reporter's eye
バックナンバーVol.6
[24歳が集まって]
 2月8日。この日は船内屋台・波へいで、待ちに待った企画『24歳集まれ!!』があった。
 待ちに待った、というのも、10日くらい前に一度企画はされてはいたのだけれど、船の揺れが激しくてお流れに──「24歳がたくさんいるなぁ」と薄々は気づいていたけれど、まだ、私の知らない「24歳」がいるはず…と、ワクワク。一度お流れになっただけに、早く集まりたくてウズウズ…そんな気持ちで波へいに向かった。

 結局今回、この企画に集まったのは20人前後。集まった人の中から、「誰々が来てない」とか、「あの子は寝てる」という声もあがっていたから、きっと30人以上はいると思う。この人数は多分、船内の同い年ランク上位3位以内に入るくらいではないだろうか。そして、それは偶然じゃなくて「24歳」が多い理由があるんだと私は思う。

 「24歳」にもなると、大半の人は「社会人」になった経験がある。自分のことだけで精一杯で、無我夢中で駆け抜ける新人でもなくて、かといってベテランでもない。でも、仕事に慣れて少しずつ周りのこと、自分のことを考える余裕は出てくる。たぶん、おそらくだけれど、いろいろな意味で「自分はこのままでいいのかなぁ…」と、考える時期なんだと思う。
 このままじゃ何となくダメなような気がして、でも、何がどうダメなのか、何をどうしたらいいのか分からない。その何かを探しに、ピースボートに乗る。24歳っていうのはそんな頃なんじゃないかな…。全然そんなつもりじゃない人もいると思うけど、そういうことにしておきましょう(笑)

 さてさて、そんな『24歳飲み会』。北は岩手県から南は宮崎県まで。職業もフリーター、銀行員、栄養士、美容師、保育士、販売員、ピースボートスタッフ、留学生、営業マン、OL、介護士、歯科衛生士…と本当に様々な24歳が集まった。
 ただ「同じ年」というだけで不思議と親近感が湧いて、楽しかった。社会について、自分について真剣に語っていたかと思うと、ゲームでぎゃーぎゃー大騒ぎ…こんなにも「同級生」を嬉しく思ったのも久しぶりだった。

 自分の夢と現実の狭間で揺れる…それが24歳。この時にピースボートに乗れたことが、私にとってはとっても、とっても良い経験になっていると思う。改めて、この船に乗れたことを幸せに思った「24歳飲み会」だった。
(島田綾)
[アフロヘイギ・ライブ]
 午後5時半。何台ものバスがリオ市内を走っていた。目的地はライブハウス。ファベーラ(スラム街)から生まれたバンド「アフロヘイギ」のライブを見に行くのだ。

 お金のあるなしで、住む場所も未来の明るさも、すべてが決まってしまう社会。それが、ファベーラに住む人たちの大いなる悩みであり、またファベーラの外に住む人たち――私たちをふくめて――にとっても考えなければならないことのひとつ、であることはまちがいない。
 そして彼らの多くが、自分たち自身でも、そんな状況を改善していこうと努力している。そのひとつがNGO「アフロヘイギ」のバンドだ。未来に希望がもてず、犯罪などに走りやすくなってしまうファベーラの子どもたちに、音楽やダンスを使って「こんなカッコイイのもあるよ」とアピールする。本当にカッコイイから、子どもたちにとって彼らはあこがれの的。今夜みるのは、そんな「アフロヘイギ」から3つのバンドが出演するライブだった。

 会場はいわゆる「ライブハウス」そのままで、ステージも観客席の目の前。スタート時はCDでの音楽だったのだが、おおいに盛りあがっていた。
 個人的にいちばん気に入ったのは「アフロ・ラタ」というバンドだ。「ラタ」とは「缶」のことで、彼らはその名のとおり、色を塗ったドラム缶やポリタンクを打楽器に変えていく。目の前30センチ先の世界で繰り広げられるパフォーマンスにはもう、釘づけ。彼らの打ち鳴らすドラムの音が直に心臓に響く、そんな感触もすごく気持ちよかった。踊らなくても、ただ立ってるだけで汗が吹き出るほど蒸し暑いライブハウスで、でも私はちっとも不快じゃなくて、その熱さごと、この空間ごと気に入っていた。こんなカッコイイ彼らと同じ時間を共有できていることが、自分がこの空間にいられたことが、何よりも嬉しかった。

 リオの夕暮れ時。
 昼間は倒れそうなくらい暑かったのに、一気に街は涼しくなる。丘の斜面を埋めるファベーラの家々の灯りが、ひとつまたひとつとともっていく。夕闇をバックにチラチラゆれる灯りを、単純にキレイだなと思う。もしかしたら、リオの暑さ、あのライブハウスの熱さの正体は、丘の斜面にへばりつくたくさんのファベーラから吹きおろす熱い風、だったのかもしれない――あの灯りのひとつひとつに「アフロヘイギ」を生み出した、あるいはそれと同じような、あつい思いがあるのかもしれない……なんていう、ちょっと酔ったようなことを考えてしまうくらい、私はリオデジャネイロを、そして「アフロヘイギ」を、好きになった。
(久野良子)

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