Life Onboard

『ケープタウン(南アフリカ)寄港 -南アフリカでサッカー交流-』
1月28日(木)
オセアニック号は、南アフリカ・ケープタウンに寄港。入港する私たちを迎えてくれたのは、ケープタウンの街の背後にそびえる、テーブルマウンテンです。山頂に雲を抱くテーブルマウンテンの美しい姿を、たくさんの参加者がデッキから見つめていました。
港周辺のウォーターフロント。まるでヨーロッパの街並みのような景色が広がります。「こんなに近代的な街が迎えてくれるのは、ちょっと予想外…」なんて声も。同じように感じた方も多かったようです。しかし、このキレイな街並みが南アフリカの「一面」でしかないことに、すぐに気付かされることに。
南アフリカの若者たちとサッカー交流をする交流プログラムへ出発。まず訪れたのは「グリーンポイントスタジアム」。先日1/23にこけら落としの試合が行われたばかりのスタジアム、もちろん、今年開催の南アW杯でも使用されます。このプログラム、サッカー好きが多く参加しているだけに、間近に見るスタジアムに興味津々。「W杯の開催中にまた来たい…」ホントにそうですよね。
次に訪れたのはディストリクト・シックス地区の博物館。この地区はかつて肌の色に関係なく様々な人種の人たちが暮らしていた場所。しかし、アパルトヘイトの下、1966年に「白人地域」に指定され、約6万人もの「カラード」たちが強制移住させられます。博物館には、様々な人が暮らしていたかつての様子や、アパルトヘイトが人々の生活に与えた影響が展示されていました。
そして、このコミュニティの人々に根ざしていたスポーツがサッカー。アパルトヘイト時代は、異人種間のプレイが禁止されていたこと、アパルトヘイトへの国際社会の非難から、国際大会への参加が拒否されていたことなどを伺いました。アパルトヘイトがスポーツの世界にも暗い影を落とし、多くのアスリートの夢を壊したことに、ショックを受けた参加者も多かったよう。
いよいよお待ちかねのサッカー交流です。対戦相手となるのは「SAHSS(South African Homeless Street Sccer Association)」のサポートする地元チーム。SAHSSは、貧困などの理由から「ホームレス」として暮らさざるを得ない人々をサッカーを通じてサポートしています。チームメンバーには「ホームレスワールドカップ()」に南アフリカ代表として出場したファイーク選手もいるとあって、相手としては「めちゃくちゃ強かった…」(交流試合参加者談)。試合結果?想像にお任せします…。
ホームレスワールドカップ:「A BALL CAN CHANGE THE WORLD(ひとつのボールが世界を変える)」を合い言葉にホームレスとして暮らさざるを得ない人々を世界から無くそうと活動してる。ホームレスや、社会から取り残された人々から代表チームを作り、年に1度、国際的なサッカートーナメントを開催。これまでに70ヶ国から3万人以上が参加した。2009年のミラノ大会には日本からも初参加。「野武士ジャパン」の愛称で知られている。大会出場者の73%がその後新しい人生を歩み始めるなど、就職・教育復帰などへの高い効果が注目を集めている。
参考:野武士ジャパンHomeless World Cup(英語)
ホームレスワールドカップに出場したファイークさん。「貧しさからギャングになった僕の人生を、一つのボールが大きく変えてくれたんです」と語ります。たかがサッカー、されどサッカー。スポーツが自身の人生を変え、国の未来を築く希望になる――ファイークさんの言葉は、参加者のみならず、その場に集まっていたこの地区に暮らす子どもたちにも強く響いたよう。
交流試合の後、ピースボートから、日本で集めたサッカーボールをはじめとするサッカー用品を渡します。ボールを受け取った女の子、カメラを向けると素敵な笑顔を見せてくれました。
ボール以外にも、サッカー用のスパイク、ユニフォームなどをおくりました。こうした用具から、未来のサッカープレイヤーが生まれるかもしれません。
W杯の開催で、注目を集める南アフリカ。しかし、なかなかこうした活動や、スポーツに未来を託す人々について語られることはありません。今回の南アフリカ訪問は、参加者ひとりひとりにとって、メディアが通じるものとはまた異なる南アフリカを知り、スポーツの可能性を体験するきっかけとなったのではないでしょうか。