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働く子どもたちの権利を守り力を与える ーペルー、リマ

働く子どもたちの権利を守り力を与える ーペルー、リマ
マントックの施設に通う子どもたちの多くが住むサンルイスの街。
ここでは第83回ピースボートで訪れたペルーで行われた交流プログラムの報告をお届けします。
マントックの施設に通う子どもたちの多くが住むサンルイスの街。
ここでは第83回ピースボートで訪れたペルーで行われた交流プログラムの報告をお届けします。
働く子どもたちの権利を守り力を与える ーペルー、リマ
マントックはペルー全土の働くこどもたちの権利を守るために活動している。
2014年5月、第83回ピースボートはペルーのカヤオに寄港し、首都リマ周辺で働きながら生活する子どもたちとの交流プログラム「ペルーの子どもたちの『今』」を実施しました。受け入れてくれたのは、マントック(※)という、現在5000人以上の子どもたちが参加する組織です。世界的には児童労働と言えば、長時間労働や過酷な仕事、そして搾取などにより子どもの人権が奪われることが問題にされています。そのため、児童労働を禁止にしていこうという流れがあるのはたしかです。しかしこのマントックの活動がユニークな理由は、単に児童労働を禁止しようとするものではないということです。

「私たちの活動の目的は、児童労働をなくすことではありません。ペルーでは、多くの子どもたちが働かなければならない状況にあることを、私たちは直視する必要があるのです。この現実をふまえ、働く子どもたちが、権利と教育を得るために十分なサポートを受けられるよう活動しているのがマントックです」。マントックのスタッフはこのように説明してくれました。
働く子どもたちの権利を守り力を与える ーペルー、リマ
マントックのメンバーであるクリスティーナ(9歳)は、地域の子どもたちに壁画コンテストに参加するよう呼びかけた。
マントックは、働かざるを得ない子どもたちが、低賃金で長時間の労働をさせられるなど、不当な扱いを受けていることを知ったドイツ人のアロイス・アイヘンラウプ神父が、1976年に設立した組織です。当時のペルーは、軍事政権が労働組合の結成や活動を禁止し、深刻な経済危機と多量の失業者が発生していた時期でした。そんな中で神父は、働く子どもたちの権利を守り、労働状況の改善のために人生を捧げることを決意したのです。

交流プログラムの参加者は、10代から60代までの約30人で、団体の施設を訪れ、子どもたちとともに食事をしたり、壁画を描いて過ごしました。そして路上に出て一緒に物販に同行するなど、子どもたちが置かれた厳しい状況とたくましさを体感することになったのです。
働く子どもたちの権利を守り力を与える ーペルー、リマ
サンルイス周辺の地域で、地域の子どもたちと一緒に壁画にペンキを塗る。
今回のプログラムで訪れた施設には、70人ほどの子どもが通っています。年齢にもよりますが、子どもたちは週に3日から7日働き、一日平均10ドルの収入を得て家計を助けています。マントックの地域代表としてピースボート参加者に団体の説明をしてくれたのは、13歳の少女ニコルです。彼女は家族で経営する小さなお店を手伝い、兄弟の面倒を見ながら、学校にも通っています。ニコルは言います。「この施設では、様々な機会を提供しています。お金がなくて学校に行けない子どもたちのための教育プログラムや、放課後のアクティビティなどもあります。この施設は、私たちにとって第二の家のようなもの。外の現実から切り離された安全な場所なのです」。

ピースボートの参加者はこの日、子どもたちと一緒に壁画にペンキで色を塗る作業をしました。壁画のデザインは、地域に住む子どもたちから男女平等をテーマに集めたコンテストの入賞作です。このコンテストは、マントックの「子どもたちによる子どもたちのために運営される組織」という理念にあわせて、メンバーが地域の家をまわり、参加を呼びかけたものです。マントックのスタッフであるファビオさんは、「子どもたち自身にプロジェクトを企画し運営する力を与えているのです。皆さんが今ペンキを塗ってくださっているこの壁画が、私たちのメッセージを届け、このコミュニティの人たちを勇気づけてくれると信じています」と話してくれました。
働く子どもたちの権利を守り力を与える ーペルー、リマ
子どもたちの仕事を体験するために一緒に通りを歩く。
壁画づくりの後、参加者は子どもたちとともに昼食を楽しみました。子どもたちは、月曜日から土曜日には昼食を食べに施設に集まります。子どもによってはその日唯一の食事になることもあるため、お米、豆と野菜が中心の栄養価が高いものが作られます。値段は約40円程度で、店で食べたり家でつくるよりも低価格です。この昼食は、マントックのメンバー以外にも開かれています。昼食にはルールがあります。子どもたちは出されたものを残さず食べ、お皿を自分で洗い、食後は施設に置いている歯ブラシを使って歯を磨くのです。これも責任感や自立心を養うという理念に基づくものです。

プログラムの最後に、参加者が少人数のグループに分かれ、子どもたちが普段している物販を体験しました。街に出て、ポップコーンや氷、果物などを売る体験をするのです。熱気あふれるマーケットで、行き交う人々が物を売ったり買ったりする日々の風景。その中で、子どもたちは必死に生きていました。参加者は、貧しさという現実と向き合い働く子どもたちに触れて、マントックの活動意義を肌で感じる機会となりました。
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最後にピースボート参加者とマントックのみんなで集合写真。
この交流プログラムをコーディネートしたピースボートのスタッフは言います。「初めてここを訪れた時、子どもたちが政治や歴史、そして人権について学んでいる姿を見て驚きました。マントックは、自分の権利について理解し、責任ある市民になれるように子どもたちに学びの場、自信をつける機会を提供しています。子どもたちはここで成長することができるのです。多くの日本からの参加者にとって、日本の生活からこんなにかけ離れた暮らしを体験するのはこれが初めてだったのではないでしょうか。このプログラムを通じて自分たちの『当たり前』の日常が、実は『当たり前』ではないと気づくきっかけになるよう願っています」。

※マントックとは

MANTHOCは「Movimiento de Adolescentes y Niños Trabajadores Hijos de Obreros Cristianos」略称で、「キリスト教労働者の子弟たち、および働 く子どもたちの運動」という意味。