「モンバサ」テロ事件に関するピースボート声明
  ピースボートは、卑劣きわまりないテロ行為を断じて認めません。そして、このようなテロに対する「報復」としての軍事行動も同様に認めるわけにはいきません。なぜなら、私たちピースボートは、世界の紛争地や紛争後の各地をめぐってきた経験から、あらゆる紛争は、その地域でもっとも貧しい者、もっとも弱い立場にある者が、いちばん大きな被害を受けるということを知っているからです。また、イスラエル、パレスチナ、アフガニスタン、北朝鮮、そしてケニア…。世界中にはテロを容認しない多くの人々が暮らしていることを知っているからです。また、ニューヨークでテロ被害に遭った被害者の遺族の中にも、「(世界中で)新たな悲しみを生み出すことに反対する」人がいることを知ったからでもあります。
 さらに、私たち日本に暮らす市民、もしくは有権者たちは法治国家の国民として、国家の憲法を守る義務を持っています。行政府と立法府に対して、国民との約束事である憲法を守らせる権利を持っています。その日本国憲法は、『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』と明確に、武力行動を否定しているのです。以上のような観点から、私たちは、市民社会を脅かすテロ行為にも、それに対する武力での解決にも強く反対します。  また、いままさに進行しているアメリカ主導による、イラクへの武力攻撃に対して、日本政府が「強い支持」を表明し、さらには「超法規的に」自衛隊をペルシャ湾へ、、もしくは中東の大地へ派兵することにも強い憂慮の気持ちを表明せざるを得ません。
 私たちは、テロ行為による新たな被害者を生まない世界を構築するためにも、これまで以上に意義ある船旅を続けていきます。顔と顔の見える関係を国境や政府間の利害関係を越えて、無限に増やしていくことこそ私たちの使命だと考えるからです。
 そして、私たちピースボートの船は、現在、アフリカ大陸東岸のインド洋をケニアのモンバサ港へと向かっています。ここには、500名の日本人をはじめ、アメリカ人、イギリス人、ケニア人など16国籍の参加者がつどっています。これより、11月28日にテロが起きたケニアに向かうにあたって、テロと報復の両方に与しないメッセージを、世界に向けて洋上から発信していきます。そしてモンバサで起きたテロ事件の犠牲者の方々に追悼の意を表すと同時に、このような悲劇が美しいサバンナの大地で起こらないことを願います。
 そして、ピースボートは、テロのない世界を創り出すためにも、以下のことを改めてアピールします。 <十項目のアピール>  私たちはテロのない世界を築くために世界の市民、NGO、各国政府、国連のそれぞれが以下の目的を実現するため、最大限の努力をすることを呼びかけます。

1.
国連中心に各国協力によるテロ実行犯の捜査及び逮捕と公正なる審判
2.
米国政府及びその同盟国政府への報復攻撃、いわゆる「新しい戦争」の回避
3.
テロによる犠牲者、難民、戦争避難民など紛争によるあらゆる犠牲者対する十分な人道的援助と人権の確実な保護
4.
あらゆる紛争及び難民問題、特にパレスチナ問題の早期解決
5.
経済のグローバリゼーションがもたらす南北の経済格差の是正
6.
あらゆる人種差別、民族差別、性差別の撤廃
7.
平和教育、直接交流、相互理解、信頼醸造、共通の歴史認識の構築による安全保障の構築
8.
地雷および核兵器廃絶および不使用と軍備撤廃を目標とした包括的軍縮の推進
9.
戦争と軍備の放棄という日本国憲法九条理念の各国での受け入れと実現
10.
地球環境保護の徹底と持続可能な社会の構築

私たちは、暴力ではなく対話を、新しい戦争ではなく新しい世界を求めます。
                                      
2002年12月26日ピースボート有志
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