南極オーバーランドツアー
その厳しい自然環境ゆえに、人間の生活からは遠く離れた場所、南極。最も標高が高い大陸で、どの国にも属さない。文字通り「南を極める」というように今回の南回りクルーズのハイライトでもある、「平和の象徴」南極の地を訪れた。
ブラジルのリオデジャネイロから一時オリビア号を離れ空路アルゼンチンはウシュアイアへ。
そこに待っていたのは南極への客船ポーラスター号。3500トンの赤く小さな船体はとてもかわいらしい。大小さまざまな荷物を手に、参加者87人は一路南へと出航した。
「世界で最も荒れる海」ドレーク海峡を越えて、それまでの揺れが収 まると、水平線の向こうに小さな島影が。
そっちのほうへどん どん進んでいくと、写真やテレビで見たのと同じ姿をした氷河が、視界に入りきらないほどの迫力で目に飛び込んできた。
船内にはエクスペディションリーダーと呼ばれる、ツアーガイドスタッフが7〜8人乗船していて、航海中には講座などを開いてくれる。
この日の講座はペンギンとアザラシの生態について。予備知識はこれでバッチリ。
大陸のほとんどが氷に覆われている南極だが、夏を迎えた今は、ときに地面が露出している場所も。
船を沖に停泊させて、ゾディアックというゴムボートでそんな場所へ上陸する。参加者の中には、 これで7大陸制覇の快挙を成し遂げたというツワモノもいた。
氷がなくて上陸できるような場所というのは、それと同時に生物が過ごしやすい場所でもあるということ。つまり上陸したらすぐそこには、私たちを歓迎してくれる動物たちがいるということだ。
ちなみにこちらはヒゲペンギン。何百羽という単位でコロニーを形成している。
南極の生物はほとんど人間を知らない。それは今まで人との接触がなかったり、しっかりと保護されたりしてきたためだという。
それだけに、人間を恐れるということもほとんどない。ジェンツーペンギンもまさにそれで、油断していると好奇心旺盛にヨタヨタと近づいてきて器用なクチバシで靴ひもをほどかれてしまう。
上陸地の一つであるデセプション島はカルデラ状の島で、浜辺をスコップで掘ると地熱で温められたお湯が湧いてくる。
遠く絶景を温泉気分で眺めた。ふと見ると、なんと寒中水泳を楽しむ人の姿も。
ペンギンほど愛嬌もないし、ずーっと動かずじっとしてるアザラシたち。
でもよーく見てみると何とも言えない幸せそうな顔をしているんですよ。
この「南の果て」で誕生日を迎えた人たちが4人もいた。
「南極でのハッピーバースデーなんてうらやましい!」という声。まさに一生に一度あるかないかの、良い思い出となったはず。
潮を吹くのが見えるたびに大きな歓声が上がる。
それを2,3度繰り返したあと、ついに大きなクジラがしっぽを見せた。このザトウクジラはかつて10万頭もいたというが、捕鯨がさかんだった時代の被害を受け、今では3000頭を超えることはないという。
(前井孝亮)
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