□1月2日 マパニケ村を訪ねて
アジア太平洋戦争中の1944年11月、旧日本軍はフィリピン・マパニケ村を急襲。男性は拷問を受けたり殺されたりし、女性たちは集団レイプを受けた。"生き残った"ロラたち(おばあちゃん)は、戦後50年以上たったいま、自分たちの体験を口に出して語り始めている――。
このツアーは、そんなロラをたずね、彼女たちの証言を聞くというもの。戦争が引き起こすモノはなんなのか、女性たちはどうなってしまうのか…そんなことを考えた1日をレポート。
これは、マパニケ村から少し離れたところにある、レッドハウスと呼ばれる建物。「このあたりに抗日ゲリラがいる」ということでマパニケは襲われ、旧日本軍の拠点だったこの建物の中でロラたちは集団レイプをうけたという。
彼女たちが閉じこめられた部屋だけはいまも鍵がかかり、公開されることはない。
建物の中で、ロラたちの証言を聞いた。日本軍が村を襲った時のこと、ここに連れてこられた経緯やレイプされた時のこと──あまりにつらい体験に、ほとんどのロラたちが涙をぬぐいながらも一生懸命話してくれる。
つらいのは、話をするロラだけではない。ここにいるロラたちひとりひとりに、つらい体験がある。
他のひとが話している間、ずっと顔を覆っていたロラもいた。この光景を見るだけで、胸がつぶれそうだ。
彼女たちは、自分たちのことを「犠牲者」ではなく「生存者(サバイバー)」と呼んでいる。「こういう体験をする女性たちがもう増えないように、戦争をこれ以上起こしてはならない」と力強く訴える姿が印象的だった。
最後に彼女たちが歌ってくれたのは、当時の体験を細かく詩にしたもの。本来なら全員で歌ってもらうはずだったのだが、「ひどく感情的になってしまうロラもいる」ということから、代表者だけが前にでて歌ってくれた。
村の教会に移動して、昼食と交流会。参加者がツアー前につくってきた「福笑い」は、ロラだけでなく村の子どもたちにも大人気。
プレゼントしようと持ってきたのは、記念品のカレンダーと鈴、そしてこれも参加者たちでつくった折り鶴。だけどこのあと、ロラたちを支援する団体「アセント」から、逆に記念品をもらってしまった。
形あるモノないモノ、いろんなモノを受け取った1日。これから私たちができることは何かないのか、そんなことを考えさせられる1日だった。
(久野良子)
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