集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲に強く抗議します
集団的自衛権の行使を容認する7月1日の閣議決定に対して、ピースボートとグローバル9条キャンペーンは7月14日、以下のような国際アピールを発表し(原文は英語)、広く世界と日本の人々と政府に対して呼びかけを行いました。
- プロジェクト: グローバル9条キャンペーン
INFO
2014.7.14
2020.9.15
集団的自衛権の行使を容認する7月1日の閣議決定に対して、ピースボートとグローバル9条キャンペーンは7月14日、以下のような国際アピールを発表し(原文は英語)、広く世界と日本の人々と政府に対して呼びかけを行いました。
ピースボートとグローバル9条キャンペーンの国際アピール
日本の平和憲法を救え!
憲法9条を骨抜きにする解釈変更に強く抗議します
安倍晋三首相が率いる日本政府は7月1日、戦争放棄を掲げる憲法9条に関してこれまでの政府が確立してきた解釈を変更する閣議決定を強行しました。これによって、日本の武力行使に関する制限は緩和され、集団的自衛権の行使が容認されることになりました。
憲法9条は、日本が戦争を放棄し、国際紛争を解決する手段として武力を行使することを禁止した有名な平和条項です。第二次世界大戦後に作られたこの憲法9条は、日本が自らに向けた誓いであると同時に、世界の国々への誓いでもあります。とりわけ、日本の侵略と植民地支配に苦しんだ近隣諸国に対して、日本が過ちを二度と繰り返さないという決意を表明したものでありました。憲法9条はこれまで地域的また国際的な平和メカニズムとして広く受け入れられ、東北アジアの平和と安定の維持に大きく寄与し、また、平和や軍縮、持続可能性を促進していく法的枠組みとしての役割も果たしてきました。今年、憲法9条がノーベル平和賞にノミネートされましたが、これは、平和を創り出すツールとしての憲法9条の重要性が称えられていることの表れといえます。
軍国主義への歩みを進める安倍首相
今回の閣議決定は、安倍政権が新たに打ち出した「積極的平和主義」という名の下で進められている、右翼的、歴史修正主義的、軍国主義的な政策の一部です。安倍首相が唱えている「戦後レジームからの脱却」というスローガンにも示されるように、地域また世界における日本の安保・軍事態勢を強めようという姿勢がみられます。安倍首相はこの数カ月間に、防衛計画の大綱の改定や防衛予算の増大、長く維持されてきた武器輸出の解禁をはじめとして、日本が長い間守り続けてきた平和政策を覆すような決定を次々と通してきました。さらに安倍政権は政府開発援助(ODA)大綱を見直し、これまで大綱が禁じてきた軍への支援についても容認しようとする考えです。これもまた、日本がこれまで長くとってきた平和志向の姿勢から逆行するものです。
危機にさらされる日本の立憲主義と民主主義
これらの一連の動きは、日本における「政治的クーデター」ともいえるものです。安倍政権は、過去数十年にわたって政権が一貫して維持してきた憲法解釈を覆しただけでなく、その手法は、国民投票を必要とするとする憲法改正の民主的な適正手続きを無視したものでした。数々の世論調査は、国民の大多数が今回の憲法解釈の変更の内容と手続きを支持できないと考えていることを示しており、国民の意思が踏みにじられているといわざるを得ません。
ただし今回の閣議決定は、象徴的にはきわめて大きな意味を持つものですが、この決定にはいまだ法的な実効力はありません。憲法解釈が変更されたとはいえ、その内容が現実に実施されるためには、10本を超える関連法がいまだに障壁となっています。これらの法律の改正が国会で承認されない限りは、実行に移すことはできません。安倍政権の閣議決定に対して強い反対を唱えてきた日本の人々が、今後の法整備の過程を監視し、憲法9条が掲げる平和原則を侵害する形で法律が改定されることがないようにすることが、日本の民主主義にとって不可欠です。
危ぶまれる東北アジアの平和
憲法9条は地域的には、アジア太平洋地域の集団的安全保障の礎としての役割を果たしてきました。
今日の東北アジアでは、とりわけ日本、中国、および朝鮮半島の間で、領土問題や歴史認識問題、核兵器開発をめぐる緊張関係が顕著になっています。また、この地域は依然として冷戦構造から脱却できずにおり、ナショナリズムが台頭しています。このような地域の現状を考えると、日本の憲法9条の解釈に変更を加えることは、ただでさえ脆弱な地域の平和をさらに不安定なものにしかねません。
集団的自衛権の行使容認は、今年後半に予定されている日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定と連なる、日米安保協力強化の重要な要素です。日本は中国に対する抑止力として米国政府がめざす「アジア回帰」により深く関与しようとしていますが、そのような動きは地域の敵対関係を深刻化させ、中国をより警戒させることになります。
中国や韓国は、「慰安婦」問題に関する発言や靖国神社への公式参拝など、歴史や和解の問題に関する日本政府の挑発的な態度によって、すでに日本に対する警戒心を強めていましたが、今回の閣議決定に対し厳しい反応を示しており、地域への悪影響は明らかです。この状況がさらに悪化し制御を失い、軍拡競争を引き起こし、実際の衝突へとつながるのを防ぐことは、今もっとも緊急を要する事項です。
ピースボートとグローバル9条キャンペーンは、過去に幾度となく破壊的な結果をもたらしてきたナショナリズムと歴史修正主義、軍国主義が台頭していることを危惧し、
●7月1日の閣議決定を通して憲法の解釈を根本的に変え、9条を骨抜きにし、抑制的だった日本の防衛政策を大きく転換しようとする安倍首相の一連の動きを強く非難します。
●現在日本で起きていることは民主主義の根本的な否定であり、日本の国内外から非難されるべきものであることを指摘するとともに、日本政府が憲法を尊重し、今後の関連法手続きにおいて国民の参画を完全に保証することを求めます。
●日本と世界の人々に対して平和な日本への誓約を維持するよう呼びかけ、日本が「戦争のできる国」になり近隣諸国をはじめとする世界の人々から脅威とみなされるようなことに反対します。
●国際的な平和メカニズムとしての日本国憲法への誇りを改めて表明します。「積極的平和主義」の本来の意味とは軍縮や紛争の非軍事的な手段による解決--対話、調停、予防措置--を進めることであり、私たちはこれらを通して憲法9条の原則を実現していく決意があります。
●日本における安倍政権の閣議決定に対する大規模な抗議の動きを歓迎し、これを応援します。日本の軍事力や軍事活動への制限を緩和するために法律を緩和させようという動きに対して、日本の市民社会がこれを止めるために活動し、日本が平和への誓約を強化していくことを求めます。
●この閣議決定が地域の平和と安定に与えうる影響を懸念し、日本、地域、そして世界の人々に以下のことを呼びかけます。
・地域における緊張関係や挑発、ナショナリズムの高まりが互いに悪影響をもたらし続けるという負のサイクルに終止符を打つこと。
・東アジア諸国間の和解と紛争予防のための対話と相互理解を推進すること。
・信頼を醸成し、東北アジアの平和のためのメカニズムを構築する努力を行うこと。
日本の平和憲法を救え!
憲法9条を骨抜きにする解釈変更に強く抗議します
安倍晋三首相が率いる日本政府は7月1日、戦争放棄を掲げる憲法9条に関してこれまでの政府が確立してきた解釈を変更する閣議決定を強行しました。これによって、日本の武力行使に関する制限は緩和され、集団的自衛権の行使が容認されることになりました。
憲法9条は、日本が戦争を放棄し、国際紛争を解決する手段として武力を行使することを禁止した有名な平和条項です。第二次世界大戦後に作られたこの憲法9条は、日本が自らに向けた誓いであると同時に、世界の国々への誓いでもあります。とりわけ、日本の侵略と植民地支配に苦しんだ近隣諸国に対して、日本が過ちを二度と繰り返さないという決意を表明したものでありました。憲法9条はこれまで地域的また国際的な平和メカニズムとして広く受け入れられ、東北アジアの平和と安定の維持に大きく寄与し、また、平和や軍縮、持続可能性を促進していく法的枠組みとしての役割も果たしてきました。今年、憲法9条がノーベル平和賞にノミネートされましたが、これは、平和を創り出すツールとしての憲法9条の重要性が称えられていることの表れといえます。
軍国主義への歩みを進める安倍首相
今回の閣議決定は、安倍政権が新たに打ち出した「積極的平和主義」という名の下で進められている、右翼的、歴史修正主義的、軍国主義的な政策の一部です。安倍首相が唱えている「戦後レジームからの脱却」というスローガンにも示されるように、地域また世界における日本の安保・軍事態勢を強めようという姿勢がみられます。安倍首相はこの数カ月間に、防衛計画の大綱の改定や防衛予算の増大、長く維持されてきた武器輸出の解禁をはじめとして、日本が長い間守り続けてきた平和政策を覆すような決定を次々と通してきました。さらに安倍政権は政府開発援助(ODA)大綱を見直し、これまで大綱が禁じてきた軍への支援についても容認しようとする考えです。これもまた、日本がこれまで長くとってきた平和志向の姿勢から逆行するものです。
危機にさらされる日本の立憲主義と民主主義
これらの一連の動きは、日本における「政治的クーデター」ともいえるものです。安倍政権は、過去数十年にわたって政権が一貫して維持してきた憲法解釈を覆しただけでなく、その手法は、国民投票を必要とするとする憲法改正の民主的な適正手続きを無視したものでした。数々の世論調査は、国民の大多数が今回の憲法解釈の変更の内容と手続きを支持できないと考えていることを示しており、国民の意思が踏みにじられているといわざるを得ません。
ただし今回の閣議決定は、象徴的にはきわめて大きな意味を持つものですが、この決定にはいまだ法的な実効力はありません。憲法解釈が変更されたとはいえ、その内容が現実に実施されるためには、10本を超える関連法がいまだに障壁となっています。これらの法律の改正が国会で承認されない限りは、実行に移すことはできません。安倍政権の閣議決定に対して強い反対を唱えてきた日本の人々が、今後の法整備の過程を監視し、憲法9条が掲げる平和原則を侵害する形で法律が改定されることがないようにすることが、日本の民主主義にとって不可欠です。
危ぶまれる東北アジアの平和
憲法9条は地域的には、アジア太平洋地域の集団的安全保障の礎としての役割を果たしてきました。
今日の東北アジアでは、とりわけ日本、中国、および朝鮮半島の間で、領土問題や歴史認識問題、核兵器開発をめぐる緊張関係が顕著になっています。また、この地域は依然として冷戦構造から脱却できずにおり、ナショナリズムが台頭しています。このような地域の現状を考えると、日本の憲法9条の解釈に変更を加えることは、ただでさえ脆弱な地域の平和をさらに不安定なものにしかねません。
集団的自衛権の行使容認は、今年後半に予定されている日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定と連なる、日米安保協力強化の重要な要素です。日本は中国に対する抑止力として米国政府がめざす「アジア回帰」により深く関与しようとしていますが、そのような動きは地域の敵対関係を深刻化させ、中国をより警戒させることになります。
中国や韓国は、「慰安婦」問題に関する発言や靖国神社への公式参拝など、歴史や和解の問題に関する日本政府の挑発的な態度によって、すでに日本に対する警戒心を強めていましたが、今回の閣議決定に対し厳しい反応を示しており、地域への悪影響は明らかです。この状況がさらに悪化し制御を失い、軍拡競争を引き起こし、実際の衝突へとつながるのを防ぐことは、今もっとも緊急を要する事項です。
ピースボートとグローバル9条キャンペーンは、過去に幾度となく破壊的な結果をもたらしてきたナショナリズムと歴史修正主義、軍国主義が台頭していることを危惧し、
●7月1日の閣議決定を通して憲法の解釈を根本的に変え、9条を骨抜きにし、抑制的だった日本の防衛政策を大きく転換しようとする安倍首相の一連の動きを強く非難します。
●現在日本で起きていることは民主主義の根本的な否定であり、日本の国内外から非難されるべきものであることを指摘するとともに、日本政府が憲法を尊重し、今後の関連法手続きにおいて国民の参画を完全に保証することを求めます。
●日本と世界の人々に対して平和な日本への誓約を維持するよう呼びかけ、日本が「戦争のできる国」になり近隣諸国をはじめとする世界の人々から脅威とみなされるようなことに反対します。
●国際的な平和メカニズムとしての日本国憲法への誇りを改めて表明します。「積極的平和主義」の本来の意味とは軍縮や紛争の非軍事的な手段による解決--対話、調停、予防措置--を進めることであり、私たちはこれらを通して憲法9条の原則を実現していく決意があります。
●日本における安倍政権の閣議決定に対する大規模な抗議の動きを歓迎し、これを応援します。日本の軍事力や軍事活動への制限を緩和するために法律を緩和させようという動きに対して、日本の市民社会がこれを止めるために活動し、日本が平和への誓約を強化していくことを求めます。
●この閣議決定が地域の平和と安定に与えうる影響を懸念し、日本、地域、そして世界の人々に以下のことを呼びかけます。
・地域における緊張関係や挑発、ナショナリズムの高まりが互いに悪影響をもたらし続けるという負のサイクルに終止符を打つこと。
・東アジア諸国間の和解と紛争予防のための対話と相互理解を推進すること。
・信頼を醸成し、東北アジアの平和のためのメカニズムを構築する努力を行うこと。