7月2・3日  ▼ボスニア・ヘルツェゴビナへ
トルコ人によって建てられた、どこか異国風の景観が魅力的な、ボスニア・ヘルツェゴビナの中心都市モスタル。ボスニア内戦時に、最激戦地となって破壊された街だ。至る所に内戦の傷跡が残るこの街を歩き、平和活動をしているNGOを訪ね、民族対立の状況を探った。2日目はオレンジ色の屋根に白い壁の建物が続くドブロブニクの旧市街散策へ。2日間で旧ユーゴ2つの国をわたるという贅沢なコースとなった。
クロアチアからモスタルへ向かう海岸線は、どの瞬間も絵はがきになるような絶景。
モスタルの「モス」は「橋」という意味。モスタルの街には、絵本に出てくるような美しい川に架かる橋が7つあったが、内戦により6つが壊されてしまった。
イタリアのオペラ歌手のパパロッチが創立したミュージックセンターへ。このセンターは子供や若者を対象につくられ、内戦で心に傷を負った子供に対して、音楽療法やワークショップ、ダンスレッスンなどをおこなっている。若者や子供に自分の居場所を与えるとともに、宗教や民族は関係なく集う場所として重要な役割を果たしているという。
モスタルの街並みには、いまだ内戦の跡が色濃く残り、家々の壁にはおびただしい数の銃弾の跡が残っていた。自分たちが生きている、今のこの時代にあったできごとは思えない光景だ。
真っ青な空の下には、砲弾で破壊された家々が並ぶ。
2つのグループに分かれて、それぞれ現地NGOを訪問した。
ひとつは「Mladi Most」。日本語で「新しい橋」という意味のこのNGOは、内戦終結間際の1994年に設立された。
ボスニア・ヘルツェゴビナでは、経済状況の悪さから7割もの若者が国を出たいと思っているという。そのような状況を変えていこうと、Mladi Mostは、非暴力による紛争解決を目指して、若者を対象とした非暴力トレーニング、若い女性の自立に向けてのワークショップ、映画や写真の技術を教えるプロジェクトなどを進めている。
そしてもう1つは、女性の経済的・社会的自立を支援するFORMA-FというNGO。ここでは、コンピューターや語学のトレーニング、大学教授による経済学の講座や、女性が自分でビジネスを始めるための教育などをおこなっている。地元の女性政治家との話し合いの場を設けて、政治や選挙により関心を持ってもらうようなプログラムもあるという。
2日目は、大理石で作られた家並みが美しいドブロブニク旧市街を観光した。
旧市街の家々の屋根。この美しい色のコントラストは皮肉にも内戦で壊された家のところだけが修復されたばかりで新しいために生まれたものなのだそう。
(鈴木亜紀子・森由香)
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