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第10回「旅と平和」エッセイ大賞の授賞式を行いました

第10回「旅と平和」エッセイ大賞の授賞式を行いました
第10回大賞を受賞した三藤紫乃さん
ピースボートは、旅を通じて世界を学び、未来の国際社会をつくる若者たちを応援するために「旅と平和」エッセイ大賞を実施しています。
INFO
第10回大賞を受賞した三藤紫乃さん
ピースボートは、旅を通じて世界を学び、未来の国際社会をつくる若者たちを応援するために「旅と平和」エッセイ大賞を実施しています。
第10回「旅と平和」エッセイ大賞の授賞式を行いました
伊藤千尋さんから表彰状の授与
7月9日には、第10回「旅と平和」エッセイ大賞の表彰式を東京のピースボートセンターで実施しました。大賞を受賞したのは、「Never Again という言葉にどれだけの重みがあるのだろうか」というエッセイを書いた三藤紫乃さんです。

三藤さんには、審査委員の鎌田慧さん(ルポライター)と伊藤千尋さん(ジャーナリスト)より、賞状と花束、そしてピースボート地球一周の船旅・無料乗船券が授与されました。審査委員のお二人からこの作品についてのコメントが発表された後、三藤さんからなぜこの作品を書いたのかというメッセージをいただきました。その内容の一部を紹介いたします。

三藤さんのエッセイは、記事の最後にあるおすすめ記事「第10回エッセイ大賞入賞者発表」からご覧になることができます。また現在、第11回「旅と平和」エッセイ大賞を募集中です(2016年3月締め切り)。ご興味のある方は、同様に「第11回「旅と平和」エッセイ大賞募集」の記事をご覧ください。

鎌田慧さん(ルポライター) 「現場を見る事がどれだけ内実化されて、実践に移されるかが大事」

第10回「旅と平和」エッセイ大賞の授賞式を行いました
鎌田慧さん
アウシュビッツに何度も足を運んだ三藤さんのこだわり方は重要だと思います。現場を訪れる度に違う事を発見していくことに、これからの進化の可能性を期待して大賞に選びました。彼女はエッセイの中で、アウシュビッツのような収容所が他にもたくさんあったのに、アウシュビッツだけが有名になり、それ以外の場所がどんどん忘れられていってしまっている事への懸念についても触れています。それも大切な視点だと思います。

見る事の意味がどれだけ内実化されて実践に移されていくのか、ということは本当に大事なテーマです。彼女はそれをアウシュビッツを何度も見る事でだんだんと考えてきたということになります。これから、ピースボートでの地球一周を通して新たな世界を見て、実践をしていってほしいと期待しています。

伊藤千尋さん(ジャーナリスト) 「聞いたからには、きちんと伝えなければならない」

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伊藤千尋さん
人間は過去にあった嫌な事って忘れたいですよね?俺はベトナムでソンミ村という米軍が虐殺を行った村を訪れたことがあります。そこでは400人が虐殺され、4人が生き残りました。生き残った一人の方から、米軍に襲われた日の話を聞くことができました。

村人を並べていっせいに射撃したとか、赤ん坊を放り投げて銃剣で突き刺すという、本当に残虐な話でした。聞いているだけの自分が、胸がムカムカするような話だったので、証言のあと「よくこんな話をしてくださいました」と尋ねました。するとそのおばさんはこう言ったのです。

「私だって本当は話したくありません。話すためにはその日の事を思い出さないといけないからです。自分の家族や友だちがみんな、残虐な方法で殺されたことを思い返すので、話した日から数日は、夜眠れなくなります。でも私は、世界があの悲惨な出来事を繰り返さないために、勇気を奮い起こして話しています」

記者は、人の嫌な体験を聞き出そうとする傲慢な存在です。語る人にとっては本当につらいことで、そのつらい思いをもう一度させてしまうということなんです。でも一方で、それを伝えないとまた同じことが起きてしまう。俺はそれ以来、大変な思いをした被害者から話を聞く時は、聞いたからには大勢の人にわかってもらうためにきちんと伝える必要がある、と覚悟するようになりました。

エッセイ大賞を受賞した三藤さんには、いろんな討論を船の中で呼び起こす起爆剤になってもらい、ぜひピースボートを盛り上げていって欲しいと思います。

三藤紫乃さん「今の問題と歴史の教訓をつなげる役割を果たしたい」

第10回「旅と平和」エッセイ大賞の授賞式を行いました
三藤紫乃さん
私はポーランドのクラクフという町で、ホロコーストの歴史について学ぶため10ヶ月間留学しました。ポーランドという国は、第二次世界大戦で特に被害を受けた国のひとつです。ユダヤ人だけでなく、ポーランド人やマイノリティの人たちもたくさん殺害されました。そんな国が今、どんな風に戦争やヨーロッパの歴史を考えているのかと考えたのです。

初めてアウシュビッツに行った時は、現実味がないような気がしました。目の前のひどい写真には心が痛いのですが、なんだか距離を取っている自分がいたのです。70年前にホロコーストが起きたんだという事を初めて実感したのは、2015年1月にホロコーストから70周年の式典があった時の事でした。

私は世界中から集まったユダヤ人のための式典に参加しました。そのとき私の隣に座ったのは、南アフリカから来たというほがらかなおじいさんで、「なぜ日本から勉強しに来たの?」といったことを気さくに聞いてくれました。私は「この人はどういうつながりでここに参加しているのかな」と思っていましたが、後でホロコーストで生き延びた方だったことを知り、すごくびっくりしました。

おじいさんは、「昔の事はあまり思い出したくないけれど、君に話したら日本人に伝えてくれるよね」と言って、当時の事を話してくれました。その話を聞いた私は、初めて70年前にここで悲惨なことが行われたんだと実感できるようになりました。そして、この分野をもっと勉強したいと思えるようになったのです。

留学中、政治や経済を学んでいる周りの学生たちから、「今現在、世界ではいろんなことが起きているのに、なんで過去の歴史を学ぶの?」と言われていました。私は、こうした体験を通してなぜ歴史を学ぶかについて改めて考えました。

過去の歴史を学んでいるはずのポーランドだって、今もユダヤ人やいろいろなマイノリティへの差別や偏見があります。もう繰り返さない、Never Againと言っていても、何度も繰り返しているような現実があるのです。だからこそ、私は今の問題と歴史とをつなげる役割をしたいんだなと確認することができました。

今回こういう賞を頂いたことで、友人がエッセイを読み、「何でで紫乃が歴史を勉強しているかがわかった」と言ってくれたのがとても嬉しかったです。船に乗ったら、考えた事をまた誰かに伝えたり行動に移していけるような人間になりたいと思います。ありがとうございました。
第10回「旅と平和」エッセイ大賞の授賞式を行いました

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