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「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演

「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演
ベアトリス・フィン事務局長
2017年のノーベル平和賞を受賞した、ICANのベアトリス・フィン事務局長が、1月12日に長崎大学の招待で来日し、長崎、広島、東京を訪れました。ここでは、1月16日に東京で開催されたフィン事務局長の講演内容をお届けします(要約)。ICANは世界各国に働きかけ、歴史上初めて核兵器を具体的に禁止する核兵器禁止条約の採択にむすびつける原動力になりました。しかし、核保有国や核の傘による安全保障を重要視する国々は、この条約に賛同していません。そんな状況の中で講演した彼女は、核廃絶をどう進めるのかについてはもちろん、被爆国である日本の市民にできることについても力強く語りました。
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ベアトリス・フィン事務局長
2017年のノーベル平和賞を受賞した、ICANのベアトリス・フィン事務局長が、1月12日に長崎大学の招待で来日し、長崎、広島、東京を訪れました。ここでは、1月16日に東京で開催されたフィン事務局長の講演内容をお届けします(要約)。ICANは世界各国に働きかけ、歴史上初めて核兵器を具体的に禁止する核兵器禁止条約の採択にむすびつける原動力になりました。しかし、核保有国や核の傘による安全保障を重要視する国々は、この条約に賛同していません。そんな状況の中で講演した彼女は、核廃絶をどう進めるのかについてはもちろん、被爆国である日本の市民にできることについても力強く語りました。

被爆国日本を訪れて

「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演
広島の被爆者、田中煕巳氏(被爆者団体協議会元事務局長)と
日本を訪れて、非常に多くの方々が大きな情熱で核廃絶をしたいとの声を上げていらっしゃることに、大変感銘を受けました。皆さんのエネルギーが、ICANを支え、勇気づけてくれます。

日本は、どの国よりも核兵器が使用された際にどれほど酷いものになるかをよく理解している唯一の国です。被爆者の方々やその家族の方たちだけではありません。若者たちが原爆の記憶を継承して、将来につなげていこうとしていることに感動しました。

世界中の誰もが、核戦争を望んではいません。ではなぜ、核兵器が存在するのでしょうか?単に、核兵器によって核戦争を防ごうという論理で、核兵器の所持が認められています。

市民に大きな被害をもたらす化学兵器や生物兵器、あるいは対人地雷、クラスター爆弾などは禁止する動きがあり、実際に禁止されました。しかし核兵器を保有する各国政府は、自分たちの権威のために、これだけは保有を続けようとしています。

核兵器は、「他国の使用を防ぐために保有を認められてきた」ことで、もっとも大きな矛盾をはらんだ兵器になっているのです。私たちはその矛盾について議論を始めなければなりません。

世界のリーダーたちは、核を恐れていた

「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演
国会議員へ訴えかけるフィン事務局長
人類は、大量殺戮、大量破壊をする兵器を廃絶したいと70年以上に渡って努力してきました。核兵器に反対する署名を初めて行ったのは、科学者です。この人たちは、核兵器を作ったマンハッタン計画に携わった科学者たちでした。

広島と長崎に原爆投下の命令をしたトルーマン大統領は、戦後はその考え方をひるがえします。核兵器の使用は、一人の大統領の決断にゆだねるのではなく、国際的な合意によってコントロールすべきだという立場になりました。

国連を創立するために貢献したチャーチルは、国連議会で演説を行いました。それは、国際機関では核不拡散を実施する必要があること、そして核兵器の使用は国際機関に限定すると明確に規定すべきという主張でした。

レーガン大統領は、核兵器の存在意義をなくそうと努力してきたことが、最近になってわかっています。それにも関わらず、私たちは今も核兵器によって生存の脅威におびやかされて生きています。

「力の象徴」から「恥の象徴」へ

「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演
私たちが置かれている状況は、ほとんど警告の時間もない一瞬のうちに抹殺される可能性があるということです。

今年の1月13日、ハワイに弾道ミサイルが迫っているという誤報が流れました。それが誤報だとわかる30分の間、人々はひどい恐怖にさらされました。彼らは自分の家族に対し、「さようなら」というメッセージを送りました。

私たちにはもっと良い選択ができるはずです。私たちにはこうしたことに反対の声を上げる権利があります。こんなことは、私たちの世代で解決しなければなりません。ではどうやって解決するのでしょうか?ICANの使命は、まさにそこにあります。

まず最初に政治的な意思をつくりあげることです。次に政治的な解決策を考え、実施することです。核兵器は、何百万人もの無辜の市民を無差別に殺す兵器だ、ということを政治家に理解させる必要があります。

そしてこれまで核兵器は「力の象徴」でしたが、これからは「恥の象徴」になると転換させなければなりません。

私たちには良いニュースもあります。昨年は122カ国が国連で核兵器禁止条約の採択に署名しました。50カ国が署名・批准をすることで、条約は発効されます。

歴史上、国際的な条約である兵器を禁止することが、その兵器を廃絶する第一歩になってきました。条約で非合法とされた兵器は、政治的なステータスをなくしていきます。これからは、核兵器を保有する意味も変わってくるのです。核兵器禁止条約は、そのための現実的な手段です。

なぜ日本が核兵器禁止条約に参加すべきか?

「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演
核兵器に対する認識を変えるべきという声が、世界中で起きています。日本のみなさんも、日本政府の核兵器に対する認識に変化を求めていると訴える必要があります。日本政府は、本当に広島や長崎などに起きたことが、他の都市でも繰り返されてもいいと考えているのでしょうか?

私は、日本が世界の中での核軍縮の動き対して、リードを取ってもらいたいと思っています。そのためにも日本は核兵器禁止条約に参加しなければいけません。

日本は民主主義国家なので、みなさん自身が首相のボスなのです。みなさんが声を上げて団結、連帯すれば、政府は無視することはできません。そしてみなさんと同じように声を上げる人は、全世界に何百万人もいます。

「核兵器禁止条約を推進している」と言うと、よく「現実がわかっていない」「非合理的だ」と言われます。しかし、核兵器が使用された場合の大惨事と核廃絶とを比べたとき、どちらが合理的でどちらが非合理的でしょうか。

私たちは人類の生存の側に立ちます。私たちはこれから生存していくために、このような兵器をなくすよう力を振り絞らないといけません。

核廃絶は合理的な選択

「核による破局が来る前に、私たちの力で核兵器を終わらせる」−ICANベアトリス・フィン事務局長講演
ピースボート事務局にて
私たちは核兵器に対して恐怖を抱くべきです。それは合理的な恐怖であり、現実に存在する脅威だからです。世界の歴史を見ても、今ほど核兵器の使用が現実に近づいているときはありません。各国は毎日、お互いの国を地図上から消し去ろうと脅威を煽っています。

一方で、世界中のリーダーたちとともに核廃絶に近づいているという希望も持っています。この希望により恐怖心に打ち勝たなければいけません。

私たちが行動を起こす理由は、ICANが10年前に発足した時と同じ理由です。もうみんな待っているのは飽き飽きしたということです。私たちは、自分たちの意見を聞かれるまで、辛抱強く待つことをやめました。

私たちは自分たちが意見を言うテーブルを、自分たちで作ろうとし始めました。みなさんにもこのテーブルについてもらいたいと思っています。

核兵器が私たちを終わらせる前に、私たちが核兵器を終わらせなければなりません。私は、人々の力によって、核兵器がもたらした長い悪夢に終わりを告げることができると信じています。

それを信じるのであれば、ぜひICANに参加してください。ICANはみなさんの情熱や希望を必要としています。ICANのHPの参加やFacebookのフォローをして下さい。

私たちは一瞬の恐怖におののきながら生きるのではなく、もっと希望のある未来を求めているのですから。われわれにはその権利があります。政治家にはそれを期待すべきです。私たちの声で、核兵器を廃絶しましょう。それがわれわれがめざす核廃絶への道筋です。ありがとうございました。

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