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南アフリカ HIV/AIDSとの闘いー冨田沓子さん、ドゥドゥジレ・ンカビンデさんが挑む

南アフリカ HIV/AIDSとの闘いー冨田沓子さん、ドゥドゥジレ・ンカビンデさんが挑む
冨田さんとンカビンデさん、ボランティア通訳(CC)、冨田さんたちと活動したピースボートスタッフと一緒に。
ここでは、第90回ピースボート地球一周の船旅に乗船した水先案内人、冨田沓子さんとドゥドゥジレ・ンカビンデさんの様子をご紹介します。お二人は、日本国際ボランティアセンター(JVC)の南アフリカ・プロジェクトのメンバーです。
冨田さんとンカビンデさん、ボランティア通訳(CC)、冨田さんたちと活動したピースボートスタッフと一緒に。
ここでは、第90回ピースボート地球一周の船旅に乗船した水先案内人、冨田沓子さんとドゥドゥジレ・ンカビンデさんの様子をご紹介します。お二人は、日本国際ボランティアセンター(JVC)の南アフリカ・プロジェクトのメンバーです。

南アフリカとJVC

南アフリカ HIV/AIDSとの闘いー冨田沓子さん、ドゥドゥジレ・ンカビンデさんが挑む
冨田沓子さん
推定人口5500万人の11.2%に当たる620万人がHIVに感染しているー10人に1人以上という世界最悪のHIV感染率は、南アフリカ共和国の政府の統計により発表されており、世界最大の感染率です。

ピースボート第90回地球一周の船旅の船内では、ケープタウン寄港を前に、南アフリカに置けるHIVの現状とNGOによる対策活動についての講座が開かれました。お話いただいたのは日本国際ボランティアセンター(JVC)南アフリカプロジェクトのマネージャ冨田沓コーディネータのドゥドゥジレ・ンカビンデさんです。

お二人は、国の北側に位置するリンポポ州でHIV/AIDSに関するプロジェクトに携わっています。1980年に設立されたJVCは、「本当に効果的なプロジェクト」を目指した活動を、アジア、アフリカ、中東などで展開してきた日本のNGOです。
南アフリカ HIV/AIDSとの闘いー冨田沓子さん、ドゥドゥジレ・ンカビンデさんが挑む
ドゥドゥジレ・ンカビンデさん
米国での大学生時代から積極的にNGO活動に関わってきた冨田さんは、卒業後、インドとトーゴで地元NGO団体を通して児童労働問題に取り組みました。その後、東アフリカにおける地域開発プロジェクトの責任者、2010年からはアムネスティ・インターナショナルのアドバイザーとして団体の活動に携わり、2012年から現職である日本国際ボランティアセンター(JVC)の南アフリカ・プロジェクトマネジャーとして、現地でHIVの予防と対策に力を注いでいます。

ンカビンデさんは南アフリカの北東部出身で、1988年からJVCの現地オフィスで働きはじめ、地元のプロジェクトに関わり続けて17年間活動しています。

HIV/AIDSとのたたかい

南アフリカ HIV/AIDSとの闘いー冨田沓子さん、ドゥドゥジレ・ンカビンデさんが挑む
冨田さんは船内でファシリテーションの講座を行い、参加者たちの好評を得ています。
冨田さんは講座の中で、「世界のHIV感染者の5人に1人は南アフリカの人。毎日600人以上がAIDSによって命を落としています。2004年に抗レトロウィルス薬の認可が下りたことで、HIV患者も長く健康に生きることができるようになりましたが、すぐに命にかかわる病気と比べて自覚症状がないため、HIVにはより多くの対策が必要です」と語ります。

現在、南アフリカには世界最大のHIV対策プログラムがあり、200万人以上の人々が抗レトロウィルス薬で命を長らえています。政府は20代以下のHIV感染を2030年までに撲滅することを目標としていますが、プログラムの拡大のための資金と感染者の治療の徹底が課題となっています。

感染予防、感染者へのケア、政府への強い政策提言を通して、南アフリカのHIV/AIDS対策活動を牽引してきたのはNGOによる草の根活動によるところが大きいといえます。南アフリカは現在、「新興国」として経済発展を続けているため、国内外からの活動への補助金額が減っています。そんな状況の中で、JVCのようなNGOによる活動はさらに重要性を増しています。

ンカビンデさんは、「特に私たちが活動しているような地方では大事です。地域によってはHIVに未だに関心を持たない人々もいます。彼らにとって現実味がなく、自分たちには起こり得ないと考えているのです」と指摘します。「情報、無料のコンドーム、そしてHIVテストなどは手に入りやすくなりましたが、人々の考え方を変えるのは難しいのです」。

HIV感染者支援をサポート

南アフリカ HIV/AIDSとの闘いー冨田沓子さん、ドゥドゥジレ・ンカビンデさんが挑む
ンカビンデさんは教会の合唱団の一員。参加者に対し、自国の歌を披露してくれました
2012年、JVCは個人参加型のHIV予防と感染者支援プログラムを開始しました。HIV感染者の在宅支援をする人々に対するトレーニングです。

「支援者は時に孤立します。トレーニングでは支援者たちには、患者の家を日常的に訪問し、治療に専念するように指導しています。また母子感染を防ぐために妊婦に対して情報を提供したり、妊娠初期にHIVテストを行うことを勧めたりしています」と冨田さんは説明します。

JVCでは、HIV感染者の生活も支援しています。例えば、抗レトロウイルス薬の服用を続けるには、健康な食生活が欠かせないため、自宅での野菜栽培の指導を行っています。

数年にわたる活動とJVCのような団体の助けもあって、南アフリカの状況は改善されつつあります。人々はより長く生きるようになり、AIDSによって引き起こされる病気での死者数も減りました。2006年の平均寿命は53歳だったのに対し、2013年には62.2歳になっています。

しかしながら、こうした進歩にもかかわらずHIV感染者に対する汚名や差別が未だにはびこっています。

冨田さんは根深い問題も指摘しました。「汚名と差別はAIDSそのもののように致命的で、パートナーや家族から見放されたり、社会的に追放されたり、仕事や財産を失ったり、暴力につながったりします。こうした恐れから、人々がHIVテストを受けることをためらったり、自らがHIV感染者であることを隠したり、HIV治療やケア、支援を拒んだりすることにつながっているのです」。