●ベトナム学生交流●

暑い!!厦門とは気温差はどのくらいあるのだろう。突然の暑い日差しに、思わず目を細める。船を下りると、既にベトナミン達の人なっつこい笑顔が待っていた。学生交流コースということで、今日から2日間、彼らと行動を共にするのだ。受入先はピースボートが初寄港した94年からお世話になっている、ダナン青年連盟。文字どおりダナンの青年たちの集まりで、大学生が主ではあるが、高校生や既に働いている人もいる。

 多くのベトナム人に人なつっこい笑顔に囲まれて、日本人はたじたじ。日本人は本当にこういうことに慣れていないのだなと思う。誰もがどうしたらいいのか分からない、といったあやしげな笑顔。それでもぎこちなく日越の交流は始まった。
 まずは船からダナンのメインストリートまでバスで移動。既に各日本人に対してベトナム人がひとりづつ隣に座っている。しかし、突然に始まった国際交流。お互い、ぎこちない笑顔。一体どうすればいいのだろう。英語もお互いがなまっているせいで、何を話しているのか聞き取りにくく、人見知りしない私もためらってしまう。

 私の隣に座ったのは真っ白なアオザイに身を包んだ美しい女性。見れば見るほど、ほっそりとした美人だ。名前はハーという。いくつか(それでも)お互いに質問したが、なかなか意思が通じない。どうしようと困惑していると、胸元に先ほどハーがかけてくれたベトナム語の歌詞カードが。楽譜が書いてあったので、それを見ながら私がメロディーを歌うと、ハーがにっこり笑って歌詞を教えてくれた。

「・・・ベトナーム ホー・チー・ミン  ベトナーム ホー・チー・ミン・・・」  何と、ベトナム独立の英雄、ホー・チ・ミンを称える歌なのだ。さすが社会主義国というべきか。彼女たちはにこにこと笑いながら(まるで今はやっている歌かのように)手で拍子を取りながら、私たちに教えてくれる。歌いやすいので私たちも一緒になって歌った。バス中にホー・チ・ミンの名が響き渡る。バスを降りてフェスティバル会場についてもその歌声が止むことはなかった。

 ダナンの青年連盟が私たちの為にに催してくれたフェスティバルが終わると、既にお昼時。用意してくれた私のテーブルに、ずらり私以外はベトナム人。私のご飯茶碗の中に次々と(いろんな人が)いろんなものを入れてくれる。「ベトナムは世界一おいしい!!」とのウワサどおり、いけてる!!味は繊細で、日本人向け。また、ニョクマム(魚醤)をかけると何とも風味があっておいしい。

 すっかりお腹が一杯になると、10人づつくらいのグループに別れて、町を案内してくれることになった。ハーが50CCのバイクに私を乗せてくれる。この町では車は非常に少なく、多くの人々の足はバイクか自転車だ。それも、2・3人は後ろに乗っている。あとはシクロという、ベトナム名物の人力車。おじさんが一生懸命、こいでくれる。ホーチミン(サイゴン)や、ハノイではシクロは禁止されてしまったというが、まだまだここ、ダナンでは大切な人々の足。これがあるおかげで、ベトナムっぽさが一段と感じられるのだ。心地よい風が、私の体をなでてゆく。

 それにしても美しいのは、ベトナミンのアオザイ姿。体のラインにぴったりと縫われた美しい布は、ベトナム女性をさらに美しくさせる。女の私でさえ、口を開けて見とれてしまうのだ。私もぜひ、ベトナムに行ったら一着仕上げようと以前から考えていたのだが、ハーや、道ゆくアオザイ姿を見ていると、あまりの美しさに買うのをためらってしまう。アオザイ姿でさっそうと自転車に乗っている彼女たちは、何だかとても素敵だった。

 夜はビーチに移動してキャンプファイヤー。ビーチに行くと、ドーム型のテントが群れをなしている。なかなかお目にかかれない、素敵な風景。今夜はこのテントで眠るのだ。キャンプファイヤーの前にテントに荷を下ろし、ハーと寝っ転がる。目を閉じて深呼吸をすると、波の穏やかな音や、やしの木の葉が風に揺られている音がする。気がつくと2人でうたたねをしていたようで、キャンプファイヤー開始の声が遠くから聞こえた。もうすっかり、あたりは闇につつまれていた。

 青年連盟あげての大歓迎キャンプファイヤー。準備に何ヶ月もかかったであろう、凝った演出にうれしくなった。私たちが来るのを心待ちにしていたという、みんなの暖かい心に胸がつまった。美しいたいまつが人を、海辺を、心を照らす。

 遠くから日本人が来る。そのことにこんなに大歓迎してくれるとは思わなかった。正直、日本人はあまり性格も良くないし(これは偏見だろうけど・・・、今回の交流の様子を見ていても平気でわがままを言うバカが多くて、頭にきた)ぎこちない笑顔でとっつきにくいので、ひそかに嫌われているのではと思っていた。そんなことを考えさせる時間さえ与えず、疲れているだろうに常に私たちを楽しませてくれようとする、彼らのホストぶりには脱帽した。純粋で、いつも笑顔の彼ら。いつしか私は彼らが大好きになっていた。

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