犠牲の上に成立しているアジア経済
韓国企業の海外進出が本格的に始まったのが、90年代。アジアに進出した企業が、様 々な労使問題を引きおこしているはきいていたが、直接、現地の労働者と話をするの
は初めてだった。 実際に話を聞いて思ったのは、70−80年代の韓国労働者と同じ境遇におかれてい るということだ。特に輸出自由地域で働く労働者には、労働基本権が十分保障されず
、劣悪な労働条件―低賃金、長時間、高強度労働―を強いられていた。また政府は労 働者を保護するのではなく、成長最優先で労働者を抑圧する側にあった。
アジアはダイナミックな成長地帯とよく言われるが、成長が人権をないがしろにし、 その犠牲の上に成立している。日本か始まったアジアの経済成長は、韓国・台湾など
ASIA−NIESへ、そして次はASEAN、中国へと連鎖的に進んでいる。それ に伴って、いわゆる劣悪な労働環境も、連鎖的に進んでいるのだ。フィリピンで劣悪
な労働条件の企業が、1位台湾、2位韓国というのも、そういう所からうなづける。 70年代には1位は日本だった。成長の連鎖は、人権抑圧の連鎖でもあるのだ。
私たちに問われているのは、人権抑圧を必然的に伴う成長の連鎖に対抗する労働者、 市民の連鎖、連帯だと切に実感した。
金 弘樹
|