ピースボート第41回クルーズからの提言書「核兵器のない平和な東北アジアをめざして」
ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下から58周年を迎えるにあたり、私たちは、日本人および朝鮮・韓国人など犠牲となった数十万人に思いをいたし、核兵器の非人道性をあらためて認識するとともに、核兵器の全面廃絶という私たちの誓約を再確認するものです。
同時に私たちは、日本政府が、かつて植民地支配した国々の人々に対して完全な謝罪と十分な補償をおこなっていないということを確認するものです。東北ア ジアの人々は、植民地支配後の和解を達成できておらず、冷戦によって植え付けられた敵対関係という時代遅れの構造のなかにいまだに暮らしているのです。
そしていま、東北アジアの平和と安全保障は、危機に立たされています。2000年6月の南北朝鮮首脳会談および2002年9月の日朝首脳会談は前向きな 成果を残しましたが、米国が朝鮮民主主義人民共和国(以下、「北朝鮮」)の核兵器計画を告発したことなどに端を発して、地域の安全保障は危機になかにあり ます。
現在の危機は、東北アジアにおいて冷戦的な関係が継続しているという現実の反映であります。私たちが現在の危機を解決しようと努力することは、同時に、 真の和解を達成し、この地域における冷戦を終結させるための取り組みでもあります。その意味で、私たちは、核兵器のない平和な東北アジアを実現するという 誓約を再確認いたします。
私たちは、ピースボート第41回地球一周クルーズにおいて、リスボンからニューヨークまでのあいだ、核兵器のない平和な東北アジアを実現するための方法 について議論を重ねてきました。私たちは、下記の内容を、関係諸国政府、国連、そしてこの地域および国際的な市民社会に対して提言いたします。
1. 私たちは、すべての関係諸国が、現在の朝鮮半島をめぐる危機を平和的に解決するという目標をもって、即時に交渉を開始することを呼びかけます。
● 交渉において米国は、北朝鮮に対して、先制攻撃や、軍事威嚇または経済封鎖といった強 圧的な措置をとらないということを誓約すべきです。すべての国家の主権は公正に尊重されるべきであり、北朝鮮の政権を外側から力で転覆するような戦略、威 嚇または言明といったものは放棄されなくてはなりません。米国はまた、核不拡散条約(NPT)の下での消極的安全保障の誓約を再確認するべきです。それは すなわち、米国が、非核兵器国に対して核兵器の威嚇や使用をおこなわないと保証することであります。
● 同時に北朝鮮は、いかなる核兵器計画をも放棄するという意思を明確に表明すべきです。 北朝鮮は、疑惑のもたれている計画に関するあらゆる情報を公開するとともに、核施設を国際原子力機関(IAEA)による国際査察の下に置くことに合意し、 他の検証制度を受け入れるべきです。そして、北朝鮮はNPTに復帰すべきです。
2. 私たちは、日本および韓国の現在の政策が、平和の追求を困難にしているという現実を憂慮するものです。両国政府は、平和的解決と、持続可能な地域安全保障の枠組みを築き上げることを明確に誓約すべきです。
● 日本は、問題を対話で解決するという意思を明確にすべきです。日本は、2002年9月 17日の日朝平壌宣言に基づいて、国交正常化交渉をすすめるべきです。私たちは、最近の有事法制や、イラクにおける米英占領軍司令下への派兵の決定などに みられるように、日本が米国との軍事協力を著しく強化させていることを深く憂慮します。このような政策は、日本の平和憲法を改訂するという動きとともに、 地域の緊張を高めることにつながっています。
● 韓国政府は平和的解決を呼びかけてはいますが、その平和への誓約は不十分なものです。 私たちは、韓国がイラク戦争に支持を表明し、イラクに派兵をおこなったことを遺憾に思います。イラク戦争支持は朝鮮半島の核危機の平和的解決をもたらすの だという韓国政府の主張とは裏腹に、地域の状況は現実に悪化しています。韓国政府は軍事予算を増加させるとともに、地域における米国の軍事能力を高める政 策をとっています。こうした政策は、韓国の「平和繁栄政策」という公約と矛盾するものであります。
● 私たちは、日韓両政府に対して、東北アジアへのミサイル防衛システム導入を放棄するこ とを求めます。ミサイル防衛導入は、地域における新たな軍拡競争を引き起こすことになります。また、ミサイル防衛導入によって、米国による北朝鮮への先制 攻撃という選択肢の可能性が高まり、朝鮮半島の戦争の危険はエスカレートしていきます。
3. 私たちは、差別的でなく、持続可能で、人間の観点に立ったオルタナティブな地域安全保障の枠組みを築き上げることを呼びかけます。
● 私たちは、東北アジアにおいて非核地帯を設立することを呼びかけます。
日本、韓国、北朝鮮の3カ国は、1992年の南北朝鮮非核化宣言および日本の非核三原則に基づいて、公正かつ効果的な検証を伴う地域の非核化のための交渉 を開始すべきです。米国、中国、ロシアの3核兵器国は、この交渉に参加し、非核地帯の加盟国に法的拘束力のある安全の保証を提供すべきです。
● 私たちは、日米および韓米の安全保障諸協定を、地域の軍縮を促進するために改訂することを呼びかけます。
この地域における米軍のいかなる再配置も、軍隊の削減と地域の安定に貢献する形でおこなわれるものでなくてはなりません。
この地域における米軍基地の存在は、数多くの人権侵害や深刻な環境汚染をもたらしてきました。これらをなくすために、日韓両国において米国とのあいだの地位協定(SOFA)の改訂がおこなわれるべきです。
● 私たちは、共通のビジョンを追求するとともに、持続可能で人間の観点に立った地域安全保障のための共通の枠組みをつくりだすことを決意します。
この地域の国会議員は、地域の平和と安全保障に関する地域レベルの議論に参加することが求められています。
持続可能で人間の観点に立った地域安全保障のシステムを作り上げるためには、飢餓状態や、人権侵害や、政府による犯罪行為といったものに立ち向かい、これ らをなくすことが必要になります。しかしながら、戦争をおこなったり経済制裁を科したりすることは、人権侵害をなくすことにはならず、被害者を増やし人道 上の状況を悪化させることにしかなりません。
これら取り組みすべてにおいて、日本および韓国の市民運動がとりわけ主導的役割を担うべきです。同時に私たちは、中国や北朝鮮の市民との協力も追求していきます。
4. 私たちは、東北アジアの平和と安全保障を促進するために、国連、とりわけ国連総会および軍縮会議が不可欠の役割を果たすべきだと考えます。
● 国連は、朝鮮半島における休戦協定を包括的な平和条約に置き換えるとともに、米朝および日朝の国交正常化を達成するための外交プロセスを開始させることによって、東北アジアにおける冷戦構造を解体するための特別の役割を果たすべきです。
● 国連は、核兵器の全面廃絶を達成するという見通しの下で、NPT体制を強化するための 努力を強めるべきです。私たちは、NPT第6条を核兵器国が履行することの重要性を強調します。こうした意味において、私たちは、2005年にニューヨー クで開催されるNPT再検討会議の重要性に注目します。
● 私たちは、ラテンアメリカ、南太平洋、東南アジア、アフリカといった諸地域において、 非核地帯が平和と安定の維持に重要な貢献をしていると認識しています。私たちは、国連事務総長に対して、東北アジア非核地帯の設立に向けた地域的イニシア ティブを促進させるために尽力されることを要請いたします。交渉開始のための会議を主催することは、そのための適切な第一歩となるでしょう。その場合、 ピースボートは、洋上において会議場所を提供したいと考えます。
署名者(50音順)
天野文子(平和活動家、58年前広島での被爆経験を持つ/日本)
チョン・ウクシク(韓半島平和ネットワーク/韓国)
河辺一郎(愛知大学/日本)
パク・チョンウン(参与連帯・平和軍縮センター/韓国)
キム・ヘオク(立命館大学/日本・韓国)
フィリス・ベニス(政策研究所(IPS)/米国)
ピースボート(日本)
川崎哲(日本)
野平晋作共同代表/日本)
ポール・メイソン(オーストラリア)
2003年8月6日
そしていま、東北アジアの平和と安全保障は、危機に立たされています。2000年6月の南北朝鮮首脳会談および2002年9月の日朝首脳会談は前向きな 成果を残しましたが、米国が朝鮮民主主義人民共和国(以下、「北朝鮮」)の核兵器計画を告発したことなどに端を発して、地域の安全保障は危機になかにあり ます。
現在の危機は、東北アジアにおいて冷戦的な関係が継続しているという現実の反映であります。私たちが現在の危機を解決しようと努力することは、同時に、 真の和解を達成し、この地域における冷戦を終結させるための取り組みでもあります。その意味で、私たちは、核兵器のない平和な東北アジアを実現するという 誓約を再確認いたします。
私たちは、ピースボート第41回地球一周クルーズにおいて、リスボンからニューヨークまでのあいだ、核兵器のない平和な東北アジアを実現するための方法 について議論を重ねてきました。私たちは、下記の内容を、関係諸国政府、国連、そしてこの地域および国際的な市民社会に対して提言いたします。
1. 私たちは、すべての関係諸国が、現在の朝鮮半島をめぐる危機を平和的に解決するという目標をもって、即時に交渉を開始することを呼びかけます。
● 交渉において米国は、北朝鮮に対して、先制攻撃や、軍事威嚇または経済封鎖といった強 圧的な措置をとらないということを誓約すべきです。すべての国家の主権は公正に尊重されるべきであり、北朝鮮の政権を外側から力で転覆するような戦略、威 嚇または言明といったものは放棄されなくてはなりません。米国はまた、核不拡散条約(NPT)の下での消極的安全保障の誓約を再確認するべきです。それは すなわち、米国が、非核兵器国に対して核兵器の威嚇や使用をおこなわないと保証することであります。
● 同時に北朝鮮は、いかなる核兵器計画をも放棄するという意思を明確に表明すべきです。 北朝鮮は、疑惑のもたれている計画に関するあらゆる情報を公開するとともに、核施設を国際原子力機関(IAEA)による国際査察の下に置くことに合意し、 他の検証制度を受け入れるべきです。そして、北朝鮮はNPTに復帰すべきです。
2. 私たちは、日本および韓国の現在の政策が、平和の追求を困難にしているという現実を憂慮するものです。両国政府は、平和的解決と、持続可能な地域安全保障の枠組みを築き上げることを明確に誓約すべきです。
● 日本は、問題を対話で解決するという意思を明確にすべきです。日本は、2002年9月 17日の日朝平壌宣言に基づいて、国交正常化交渉をすすめるべきです。私たちは、最近の有事法制や、イラクにおける米英占領軍司令下への派兵の決定などに みられるように、日本が米国との軍事協力を著しく強化させていることを深く憂慮します。このような政策は、日本の平和憲法を改訂するという動きとともに、 地域の緊張を高めることにつながっています。
● 韓国政府は平和的解決を呼びかけてはいますが、その平和への誓約は不十分なものです。 私たちは、韓国がイラク戦争に支持を表明し、イラクに派兵をおこなったことを遺憾に思います。イラク戦争支持は朝鮮半島の核危機の平和的解決をもたらすの だという韓国政府の主張とは裏腹に、地域の状況は現実に悪化しています。韓国政府は軍事予算を増加させるとともに、地域における米国の軍事能力を高める政 策をとっています。こうした政策は、韓国の「平和繁栄政策」という公約と矛盾するものであります。
● 私たちは、日韓両政府に対して、東北アジアへのミサイル防衛システム導入を放棄するこ とを求めます。ミサイル防衛導入は、地域における新たな軍拡競争を引き起こすことになります。また、ミサイル防衛導入によって、米国による北朝鮮への先制 攻撃という選択肢の可能性が高まり、朝鮮半島の戦争の危険はエスカレートしていきます。
3. 私たちは、差別的でなく、持続可能で、人間の観点に立ったオルタナティブな地域安全保障の枠組みを築き上げることを呼びかけます。
● 私たちは、東北アジアにおいて非核地帯を設立することを呼びかけます。
日本、韓国、北朝鮮の3カ国は、1992年の南北朝鮮非核化宣言および日本の非核三原則に基づいて、公正かつ効果的な検証を伴う地域の非核化のための交渉 を開始すべきです。米国、中国、ロシアの3核兵器国は、この交渉に参加し、非核地帯の加盟国に法的拘束力のある安全の保証を提供すべきです。
● 私たちは、日米および韓米の安全保障諸協定を、地域の軍縮を促進するために改訂することを呼びかけます。
この地域における米軍のいかなる再配置も、軍隊の削減と地域の安定に貢献する形でおこなわれるものでなくてはなりません。
この地域における米軍基地の存在は、数多くの人権侵害や深刻な環境汚染をもたらしてきました。これらをなくすために、日韓両国において米国とのあいだの地位協定(SOFA)の改訂がおこなわれるべきです。
● 私たちは、共通のビジョンを追求するとともに、持続可能で人間の観点に立った地域安全保障のための共通の枠組みをつくりだすことを決意します。
この地域の国会議員は、地域の平和と安全保障に関する地域レベルの議論に参加することが求められています。
持続可能で人間の観点に立った地域安全保障のシステムを作り上げるためには、飢餓状態や、人権侵害や、政府による犯罪行為といったものに立ち向かい、これ らをなくすことが必要になります。しかしながら、戦争をおこなったり経済制裁を科したりすることは、人権侵害をなくすことにはならず、被害者を増やし人道 上の状況を悪化させることにしかなりません。
これら取り組みすべてにおいて、日本および韓国の市民運動がとりわけ主導的役割を担うべきです。同時に私たちは、中国や北朝鮮の市民との協力も追求していきます。
4. 私たちは、東北アジアの平和と安全保障を促進するために、国連、とりわけ国連総会および軍縮会議が不可欠の役割を果たすべきだと考えます。
● 国連は、朝鮮半島における休戦協定を包括的な平和条約に置き換えるとともに、米朝および日朝の国交正常化を達成するための外交プロセスを開始させることによって、東北アジアにおける冷戦構造を解体するための特別の役割を果たすべきです。
● 国連は、核兵器の全面廃絶を達成するという見通しの下で、NPT体制を強化するための 努力を強めるべきです。私たちは、NPT第6条を核兵器国が履行することの重要性を強調します。こうした意味において、私たちは、2005年にニューヨー クで開催されるNPT再検討会議の重要性に注目します。
● 私たちは、ラテンアメリカ、南太平洋、東南アジア、アフリカといった諸地域において、 非核地帯が平和と安定の維持に重要な貢献をしていると認識しています。私たちは、国連事務総長に対して、東北アジア非核地帯の設立に向けた地域的イニシア ティブを促進させるために尽力されることを要請いたします。交渉開始のための会議を主催することは、そのための適切な第一歩となるでしょう。その場合、 ピースボートは、洋上において会議場所を提供したいと考えます。
署名者(50音順)
天野文子(平和活動家、58年前広島での被爆経験を持つ/日本)
チョン・ウクシク(韓半島平和ネットワーク/韓国)
河辺一郎(愛知大学/日本)
パク・チョンウン(参与連帯・平和軍縮センター/韓国)
キム・ヘオク(立命館大学/日本・韓国)
フィリス・ベニス(政策研究所(IPS)/米国)
ピースボート(日本)
川崎哲(日本)
野平晋作共同代表/日本)
ポール・メイソン(オーストラリア)
2003年8月6日