産業に入るのは、多くの場合が本人の意思によるものです。しかし、その後人身取引業者の餌食になってしまいます。一度入ったら、出ることは非常に難しくなります」。

そのような女性たちを支援するため、シティ・ライトはあえてこのエリアにカフェを構えています。「バンコクの歓楽街は、客の種類ごとに地区が分かれています。この地区は、外国人男性のみが立ち入る所です。タイでは売春は違法ですが、犯罪組織と買収された警察官によってビジネス同様にコントロールされています」(アシュレイさん)。

ナイト・ライトのプログラムによって、およそ160人のタイ人女性がバリスタ、パン作り、アクセサリー作りなどの職を得て雇われています。そこで生まれる利益は彼女たちの賃金になり、またナイト・ライトの運営資金にもなっています。

「国境を越える」ことを危機ではなくチャンスとするために

大都市バンコクで人身取引の最前線から学ぶ – タイ
女性たちを支援するシティライト・カフェにて
ツアー参加者からは、バンコクの最前線で活動する支援者から直接話を聞いたことで、よりリアルな課題を認識したという声があがりました。

参加者のある女性は言います。「日本のような島国から来ると、異常な頻度で国境を越えて被害者が取引されることが想像しづらいのですが、被害者がいかに簡単によその国に連れていかれ、搾取されているかがわかりました。また、搾取労働については商品のいち消費者として、どのようにして変化を起こしていけるかを、もっと考えるようになりました」。

それに対し、IOM-Xのタラ・デルモットさんはこのように答えました。「国境を越えること自体は危機ではなく、本来はチャンスになるべきです。安全かつ人道的に移住が行われるのであれば、移住者本人も彼らが残してきた家族も、彼らが職を得る地域も、全てが利益を享受することができるのです。そのような状況をつくれるよう、活動を続けていく必要があります」。

人身取引は、現在も世界中で起きています。今回のツアーで訪問した支援団体のような組織の存在は、より安全で公平な世界のトビラを開いてくれるかもしれません。

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