チェンナイ先遣報告
 インド南部・タミルナードゥ州の州都、チェンナイ。なんだか耳慣れない名前ですが、最近まで「マドラス」と呼ばれていた都市…といったほうがわかりやすいかも。いまは540万もの人口を抱え、南インドのリーダー的存在になりました。けれどその一方、いわゆる「インド文化」を色濃く残していたりもします。でっかいビルとオートリキシャ(自動三輪車)、ヒンドゥー教寺院とキリスト教教会――根づよい伝統と最先端技術をあわせもった街、チェンナイ。そんな街の魅力を、先遣スタッフ・小野倫子が紹介します。
 タクシーの中から夕暮れ時の街を撮ってみました。超有名企業の看板がたくさん立ってますよね。こんな風景を見ると、チェンナイが「南インドにおける経済的なリーダー」といわれるのもわかります。道路にはオートバイやタクシー、トラック、いろんな車がごちゃまぜになって走ってました。しかしここで注目すべきは「車線」です。私が見る限り、この道路は本来「二車線」のはず……なんですけどね(笑)。
 前の写真にあるオレンジ色の車が、コレ。インドに来る誰もが、一度はこの自動三輪車「オートリキシャ」にお世話になるはず。窓がないから、自然の風が入ってくるのが最高に気持ちいい!気になるお値段は…うーん、10ルピー(約40円)くらいかな?乗る前にはかならず、運転手さんと値段交渉してくださいね。
 これは、街中にあるヒンドゥー教寺院のゴープラム(塔門)。屋根には、ヒンドゥー教のいろんな神様や動物がひとつひとつ彫られているんですね。よーく見ると表情もちゃんとあって、その細かさにはホントに驚かされます。
 特に南インドは、イスラム教などの影響を受けていない、いわゆる「純粋なインド文化」が残っているところ。民族的にも、あのインダス文明を築いたといわれるドラヴィダ族の末裔が多いんだそうです。けれどその一方で、ヒンドゥー教は、あの絶対的な階級制度「カースト」をつくったものでもあります。チェンナイのような大都市でも、カースト制の影響がゼロではないんです。
 これは「コーラム」といって、お米の粉で描いた紋様。この家ではお客さまを歓迎しますよ、という意味があります。かつては毎朝毎朝、玄関前にこれを描くのがチェンナイ女性のお仕事だったそうです。さすがに現在は、特別なお客さまが来る時しかやらないようですが――でも、とってもキレイですよね。
 ここはキリスト教の「サン・トメ教会」。よく見ると、イエス・キリスト像の足元にあるのは蓮の花、そして両脇にはクジャク。うーん、これをインド人らしいおおらかさというべきか、はたまた何でも自分たちの文化にしてしまう強引さというべきか…。その判断は、見る人におまかせします。
 チェンナイから60キロぐらい離れたリゾート、マハーバリプラムでは、たくさんの遺跡が見られます。これは「パンチャ・ラタ(5つの寺院)」という寺院のひとつ。実は、これはひとつの岩から掘り出された大きな大きな「彫刻」なんです。寺院の横に立ってる人間の大きさと比べてみてください。そのすごさがおわかりいただけるかと…。彫刻そのものだけでなく、長い年月を経て風化しつつある岩の丸みも、なんともいえず美しいんですね。これらの遺跡群を訪ねるツアーもつくる予定です。
 写真の「筒」は、お豆とお米の粉をカリカリに焼いたクレープにジャガイモのスパイス煮を巻き込んだ「マサラ・ドーサ」。最近、日本でもよく耳にする「マサラ」とは、植物からつくられたスパイスのこと。インドではとってもポピュラーな味つけです。辛いモノが苦手な人にはちょっとツライかもしれませんが、インドの暑さにはこの辛さが何故かぴったり合うんですよね。しかし、こんな長いモノをどう食べたのか――それは、現地に行ってからのお楽しみ、です。
 白い布に描かれているのは「リンガ」といって、ヒンドゥー教の破壊神・シヴァを象徴する形。そして描かれているのは、南インドで有名な「映画スター」の似顔絵です。
 映画があれば「スター」が生まれ、スターがいれば「ファンクラブ」ができるのはインドも日本と同じ。人気の高い俳優さんの中には、自分のファンになってくれた人に「社会的活動」にも目を向けてもらおうと取り組んでいる方々もいます。似顔絵の彼もそのひとり。たとえば彼が「献血」や「寄付」などを呼びかけると、多くのファンがそれに応えてくれるのだそうです。
 最近、日本でも人気のあるインド映画。ここは『フィルム・シティ』というインド版「映画村」。私たちが訪れたときは撮影の真っ最中でした。南インドでは映画そのものだけでなく、映画にまつわる副産業もさかんです。特に映画館の前に立てる大きな看板を描く、という仕事は人気が高いそう。ちなみに、一緒に先遣に行ったインド出身のスタッフは「たいていの日本人にとっては、インド映画というとやっぱり『ムトゥ・踊るマハラジャ』なんだよね」という私の説明に、いたくショックを受けてました(笑)。インド映画にもいろいろあるんですよ、ホントに。
 20以上の州があり、かつそれぞれに「公用語」を持っている広ーいインド。隣州に住む人の言葉がわからない、なんて当たり前のこと。そんなインドでも「貧富の差」の広がりが問題になってます。たとえば、都会に住んで高等教育を受けている「豊かな」人だけがインターネットを駆使し、英語で話すことができる。そのような状況では、経済的に豊かでない地域にはなかなか情報が伝わらない、ということになってしまいがち。そんな情報の「格差」を埋めていこうと、パソコンを利用したテレビ電話を使って情報を発信・交信していこうという取り組みもおこなわれています。インドは、アジアの中でもとりわけこういった市民活動がさかんな国でもあるんですね。
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