第40回ピースボート地球一周クルーズレポート
ケープタウン

国名
南アフリカ共和国 (Republic of South Africa)

ことば
公用語は英語。そのほか、ズールー語、コサ語などの各民族のことば、オランダ系白人のことばアフリカーナーなど。  
--解説--
 17世紀末からオランダ系白人が入植を開始。18世紀末からイギリス人勢力が強まり、オランダ系白人(アフリカーナー)勢力と対立。2度にわたる戦争の末、1910年にイギリス領南アフリカ連邦が成立する(1934年独立、61年に英連邦脱退)。第二次世界大戦後、アパルトヘイト(人種隔離政策)を掲げる国民党が与党に。黒人の「ホームランド」への隔離、異人種間婚姻の禁止など、徹底した隔離政策をすすめた。このため、国際社会からの大きな非難を浴び、厳しい経済封鎖を受けたが、日本は貿易関係を続け、「名誉白人」としての扱いを受けた。
 ネルソン・マンデラが議長をつとめるANC(アフリカ民族会議)などの運動を受けて、1994年、ようやく初の全人種参加の総選挙が実施。ネルソン・マンデラを大統領とする「新生南アフリカ」が誕生した。現在は、その跡を継いだムベキ大統領のもと、「多民族共生国家」に向けての国づくりを進めている。いっぽうで、失業率の上昇や都市部での治安悪化も重要課題。

黒人居住区からの熱い風
 アパルトヘイトが廃止されて10年近く。しかしいまも旧「黒人居住区」では、失業率が60%をこえるという厳しい状況だ。しかしそんな中、自分たちの力で地域を活性化していこうという人たちもいる。
 ここでは、カヤリッチャ地区のクラフトマーケット、ニャンガ 地区の若者たちによる「PDP(Peace and Development Project)」を中心に、自分たちの力で地域を活性化していこうという人たちに出会った。いまだ続く「アパルトヘイト」の状況をあらためて知るとともに、旧「黒人居住区」の人たちによる新しい取り組みを見ることで、南アフリカの「可能性」を感じることができる1日になった。

ケープタウン「家」事情
 40年以上続いたアパルトヘイトの時代には、人種ごとに住むところをも決められた。そんな南アフリカ・第二の都市ケープタウンでもそれは同じだ。もともとは白人も黒人も共に暮らしていた町が、政策により強制的に解体された町がある。ここでは、そんな町ディストリック・シックスと、地方から都市に出てきたものの家を持つことができない「ホームレス」のためのNGOを訪問。南アフリカの「住宅事情」から、アパルトヘイトが見えてくる2日間となった。

タウンシップで大交流
 アパルトヘイト時代、ケープタウンで最大の黒人居住区だった「ランガ地区」を訪れ、彼らと大交流。アパルトヘイトが終わって10 年たとうとしている今でも、ここに住むのは黒人ばかりだ。このコースでは、若者を対象としたHIVの啓蒙教育に取り組むNGOが運営す る「ラブライフユースセンター」を訪れ、ここに住む子どもたちとダンスやサッカーを楽しんだ。

「虹の国」南アフリカを目指して
 ネルソン・マンデラ元大統領が「黒人も白人もカラードも、多民族が共存していける ‘虹の国’」と謳った南アフリカ。ケープタウンの港からは美しい街並みがひろがっているが、一方ではまだまだアパルトヘイト政策の傷跡も残されている。私たちは、過去に多くの政治犯が収容され、ネルソン・マンデラ氏も18年間過ごしたというロベン島の刑務所を見学。また、暴力ではなく対話で問題を解決していこうというNGO『正義と和解協会』の取り組みについても話を聞いた。

ナミブの大地をゆく
 ケープタウンでオリビア号から一時離脱。一足先に次の寄港地・ナミビアへ飛び、「世界最古の沙漠」と呼ばれるナミブを満喫するこのコース。世界の中でも人口密度の低い国といわれるナミビアで出会った大自然はあまりに壮大。太陽に照らされ、真っ赤に染まる 砂丘「ソソスフレイ」の幻想的な美しさに感動し、また、厳しい環境で生きる植物や動物の生命力に驚かされる4日間となった。

南アUPAスタディーツアー
 ヨハネスブルクで最大の旧「黒人居住区」ソウェト。ここには、居住区の子どもたちを中心に音楽を教えている「アフリカン・ユース・アンサンブル」という楽団がある。ここは1986年、現在も指導者として活動しているコロワネさんがイギリスから帰国、近所の子 どもたちに音楽を教えたことから始まったものだ。
  昨年もここを訪れたUPA国際協力プロジェクトでは、再び彼らを訪ねてスタディーツアーを遂行、夜は楽団メンバーの家にホームステイをした。今回もここに楽器を届けるとともに、昨年届けたバイオリンやチェロが子どもたちに使われている風景を見ることもできた。

GETチャレンジプログラム
 現地の人と交流することで「生きた」英語を学ぼうという洋上語学トレーニング『GET』。ケープタウンでのチャレンジプログラムは、アパルトヘイトの時代に英語を使用していたカラードのコミュニティーでホームステイするというもの。
 東京出港から1ヶ月あまり。毎日2時間受ける授業で、自分の英語力は向上しているはず。ところがいざ話をしてみると、言葉のなま りがひどく、最初のうちは相手の話していることがほとんど理解できなかった。それでも何度か聞き返したり、筆談をしてみると、「car(カー)」を「コー」、「friends(フレンズ)」を「フリーンズ」と言ったりなど、自分たちが学んでいる英語とは異なった発音をしていることが分かった。あせる。しかし、言葉が多少わからなくても、一緒に歌を歌ったり、折り紙で鶴を折ったり。交流する 手だてはたくさんある。でもやっぱり話したい、でもなかなか話せない。結局、優しいホストファミリーにお世話になりっぱなし。次に来るときには、もうちょっと話せるようになってるかな…。
(飯田俊介)

地球大学・アフリカの未来とHIV
 いま、世界中でもっとも深刻な問題のひとつとなっている「HIV(ヒト免疫不全ウィルス)」。そのほとんどがサハラ以南のアフリカに集中している。中でも南アフリカにおけるHIV/エイズ問題は、「第2のアパルトヘイト問題」と言われるほどに深刻化しているという。
  ここでは、ケニアからここまで「HIV」について学んできた地球大学生たちが、ホスピスやNGOなど関連施設のいくつかを訪問。実際にHIVポジティブ(陽性)の人、また彼らを支援する人に出会い、さまざまな角度から南アのHIV/エイズの現状を肌で感じることができたツアーだった。

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