2012年6月20〜22日、ブラジルのリオデジャネイロにて国連持続可能な開発会議(リオ+20)が開催されます。世界各国の指導者や市民社会代表が集まるこの会議に際して、ピースボートは、とりわけ2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原発のメルトダウン事故の経験をふまえ、以下のことを訴えます。
- 福島の教訓に学び、脱原発を
福島第一原発から放出された大量の放射性物質による汚染は、大気、土壌、森林、海洋を通じ、地球全体へ広がりました。日本政府は事故の「収束」を宣言しましたが、実際には原発は未だにきわめて不安定です。作業員たちは、過酷な状況の中での労働を余儀なくされています。
広範な放射能汚染は、農業、漁業、畜産業に壊滅的な打撃を与えました。人々は避難するか、あるいは長期化する放射線被ばくの下で生活することを強いられています。母乳や子どもたちの尿から放射性物質が検出されたことは、命が将来の世代にわたって脅かされていることを物語っています。十分な補償がない中、地域は分断され、人々は失業や孤独、不安とたたかっています。食品や農産物の汚染は、全国で報告されています。汚染の全体像の把握と住民の健康管理を含む将来的影響の解明は、まだこれからの課題です。
原子力の「安全神話」はまやかしでした。自然の脅威を前に100%の安全はありえず、核技術はひとたび事故を起こせば取り返しのつかない結果をもたらします。原子力と人間は共存できません。今や日本の世論の7割以上が、脱原発の目標を支持しています。さらにその声は、2012年1月の「原発のない未来のための横浜宣言」1に表された通り、世界規模で広がっています。
日本はリオ+20において、福島の経験を世界と共有し、その教訓を踏まえた議論を主導する責任があります。ピースボートは日本政府にその責任を果たすことを求めると同時に、市民社会として、福島の声を届ける代表団を派遣します。
- 再生可能エネルギーを基軸とする地域主体の発展を
福島の事態は、原発に依存する社会システムの問題点をも浮き彫りにしました。原子力開発は、政府と産業界が一体化し、人々の命と権利をないがしろにする形で進められてきました。大量生産と大量消費、中央集権と大都市集中型の経済は、根本的に見直さなければなりません。再生可能エネルギーを基軸とし、地域住民が主体となる経済へと転換することが必要です。東日本大震災からの復興過程で、日本ではそのような多様な取り組みが進んでいます。
「発展」の定義を、経済規模ではなく、人間の発展、安全、権利そして自然との共生を基軸としたものへと改めるときです。地球上のすべての人が等しく安全に暮らし、自己実現のできる社会に向けて、私たちは努力をしなくてはなりません。
- 軍事費を持続可能な発展に回そう
リオ+20で議論されるように、食料、水、天然資源、エネルギーの分配とアクセスをめぐる問題が、今日の深刻な国際課題になっています。気候変動をはじめとする地球環境問題は、武力紛争の潜在的な要因になっています。その一方で、世界の軍事費は年間1兆7000億ドルにものぼり、世界中で武器の生産と取引が続いています。これは人間の生存に対する危機的な状況です。私たちは、グローバル9条キャンペーンとして呼びかけてきたとおり、軍事費を規制し、減らし、その資源を環境、貧困、平和、人権、エネルギー対策に回すことを世界各国に対して緊急課題として求めます。
- 地球市民として手をとり、地球規模の利益の追求を
これらの項目を実現するためには、世界の政府と市民が手を取り合い、努力を続ける必要があります。失敗例に学び、成功例にならい、互いに知恵を出し合い協力しなくてはなりません。目先の利益や国益のみを追求するのではなく、地球規模の利益を尊重する姿勢が不可欠です。同じ地球の上に暮らす人間として、この先の世代に持続可能な世界を残すべく努力するよう、私たちは呼びかけます。こうした取り組みの一環として、ピースボートは国際交流の船旅を続けていきます。
リオ+20は、人類や地球環境の未来がかかった重要な会議となります。各国代表らが「持続可能な開発目標(SDGs)」、「グリーン経済」等を議論する際に、上記の視点をしっかりと盛り込むことを望みます。そしてこれを機会に、多くの政府や市民がともに考え地球規模で行動する礎を築かれることを期待します。
2012年6月12日
ピースボート |