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クラスター爆弾の基礎知識(2022年版)

クラスター爆弾の基礎知識(2022年版)
子爆弾の一種。様々な形のクラスター爆弾がある
ピースボート地雷廃絶キャンペーンP-MACは、地雷と同様に多くの市民を傷つけるクラスター爆弾の廃絶を目指しています。ここではクラスター爆弾の特徴や現在の被害状況、世界の動きを紹介しています。
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子爆弾の一種。様々な形のクラスター爆弾がある
ピースボート地雷廃絶キャンペーンP-MACは、地雷と同様に多くの市民を傷つけるクラスター爆弾の廃絶を目指しています。ここではクラスター爆弾の特徴や現在の被害状況、世界の動きを紹介しています。

クラスター爆弾の特徴「戦争が終わっても長年続く被害」

クラスター爆弾の基礎知識(2022年版)
クラスター爆弾は、ひとつの容器(親爆弾)の中に数個から何百個もの子爆弾が入った爆弾です。爆撃機などから投下されると空中で破裂し、子爆弾が広い範囲にばらまかれます。子爆弾の中には金属の破片などが仕組まれており、建物や人の身体を貫いて破壊します。

クラスター爆弾は、広い範囲にばらまかれるため、戦争に直接関係のない人々が被害に遭うことがとても多い兵器です。クラスター爆弾の被害に遭うと、死亡する確率も高く、命が助かったとしても手や足を失ったり、体中に傷跡が残ったりと、深刻な障がいが残ります。

また、子爆弾は不発弾となって残ることがとても多く、この不発弾は地雷と同じように、半永久的に人々を危険にさらします。戦争が終わった後もクラスター爆弾の被害が絶えません。

子爆弾は鮮やかな色をしているものもあり、子どもたちが興味本位で手をふれてしまい、被害に遭うことも多いです。また、不発弾の処理もたいへん危険な作業で、除去作業員への被害も多く伝えられています。

クラスター爆弾の被害「被害者は子どもをはじめとした一般市民」

クラスター爆弾の基礎知識(2022年版)
1つのクラスター爆弾の中には数百個の子爆弾が詰められている
《被害者数》
クラスター爆弾についての情報を公表している「Cluster Munition Monitor」によると、1960年代以降2021年末までに23,082 人の被害者が報告されています。クラスター爆弾の被害は他の不発弾との区別がつきにくかったり、記録そのものがないことも多く、全体では56,500~86,500人が被害に遭ったと推測されています。

2021年には11の国と地域で149人がクラスター爆弾の被害に遭ったと報告されています。そのうち59人が死亡、90人が負傷しました。2020年の被害者数360人と比べると急激に減りました。

(過去最悪を記録した2016年には、シリアとイエメンでの紛争でクラスター爆弾が使われたことで被害者が急増し、合計971人のクラスター爆弾による被害者が確認されました。その後2017年は289人、2018年は277人、2019年は317人でした。)

2021年の被害者は全てクラスター爆弾の不発弾による被害です。2011年以来はじめて、クラスター爆弾の攻撃による被害者がいない年となりました。

被害者の97%にあたる144人が一般市民です。また、年齢が判明している被害者の66%にあたる90人は子どもです。

2021年のクラスター爆弾による被害者は減少しましたが、2022年上半期にはロシアの侵攻によってウクライナで、少なくとも689人がクラスター爆弾の攻撃で死傷したと報告されています。また、報告されていない被害者も多くいる可能性があります。

・2021年の国/地域別被害者数
シリア 37人
イラク 33人
ラオス 30人
イエメン 29人
レバノン 8人
ナゴルノ・カラバフ 5人
タジキスタン 2人
モーリタニア 2人
アゼルバイジャン 1人
スーダン 1人
西サハラ 1人


《クラスター爆弾の埋設国》
29の国と地域でクラスター爆弾が埋設されている、あるいはその可能性があります。

・埋設国と地域(2021年12月末現在)
アフガニスタン、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、チリ、コンゴ民主共和国、ジョージア、ドイツ、イラン、イラク、ラオス、レバノン、リビア、モーリタニア、セルビア、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、タジキスタン、ウクライナ、ベトナム、イエメン、コソボ、ナゴルノ・カラバフ、西サハラ

・埋設の可能性がある国
アンゴラ、アルメニア、チャド


《クラスター爆弾の使用》
2022年8月現在、ウクライナはクラスター爆弾が使われている唯一の国です。2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、ロシア軍は広範囲でクラスター爆弾を使用しています。また、ウクライナ軍も少なくとも3回クラスター爆弾を使用したと思われます。

2021年8月から2022年7月の1年間では、他の国でクラスター爆弾が使われた報告はありません。

クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)

クラスター爆弾の基礎知識(2022年版)
2007年2月、クラスター爆弾の被害に危機感を抱いた各国政府やNGOが、ノルウェーのオスロに集まり会議を開きました。そして、2008年末までにクラスター爆弾禁止条約(通称オスロ条約)を作ることを宣言。その後、条約作りに賛同する国々が会議を重ね、2008年5月には条約案が完成しました。同年12月3~4日にはオスロで調印式が行われ、日本を含む94カ国が条約に署名しました。2022年8月1日現在、オスロ条約に123カ国が署名し、110ヵ国が批准しています。

オスロ条約の成立には、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)と同様、世界中のNGOが重要な役割を果たしました。クラスター爆弾廃絶を目指す世界中のNGOのネットワークであるクラスター兵器連合(CMC)が世界各地でキャンペーンを展開し、各国政府はクラスター爆弾の廃絶へ動き出しました。また条約作りにも大きな力を発揮し、その結果、ただの軍縮条約にとどまらない、被害者支援なども盛り込んだ人道的条約が完成しました。

〈クラスター爆弾禁止条約の主な内容〉
・クラスター爆弾の開発、製造、保有、移譲を禁止する
・これまで保有してきたクラスター爆弾を遅くとも8年以内に廃棄処分する
・不発弾となったクラスター爆弾を10年以内に除去する
・被害者に対して、適切な支援を提供する
・条約加盟国である他の国に対しても支援を行う
・未加盟国に対して、条約加盟を働きかける

日本のクラスター爆弾対策

日本は、これまで一度も使用したことはありませんが、クラスター爆弾保有国でした。2008年12月にクラスター爆弾禁止条約に署名し、2009年7月に批准しました。

それまで自衛隊が保有していたクラスター爆弾は2015年2月に廃棄処分が終了しました。日本政府は、条約では規制されない最新式のクラスター爆弾も含めて「今後いかなるクラスター爆弾も導入しない」と明言しました。また、日本政府はクラスター爆弾の被害者への支援を行い、条約未署名の国々に対しては署名を働きかけていくとしています。

2010年、全国銀行協会はクラスター爆弾製造そのものを目的とした銀行融資を禁止しました。一方、2017年5月にクラスター爆弾製造企業への投融資についての調査結果が発表され、日本はオスロ条約の加盟国の中では最も多い4つの金融機関が投融資していることが判明し、金額も加盟国の中で最大でした。2017年12月、すべての金融機関が、目的にかかわらず製造企業への投融資を禁止するよう方針を変更しました。

『クラスター爆弾に関わる日本の課題』
日本はオスロ条約加盟国のため現在はクラスター爆弾を保有していませんが、アメリカはオスロ条約に加盟していません。そのため、在日米軍はクラスター爆弾を保有しています。日本政府は、在日米軍基地は日本の管轄外だとして米軍のクラスター爆弾使用や保有は禁じられていないと発表しています。沖縄では2010年、アメリカ軍がクラスター爆弾の投下訓練をおこなっていることが明らかになりました。

日本政府は安全保障関連法案の議論の中で、法的には自衛隊の後方支援活動として弾薬を運ぶことは可能で、その中にはクラスター爆弾も含まれるとしています。

2017年、国民の年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がクラスター爆弾製造企業の株式を保有していることが明らかになりました。

※オスロ条約の第一条には「この条約によって締約国に対して禁止されている活動を行うことにつき、いずれかの者に対して、援助、奨励し、又は勧誘すること」をおこなってはならないと書かれています。そのため、クラスター爆弾廃絶を目指す世界中のNGOのネットワークであるクラスター兵器連合(CMC)は、クラスター爆弾製造企業への投融資も禁止されていると判断し、投融資をなくすための活動をおこなっています。すでに法律により投融資を禁止した国もあります。


参考: 「Cluster Munition Monitor 2022」 クラスター兵器連合(CMC)発行

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