ポリネシア:先住民のアイデンティティと持続可能な発展
第93回ピースボート地球一周の船旅では、南米から日本まで、ポリネシアの島々を訪問しながら、2017年3月に航海を終えました。ここでは、ポリネシアの島々での体験と、船に乗船したポリネシアの人々による持続可能な島をつくるための活動についてご紹介します。
- 寄港地エリア: 太平洋
- クルーズ: 第93回 地球一周の船旅
- 関連キーワード: 先住民 / 女性 / 環境・エコ
船
2017.5.31
2020.9.15
第93回ピースボート地球一周の船旅では、南米から日本まで、ポリネシアの島々を訪問しながら、2017年3月に航海を終えました。ここでは、ポリネシアの島々での体験と、船に乗船したポリネシアの人々による持続可能な島をつくるための活動についてご紹介します。
ポリネシア・トライアングル
ポリネシア・トライアングルとは、東のラパヌイ(イースター島)、南西のアオテアロア(ニュージーランド)、そして北のハワイの3つ島の間に広がる太平洋の地域を指します。
この地域の祖先は、約3000年前に東アジア地域から、危険な航海を経て渡ってきた人々であると考えられています。第93回ピースボートは、最後の寄港地として、このポリネシアン・トライアングルの4つの島(ラパヌイ、タヒチ、ボラボラ、サモア)を訪問しました。
また、それぞれの島に寄港する前の船内では、水先案内人による、これらの地域に関する講座が開かれました。ラパヌイのマリオ・トゥキ、タヒチのガブリエル・テティアラヒ、そしてサモアのペセタ・ティオティオの3名の水先案内人はみな、それぞれの自国において、持続可能な開発に取り組んでいます。
この地域の祖先は、約3000年前に東アジア地域から、危険な航海を経て渡ってきた人々であると考えられています。第93回ピースボートは、最後の寄港地として、このポリネシアン・トライアングルの4つの島(ラパヌイ、タヒチ、ボラボラ、サモア)を訪問しました。
また、それぞれの島に寄港する前の船内では、水先案内人による、これらの地域に関する講座が開かれました。ラパヌイのマリオ・トゥキ、タヒチのガブリエル・テティアラヒ、そしてサモアのペセタ・ティオティオの3名の水先案内人はみな、それぞれの自国において、持続可能な開発に取り組んでいます。
マリオ・トゥキ/ラパヌイ(イースター島)
マリオ・トゥキは、ラパヌイ(イースター島)の音楽や芸術を若者に教え伝統文化の継承を行っているNGO「トキ」の共同創設者です。船内の講座では、島全体に点在する巨大な石像「モアイ」について説明しました。1世紀頃に始まったモアイづくりは、島内の部族同士が力の誇示のために、より大きな像を作る競争へと発展したと考えられています。その結果、島の自然資源が枯渇したというのです。
2回目の船内講座では、ラパヌイの持続可能な未来の構想について話しました。年間7万人を超える観光客に対し、マリオはエコツーリズムを推奨しています。できるだけ多く地元の人々とかかわることで、旅の味わいが深まるだけでなく、地元の人々や経済へも恩恵が広がる仕組みを目指しているのです。
「グリーン・ツーリスト(環境に配慮する旅行者)とは、用意された体験を楽しむだけでなく、体験をつくりだすプロセスをも楽しむ人々です」とマリオは言います。
2回目の船内講座では、ラパヌイの持続可能な未来の構想について話しました。年間7万人を超える観光客に対し、マリオはエコツーリズムを推奨しています。できるだけ多く地元の人々とかかわることで、旅の味わいが深まるだけでなく、地元の人々や経済へも恩恵が広がる仕組みを目指しているのです。
「グリーン・ツーリスト(環境に配慮する旅行者)とは、用意された体験を楽しむだけでなく、体験をつくりだすプロセスをも楽しむ人々です」とマリオは言います。
ガブリエル・テティアラヒ/タヒチ
ラパヌイが1888年の併合以来チリに統治されている一方で、タ ヒチは1880年の植民地化以来フランスの海外領土として扱われてきました。100年以上、タヒチの先住民であるマオヒの人々は自国の中で軽視され、独立性と自治権を奪われてきました。
この現状に異を唱え、行動を起こしたのがNGOヒティ・タウ(「立ち上がって変革を起こす」の意)の創設者であるガブリエル・テティアラヒです。愛称はガビ。目指すのはマオヒが自らの普遍的権利に気付き、取り戻すために団結すること、タヒチの持続可能な発展、そして核のない母国です。
ガビは船内で、ヒティ・タウが行っている活動を紹介しました。また、フランス政府が1962年から1996年にかけてタヒチで行なった核実験の深い爪痕についても語りました。それは、自給率の急激な低下や世界一の甲状腺ガンの発症率など、数字にも現れています。
しかし、「核実験の一番の影響は、身体的なものでも経済的なものでもなく、我々の思考への影響なのです。フランスは我々の思考までも植民地化したといえます」とガビは深く嘆きます。
継続的な活動の結果、2013年5月、タヒチ(フランス領ポリネシア)は国際連合の「非自治地域リスト(※)」に載りました。フランスからの独立に向けたガビの熱い闘いは今も続いています。
※非自治地域とは、国連憲章で完全に自治に至っていない地域のことを指したもの。施政を行う国(タヒチの場合はフランス)は、住民が自治と民主主義を発達できるように支援するべきと定めている。フランス領ポリネシアは、リストから一度は削除されたものの、2013年に再び掲載されることになった。
この現状に異を唱え、行動を起こしたのがNGOヒティ・タウ(「立ち上がって変革を起こす」の意)の創設者であるガブリエル・テティアラヒです。愛称はガビ。目指すのはマオヒが自らの普遍的権利に気付き、取り戻すために団結すること、タヒチの持続可能な発展、そして核のない母国です。
ガビは船内で、ヒティ・タウが行っている活動を紹介しました。また、フランス政府が1962年から1996年にかけてタヒチで行なった核実験の深い爪痕についても語りました。それは、自給率の急激な低下や世界一の甲状腺ガンの発症率など、数字にも現れています。
しかし、「核実験の一番の影響は、身体的なものでも経済的なものでもなく、我々の思考への影響なのです。フランスは我々の思考までも植民地化したといえます」とガビは深く嘆きます。
継続的な活動の結果、2013年5月、タヒチ(フランス領ポリネシア)は国際連合の「非自治地域リスト(※)」に載りました。フランスからの独立に向けたガビの熱い闘いは今も続いています。
※非自治地域とは、国連憲章で完全に自治に至っていない地域のことを指したもの。施政を行う国(タヒチの場合はフランス)は、住民が自治と民主主義を発達できるように支援するべきと定めている。フランス領ポリネシアは、リストから一度は削除されたものの、2013年に再び掲載されることになった。
ペセタ・ティオティオ/サモア
ポリネシア・トライアングル最後の寄港地は、1962年に南太平洋で初めて独立を実現したサモア。水先案内人としてピースボートに乗船したペセタ・アラシ・ティオティオは、サモアのNGOウィメン・イン・ビジネス開発(WIBDI)の代表を務めています。
WIBDIは、サモアの伝統文化を大切にしながら新旧の技術を活用し、フェアトレードを奨励することを通してサモアの農村部における経済発展を目標に活動しています。また、農村部の人々が農場資源を最大限に活用して持続可能なビジネスを始めるサポートをしています。
ティオティオは船内の講座でサモアの歴史や文化、手工業製品や有機農法のトレーニングプログラムなどWIBDIが行っている活動を紹介し、フェアトレードのメリットと課題をテーマにしたワークショップも行いました。
WIBDIは、サモアの伝統文化を大切にしながら新旧の技術を活用し、フェアトレードを奨励することを通してサモアの農村部における経済発展を目標に活動しています。また、農村部の人々が農場資源を最大限に活用して持続可能なビジネスを始めるサポートをしています。
ティオティオは船内の講座でサモアの歴史や文化、手工業製品や有機農法のトレーニングプログラムなどWIBDIが行っている活動を紹介し、フェアトレードのメリットと課題をテーマにしたワークショップも行いました。
サモアでの体験
サモアではピースボート参加者が、WIBDIが2016年に開始したオーガニック・ウォリアーズ・アカデミーを訪問しました。このプログラムでは、地元の若者に対し農業研修を提供し、収入を得る機会を与える支援をするとともに、サモアの持続可能な有機農法の復活を目指しています。
このような民間セクターやNGO間のパートナーシップは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標17「パートナーシップで目標を達成する」に不可欠です。
ツアー参加者はココナッツオイルの全生産工程を見学し、オイルを生産するために必要な労力や細部への注意を目の当たりにして感銘を受けました。
「お料理にも化粧品としてもよくココナッツオイルを使っているので、実際に生産者の顔を見られたのがよかったです。日本では、私たちが消費している製品がどこから来たのかをあまり考えずに使っています。この経験は、生産者の努力を知り、感謝するいい機会になりました。」と参加者した河岸佳子さんは語ります。
参加者は、出発地である日本へと向かう前に、ポリネシアの先住民が直面する課題と彼らの未来をより良くするための草の根の取り組みについて学ぶことができました。
このような民間セクターやNGO間のパートナーシップは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標17「パートナーシップで目標を達成する」に不可欠です。
ツアー参加者はココナッツオイルの全生産工程を見学し、オイルを生産するために必要な労力や細部への注意を目の当たりにして感銘を受けました。
「お料理にも化粧品としてもよくココナッツオイルを使っているので、実際に生産者の顔を見られたのがよかったです。日本では、私たちが消費している製品がどこから来たのかをあまり考えずに使っています。この経験は、生産者の努力を知り、感謝するいい機会になりました。」と参加者した河岸佳子さんは語ります。
参加者は、出発地である日本へと向かう前に、ポリネシアの先住民が直面する課題と彼らの未来をより良くするための草の根の取り組みについて学ぶことができました。