地球大学・アフリカの未来とHIV
 いま、世界中でもっとも深刻な問題のひとつとなっている「HIV(ヒト免疫不全ウィルス)」。そのほとんどがサハラ以南のアフリカに集中している。中でも南アフリカにおけるHIV/エイズ問題は、「第2のアパルトヘイト問題」と言われるほどに深刻化しているという。
  ここでは、ケニアからここまで「HIV」について学んできた地球大学生たちが、ホスピスやNGOなど関連施設のいくつかを訪問。実際にHIVポジティブ(陽性)の人、また彼らを支援する人に出会い、さまざまな角度から南アのHIV/エイズの現状を肌で感じることができたツアーだった。
 最初に訪問したのはテンバケアセンター。ここは、エイズ末期の子供のみを対象にしたホスピスだ。
  18人の子どもが入ることができるこの施設に、現在入っているのは3人。そのうち1人(2歳)は、回復が進んでいるということで、私たちと会うことができた。しかし、その子の体重は標準の3分の1しかないそうだ。他の2人はガラス越しでしか会えない。1人は片目が見えず、もう1人は鼻からチューブを通されている。もの心つく前からエイズと戦っている子どもたちの姿は、痛々しかった。
 ケープタウン最大の旧「黒人居住区」ランガ。ここには、居住区に住む子どもたちにHIVの予防啓発運動をおこなっている「ラブライフユースセンター」という施設がある。ここでは、HIVポジティブの若者たちと、HIV/エイズについての意見交換をおこなった。
  「自分がHIVであることを受け入れる必要がある」「自分達が南アフリカの将来の担い手なので生きていかなければならない」など、どの人も自信をもって答えていた。そのあまりに明確な答えには、おもわずこちらがたじろぐほどだ。
 HIVポジティブを支援する団体「ウォラナニ」。ここでは、ポジティブの女性ふたりからの話を聞くことができた。
  彼女たちの年齢は33歳と29歳。緊張しているからか、顔色も表情も思わしくない。それでも、私たちの前で「感染することが人生の終わりなのではない。自分と同じような感染者にそれを伝えて、生きる希望を与えていきたい」と話す、彼女たちの前向きな姿には心打たれた。
 こういったさまざまな取り組みがある一方で、HIVポジティブに対する悪いイメージや差別、そういうものがすべてなくなったわけではない。それを取り除くべく活動しているNGO「TAC(Treatment Action Campaign)」を訪問した。
  この団体はHIVポジティブ自身が組織している団体で、エイズ対策に及び腰な政府や製薬会社に対して積極的に抗議活動を展開している。この2月14日にも、大規模な抗議行動をする予定だそうだ。
  他にもいろんなことを聞いて、最後に、この施設のコーディネーター・マンデュラさんはこう熱く語った。「あなたの国で、エイズの人たちのためにデモをサポートしてあげてください。それが途上国の人を救うことにもつながります」。
(宮下拓也)
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