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あなたが持っている物で一番大切なものは何ですか?
 7月13日、バルセロナから乗船された水先案内人・計良光範さんの講座から。船内で「アイヌ」や「サーメ」など先住民族についての講座を開いてきた計良さん、今回のテーマは「あなたが持っている物で一番大切なものは何ですか?」
 これまでの講座でも計良さんは、「文化は生活と一体のもの。生活が変化すれば文化も同じように変化していくものです。変化しなくなった文化は、死んだ文化。アイヌの文化は今も変わりつつあるのです」と話してきた。
 今回は、写真を使いながらアイヌの文化(料理、住居、衣装、文学、彫刻など)がアイヌの人びとの生活・生き方・アイデンティティーにどれだけ根ざしていかを紹介。そうしたアイヌ文化の中でも特に"人間にとって大切"とされているものは"名前"だという計良さん。
 伝統的な『カムイノミ』という儀式では、神さまに願い事をするとき、自分のことをわかってもらうために、5代前の先祖の名前まで呼ぶという。これは同時に"自分の名前が100年先まで呼ばれるような人間になりなさい"という教訓でもあるのだそうだ。しかし、現代化に伴い、こうした文化も「こころ」が不在になり"神・人・もの"とのつながりが希薄になってきているという現状も伝えられた。
人々の声が世界を変える
 次の寄港地・ニューヨークでは、7月18日から国連本部で「GPPAC(国際紛争予防会議)」が開催される。ニューヨーク寄港を4日後に控えた今日、船内では、水先案内人の河辺一郎さんと馬奈木厳太郎さんをゲストに迎え、「人々の声が世界を変える〜GPPACってなんだ?〜」が行われた。
 GPPACについて、国際情勢に詳しい河辺さんは「冷戦後10年間、世界ではイラクのクウェート侵攻やイラク戦争など、軍事的な動きがありました。その一方で92年の地球環境会議、翌年の世界人権会議など、市民の声が実を結んだ非軍事的な動きもあり、GPPACはそのひとつの結集点なのです」と語り、また、GPPAC JAPANの実行委員長でもある馬奈木さんは、「この会議は、紛争予防の点で課題が多いとされる東北アジアで、各国NGOや研究者が一堂に会し話し合った点、解決へ向けてネットワークを築けた点、何かができると確信をもてた点、などにおいてとても画期的です」と語った。
 他にも「日本は市民社会なのか?」「市民は無力なのか?」といった議論も行われ、参加者からは「国際情勢や国連で議論されていることは難しくて興味をもてなかったけれど、ひとりひとりの声が世界を変えてきた現実があることを知って、まずは関心をもつようにしたいと思った」という声もあがった。

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