7月30日  ▼エコロジーな社会から地球へ向けて
急速な復興開発による大気汚染が問題となりつつあるエルサルバドル。国際的に評価の高い環境NGO「CESTA」の人たちと共に、「環境に優しい移動手段」である自転車でサンサルバドルの街中をサイクリング。CESTAの本部であるエコロジーセンターの訪問や、密漁で絶滅の危機にあるウミガメの保護プロジェクトの視察、有機農法の村の訪問など、盛りだくさんのコースだった。
首都サンサルバドルに向かうバスの中では、国際的な環境NGO「地球の友」の代表であり、「CESTA」の代表でもあるリカルド・ナバロさんがお話ししてくれた。
「皆さんが寄港したアカフトラは工業港です。つい最近『CESTA』では、ある企業に対して裁判を起こしました。その企業は有害物質が入ったドラム缶を放置していたのですが、それが地面にしみこみ、村人たちが病気になるということがあったからです。
裁判では企業から賠償を勝ちとりましたが、その後、法律が変わり、公害での裁判ができなくなってしまいました。企業が賄賂をつかって、政府を操ったのです。」
「CESTA」のメンバーと一緒にサイクリング。「CESTA」では、環境に優しい乗り物として自転車を推奨している。彼らと一緒に町中を自転車で走って、自転車の利用をアピール。
サイクリングの途中で通った、土砂崩れの起こった場所。元々この場所は地盤がゆるく、危険なことは分かっていたのに、企業はかまわずにどんどん宅地を建築していったという。脇にある家は、建築するときに『ここは地盤がゆるいのでちょっとずらした方がいい』と言われて少しだけずらした為に助かったという。
「1月に起こった大地震によって、エルサルバドルは首都圏を中心に甚大な被害を受けました。そして、この災害は実は、政府の無謀な宅地開発による人災なのです。『CESTA』では、『企業の利益のみを追求した宅地開発は危ない』と、政府に言い続けてきました。」
サンサルバドルの中心街を自転車で走る。至る所に警備員がいて、彼らはいつでも銃が撃てるように、常に銃に手をかけていた。実は私たちのこのツアーも警察官が常に警備をしてくれているのだ。エルサルバドルでは現在、地震に飢饉もかさなり、治安が非常に悪くなっているという。
「14家族」と呼ばれる、スペイン支配時代からの旧支配層の流れをくむ富豪たちの支配に反し、国内の不平等を訴えて貧困層に支持された大司教、オスカル・ロメロ。内戦中、暗殺者によって殺された彼の墓を訪れた。お墓には、聖書の文句を引用し「巨木は立ったままではただの一つの木だが、倒れると、たくさんの木を養うことができる」と書き込まれていた。
「CESTA」の本部、エコロジーセンター。センター内部はまるで自転車工場。ここでは環境問題に関して、様々なワークショップが開かれている。アメリカのNGO「進歩のためのペダル」から、余った自転車をもらい、それらを修理する技術を子どもたちに無料で講習している。子どもたちはここで学んだ技術を彼らの村に持ち帰り、その技術を広めながら生活費を稼ぐという。
パラボラアンテナのようにステンレスの板を丸めて太陽光線を集め、その熱で中心にある鍋を温めるソーラーキッチン。エコロジーセンターでは、このほかにも3輪自転車を使ったタクシーや、竹を使ったドーム型の家など、環境に考慮した生活用品の実験をおこなっている。トルーカ海岸に行き、ウミガメの保護プロジェクトを視察。この海岸にはウミガメの卵を獲るためにやってく
トルーカ海岸に行き、ウミガメの保護プロジェクトを視察。この海岸にはウミガメの卵を獲るためにやってくる人たちがいるという。中には怖がって逃げるウミガメを殺して卵を獲る人もいるという。彼らの意識を変えていき、ウミガメを保護することが彼らの生活にもつながることを教えていくことも、このプロジェクトの大きな役割だ。この日は1匹のウミガメが産卵にやってきていたが、偶然居合わせた地元の写真家がウミガメに向かってフラッシュをたいたため、おびえて卵を産まずに逃げていってしまった。
「CESTA」と共同で有機農法をおこなっている「チャペルナル村」を訪問。うっそうと茂る森のような畑には有機農法で作ったバナナやヤシ、各種薬草などが生えていた。バナナやヤシの実ジュースをごちそうになる。いつも食べているものとは違い、甘くおいしかった。
農村にあったトイレ。糞尿を有機肥料と混ぜることで肥料を作る。このほかにもカカオの実や鶏糞を利用した肥料、何層にも砂や小石を積めることで作られた水の浄化装置などを見せてもらった。
(森一成)
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