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第18回エッセイ大賞の結果発表

第18回エッセイ大賞の結果発表
第18回「旅と平和」エッセイ大賞では、残念ながら応募作品の中には入賞に該当する作品がありませんでした。審査委員による選評を掲載致します。
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第18回「旅と平和」エッセイ大賞では、残念ながら応募作品の中には入賞に該当する作品がありませんでした。審査委員による選評を掲載致します。

第18回エッセイ大賞選評

・伊藤千尋(ジャーナリスト)

永島さんは香港の民主化運動に身を置いた貴重な体験を書いたが、その当時に現地にいたというだけで、その体験から自分が今、何かを行動しているという姿が見えない。香港の友人のために民主化運動について日本や世界に事実を伝え広げるなどの運動につなげるわけでもなく、ようやく伝えることができるようになったという段階だ。

大石さんは北海道に生まれロシアとの接点があることからサハリンへ行き、さらにキルギスに留学した。大学でアースデイの活動もした。コツコツと積み上げる過程は貴重で評価できる。しかし、そこで世界が不平等だと知り誰かのために行動できる人間になりたいと思ったのなら、なぜ次の行動に踏み出さないのだろうか。もはや次の行動に入っているべきである。

峯岸君はわずか13歳でインドネシアとウクライナを結び付け、食の異文化から国際平和へと話を発展させている。観点がユニークだし、内容も面白い。しかし、着想の面白さだけで、食文化を守ることで国際平和にどう結びつけるか、そのあたりがあいまいだ。論としては面白いので、それをこれからの自分の人生に結びつけていってほしい。

工藤さんの文章はメルヘンチックだが、内容は毒ガスの島を訪ねた記録でシリアスである。さらに米国に留学した体験から海外を知る前に日本を知らなければならないと思い、日本全国を回ったという。それには首をかしげる。ならば自分の住んでいる町をすべて回らなければ、町を出てはいけないのだろうか?留学先のファミリーは日本全国の地理を知りたいのではないだろう。相手に伝えるべき日本について勘違いしているのではないか。これではせっかく船に乗って世界を回っても、得るものは少ないだろう。

今回は例年に比べて応募が極端に少なかった。そして内容も薄い。応募作品すべてを通じて言えるのは、過去のずっしりとした作品と比べ内容が軽いことだ。3年間、船が出ていなかったため世界一周への現実感が薄れたのではないか。それ以上に、応募者自信がコロナのため海外に出られなかった、つまり体験の機会が得られなかったことが大きな原因だろう。世界が閉じてしまったのだ。そのため個人の探求や行動の意欲も減退してしまった。それがすべての作品の閉塞感として現れているのだと思う。今回は残念ながら自信を持って太鼓判を押せる作品は見当たらなかった。コロナの呪縛を突き破るような作品を期待したい。

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