ピースボートの
「自衛隊のクラスター爆弾所有に関する公開質問状」への
防衛庁からの回答


公開質問状に対する回答
2003年6月18日
防衛庁
「1」について
1.航空自衛隊は、敵の着上陸侵攻に際し、侵攻部隊の陣地、戦車等の車両、物資の集積所等を攻撃し、これを阻止する作戦を行うため、通常やクラスター爆弾などの対地攻撃兵器を保有しており、このうち、クラスター爆弾については、装甲貫徹力・破片効果・焼夷効果〔注1〕を有する子爆弾を散布することにより、通常爆弾にはできないような広範囲の敵を攻撃する場合にしようすることとしている。
〔注1〕装甲貫徹力 :敵戦車等の装甲を貫く能力
破片効果 :敵車両等を破片により行動不能にする効果
焼夷効果 :敵の物資等を燃焼し使用不能にする効果
2.現在、航空自衛隊はCBU-87/B型のクラスター爆弾を保有している。なお、クラスター爆弾を含め、弾薬は、自衛隊の装備の能力発揮に不可欠なものであるので、保有数を公にすると国の安全が害されるおそれがあることから、保有数の公表は差し控えさせていただいている。
「2」について
憲法第9条第2項が保持を禁じている「戦力」とは、自衛のために必要最小限度を超えているものと解されており、同項の「戦力」に当たるか否かは、我が国の保持する全体の実力の問題であって、自衛隊の保持する個々の兵器については、これを保有することにより、我が国の保持する実力の全体が必要最小限度を超えることになるか否かによって、その保有の可否が決せられるものと考えているが、クラスター爆弾を保有することとしても、我が国の保持する実力の全体が必要最小限度を超えるものではなく、憲法上問題は生じないと考えている。

「3」について
1.専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう。

2.クラスター爆弾は、我が国の領域外において使用することは想定しておらず、上記のように、我が国防衛のため、敵の着上陸侵攻を阻止するために保有しているものであり、専守防衛の趣旨にかなうものである。

「4」について
1.クラスター爆弾については、特に1999年(平成11年)のコソブォ空爆以降、その子爆弾の一部が不発弾として残り、紛争終了後も一般人に被害を与える例が注目され、人道上の観点から国際的に様々な議論が出てきたものと承知している。

2.現在の国際的な議論については、特定通常兵器使用禁止・制限条約関連会合において、クラスター爆弾が他の爆弾等と比較して不発弾となる割合が特に高いとの証拠が示されたことはなく、また、現時点においてはほとんどの締約国が同爆弾の使用の禁止は必要ないとの立場であるものと承知しており、同爆弾を本条約の規則の対象に含めることについて合意が成立する見込みはないと認識している。他方、一部の国においては、クラスター爆弾の不発弾化を防止するための設計改良に関する研究が行われているものと承知している。

3.いずれにせよ、我が国は、我が国の領域外においてクラスター爆弾を使用することは想定していない。また、正に有事関連法案の目的の一つにされているとおり、万一我が国への侵攻事態が生起した場合には、政府として国民を戦闘地域等から安全に避難させることは当然のことであり、更に、戦闘終了後にあっても、政府としては、国民の生活基盤が確立されるよう、不発弾の処理等に万全を期すことは当然である。
このように、我が国がクラスター爆弾を使用する際には、民間人に被害が生じないよう配慮することとしている。

4.なお、クラスター爆弾が使用後に不発となった場合、個々の不発弾の処理は、不発弾処理の技能を有する専門の要員によって爆破により行われると考えられる。

「5」について
1.対人地雷は、敵の侵攻を遅滞ないし阻止し防衛火力を有効ならしめる手段として、また、部隊の配備が手薄となる地域に対人地雷を敷設して敵の侵攻を遅滞ないし阻止して、予備の部隊を投入するための時間を確保するために使用され、人の存在、接近又は接触によって爆発するように設計されており、主として地中に埋設して使用するものが多いものと承知している。

2.他方、クラスター爆弾については、地雷を散布するものと、子爆弾を散布するものがあるが、航空自衛隊が保有しているものは、敵の着上陸侵攻の際し、侵攻部隊の陣地、戦車等の車両、物資の集積所等を広範囲に攻撃し、これを阻止する作戦を行うために使用する子爆弾散布型のクラスター爆弾であり、対人地雷禁止条約のおける対人地雷には当たらない〔注2〕ものと考えている。
〔注2〕対人地雷禁止条約第2条(抜粋)
(1)「対人地雷」とは、人の存在、接近又は接触によって爆発するように設計された地雷であって、一人若しくは二人以上のものの機能を著しく害し又はこれらの者を殺傷するものをいう。(以下略)
(2)「地雷」とは土地若しくは他の物の表面に又は土地若しくは他の物の表面の下方若しくは周辺に敷設されるよう及び人又は車両の存在、接近又は接触によって爆発するように設計された弾薬類をいう。

3.クラスター爆弾の不発弾については、これを取得しようとして被害にあう民間人がいることは承知しているが、上記のようにクラスター爆弾と対人地雷は使用目的、使用方法等を異すること、また、クラスター爆弾の不発の子爆弾の状態も様々であると考えられることから、一概に両者を同列に論ずることは適当でないと考えている。

4.また、特定通常兵器使用禁止・制限条約の枠組みにおける議論においても具体的な不発率について議論が行われてきたわけではなく、クラスター爆弾が他の爆弾等と比較して不発弾となる割合が特に高いとの証拠が示されたこともないと承知している。
 したがって、クラスター爆弾の不発弾が発生することをもって、自衛隊がクラスター爆弾を保有することが対人地雷禁止条約の精神に反しているとは言えないと考えている。

5.防衛庁としては、クラスター爆弾は我が国の防衛上必要なものと考えているが、クラスター爆弾の規制等にかかる問題については、他国や国際世論等の今後の動向を見極める一方で、我が国の安全を維持していくとの視点も考慮する必要があり、防衛庁としては、我が国の平和と安全を守るという任務を踏まえつつ、慎重に対応してまいりたい。

「6」について
お尋ねのような調査は行っていないが、「4」についてで述べたように、我が国がクラスター爆弾を使用する際には、民間人に被害が生じないように配慮するとしている。

「7」について
国際条約等の解釈については、防衛庁の主管ではないと考えられることから、お答えは差し控えさせていただきたい。
参考:ピースボートによる「自衛隊のクラスター爆弾所有に関する公開質問状」


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ピースボートセンターとうきょう・担当:中原
(Tel:03-3362-6307/Fax:03-3362-6309/ウェブサイトからのお問い合せはこちら)
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