自衛隊のクラスター爆弾所有に関する
公開質問状


日本国防衛庁
石破防衛長官殿
2003年5月11日

 わたしたちは、防衛庁が明らかにした、自衛隊による非人道兵器クラスター爆弾の所有の事実を知り、おおきな衝撃を受けると共に、同爆弾の即時全面廃棄を日本国防衛庁に強く訴えます。

 わたしたちは世界中の人々との民間交流を進める中で、ベトナムやアフガニスタン、コソボ、そしてイラクなどの国々を訪問し、対人地雷やクラスター爆弾の被害状況の調査を行ってきました。そこでは、米英軍が使用したクラスター爆弾の被害を受け、傷ついたり犠牲となった子供たちや家族にも出会いました。それはまさに戦争とは全く関係のない一般市民が、無差別に殺傷される現場でした。このことはアフガニスタンにて実際に地雷除去を行っているNGOや、国際赤十字、ICBLなどの国際機関が、人道上の見地から同爆弾の禁止を強く国際社会に求めていることからも明らかです。

 また、防衛庁が明らかにしたクラスター爆弾所有の事実は、同爆弾の特性を考えても、さきに行われた対人地雷禁止条約批准という、日本政府の外交方針とも大きく矛盾をしていると考えます。イラクや朝鮮半島情勢の緊張で、一時は廃絶の世論が高まっていた対人地雷の有用性が再び議論されようとしています。そのような時期に、日本政府の行った「対人地雷全面破棄」は、国際社会では大きな反響を呼び大きな評価を受けました。しかし、一方でこのような非人道兵器の所有していたという事実は、国民のみならず国際社会を欺く、不誠実かつ非人道的行為だといわれても致し方ありません。

 福田官房長官は会見にて、「専守防衛という観点から必要であれば、廃棄する理由はない」と発言をしています。しかし、兵器として一端使用されれば広範囲の障害物を破壊し、多くの子爆弾が対人地雷化し、不特定多数の人間を無差別に殺傷するだけでなく、その後の処理にも莫大な時間と労力が必要なクラスター爆弾の保有は、明らかに対人地雷全面禁止条約の精神に反すると同時に、このような無差別殺戮兵器は禁止していこうという、国際世論に逆行する非人道的な行為だと言わざるをえません。

 石破防衛長官、自衛隊がクラスター爆弾を所有することを正当化するならば、また情報公開法に則った法の精神を尊重されるならば、早急に以下の質問に文章にてご回答下さい。なお、回答内容は公開させていただきます。
 私たちは大臣の誠意ある対応を期待いたします。

自衛隊の所有しているクラスター爆弾は、どのような戦闘を想定して、何に向かってどのような方法で使用されるのですか。また、現在の保有状況と共に具体的に教えてください。
1. 自衛隊の所有しているクラスター爆弾は、どのような戦闘を想定して、何に向かってどのような方法で使用されるのですか。また、現在の保有状況と共に具体的に教えてください。
2. クラスター爆弾の保持は、戦力不保持を謳った日本国憲法第9条に違反すると思いませんか。違反しないと思われるならば、その根拠を教えてください。
3. アフガン戦争、イラク戦争でのクラスター爆弾の使用状況を考えて、クラスター爆弾の保持は、日本政府が防衛の基本方針としている「専守防衛」にも違反すると思いませんか。思わなければその根拠を教えてください。
4. 一端、このような兵器を使用した場合、多くの民間人が犠牲になる可能性があります。そのことををどのようにお考えですか。また、使用後の不発弾処理の方法を具体的に教えてください。
5. 投下後、実質上地雷となるクラスター爆弾の保持は、日本政府も批准をしている対人地雷禁止条約、およびその精神に違反していると思いませんか。思わなければ、その根拠を教えてください。
6. クラスター爆弾を日本国内で使用すると仮定した場合、海外における民間人への被害の調査、そして、同じく海外における除去方法の調査を当然行われていると思われます。その調査内容について、どの国の、どの期間への調査を行われているかお答えください。
7. クラスター爆弾の使用に関しては、「その禁止する他の国際法規もない」というのが政府見解だと思われます。その論拠を教えてください。
ピースボート地雷廃絶キャンペーン代表
中原 大弐


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