2012年6月20〜22日、ブラジルのリオデジャネイロにて国連持続可能な開発会議(リオ+20)が開催されました。会議では、「持続可能な開発」の実現に向けて各国が緊急に行動することが決意されたものの、その定義、有効な施策や指標などの具体性には全く欠けており、市民社会の大きな失望と反発を招きました。ピースボートはこの会議の閉幕にあたり、こうした世界の市民社会の声に同調しつつ、特に以下の点を強調します。
- 福島および原発に関する言及の欠如
ピースボートは、人類や地球環境の未来がかかったこの重要な会議で行われる議論に、2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原発のメルトダウン事故の経験を活かすことが日本の果たすべき大きな役割の一つと考え、福島の声を届ける代表団を派遣しました。また、この会議においてこのたびの教訓を踏まえた議論を主導することを、日本政府に繰り返し求めてきました。
国連会議と平行して開催されたピープルズ・サミットなど市民同士の対話の場においては福島の問題への関心は高く、こうした事故がブラジルをはじめ他のどの国でも起きる可能性があるという認識を共有し、原発のない世界をつくるための人々のつながりを強化できたことは有意義でした。
しかし、国連本会議においてもその成果文書においても、原発についての言及は全くありませんでした。特に途上国や新興国が「持続可能な開発」の手段として原発を推進する可能性に疑問が投げられることがなかったことは残念です。日本政府が福島で起きたことの教訓を伝える役割を全く果たさなかったこと、また、開発と環境が主題である国際会議にて各国代表の議題として原子力とりわけその危険性の問題が取り上げられなかったことは深く反省されねばなりません。
- 再生可能エネルギー推進・普及のための具体策が不十分、経済の転換も議論されず
このたびの会議では、国連事務総長による「すべての人に持続可能なエネルギーを」というイニシアティブなど、再生可能エネルギーについての言及はあったものの、市民社会が求めていた数値目標や期日、アクセスなどの具体的な項目が成果文書に盛り込まれることはありませんでした。
ピースボートは、地球規模での持続可能な社会の実現のためには消費や経済のあり方を根本的に見直す必要があると訴えてきました。地球上のすべての人が安全なエネルギーを手にするためには、再生可能エネルギーを基軸とし、地域住民が主体となる経済への転換を世界規模で模索することが急務です。そのための具体的な道筋を各国政府、とりわけ日本をはじめとした先進諸国が示すことができなかったことを残念に思うとともに、早急にその実現に向けた努力をはじめるよう呼びかけます。
- 世界の軍事費、武力紛争への言及の欠如
リオ+20の本会議では、気候変動をはじめとする地球環境問題が潜在的に引き起こす武力紛争について触れられることはありませんでした。また、成果文書での言及も見られず、このことは市民社会からの成果文書に対する厳しい指摘でも触れられています。市民レベルではピープルズ・サミットにおいて活発な議論や、「軍事費を開発に回そう」と呼びかけるアクションが行われたものの、政治の舞台におけるこの問題認識は全く不十分であると言わざるを得ません。年間1兆7000億ドルにも登る世界の軍事費を規制し、減らし、その資源を環境、貧困、平和、人権、エネルギー対策に回すことを世界各国に対して緊急課題として引き続き求めます。
- 狭い「国益」主義を超え、地球規模の利益のために手をつなごう
このたびの会議では、市民社会の声が多く発信され、政府と対話の機会も多くあったにもかかわらず、その声が正しく反映されたと言うことは残念ながらできません。また、各国代表は自国の狭い意味での短期的な「利益」に執着し、地球規模課題に取り組むために協力する姿勢を見せることなく、結果として議論は平行線をたどることになりました。
しかし、世界から約5万人が集まった市民社会の熱気やピープルズサミットの盛り上がりは、市民レベルで新しいつながりを生み出し、新しい可能性を示しました。私たちは、政府に対してこうした市民の声に耳を傾けるよう引き続き求めていきます。
ピースボートは、リオ+20において連携した国内外のNGO、また福島の市民グループや学生たちとさらに連携を深めて、核のない自然と共生する発展をめざして行動を展開していきます。