日本中が沸いた2002年・日韓共催W杯。この大会に16年ぶりに参加したのが、ここポルトガルです。「ポルトガルという国もサッカーも、日本人と相性がいい」と語るのはサッカー通でおなじみの水先案内人・金丸知好さん。
今回のキーワードは「ファド」。金丸さん曰く「国もサッカーも『ファド』」なんだとか。それってどんな意味なんでしょう?? |
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――まず、リスボンってどんなところなんですか?
94年のピースボートクルーズ(第16回・地球一周の船旅)でリスボンに行ったんですけど、何というか…落ち着きますよ。いわゆる「ヨーロッパの国の首都」という派手さはありません。高い建物もけっこうあるんですけど、最近東京にできた「シオサイト」のような"先進性"もなければ、バルセロナみたいな"明るさ"もありません。
ある意味、日本的なんです。なんだか、わびし〜い感じがして。僕はあのわびしさ、というか、落ち着いた感じがけっこう好きなんですけどね。日本人の多くは同じように感じるんじゃないでしょうか。
ポルトガルには「ファド」という、ギターの伴奏で人生の悲哀や寂しさ、失恋などを歌う哀愁を込めた音楽があるんですけど、この「ファド」が何とも言えず、似合う町ですよ。ポルトガルと言えば、「ファド」ですね(笑)
――そんな、「わびしい」だなんて…。では、本題のサッカーは?
サッカーもけっこう「わびしい」ですよ(笑)
ポルトガルのサッカーってけっこう地味なんです。なんかこぅ、"泥臭い"感じ。サッカーのスタイルも日本に似てますよ。小柄な選手が多いあたりなんかも。
隣国スペインに代表されるような「素早いパス回し」なんかありません。ゲーム全体をキレイにまとめようとして、結局負けちゃったり。そういうゲームが多いんですよ。
ポルトガルと言えば、ご存じのように2002年W杯に出場していましたよね。実は、ポルトガルのW杯出場は今回が3回目だったんです。1966年、1986年、そして2002年、ざっと20年に1回しか出場していません。
日本では、ポルトガルって「強い」イメージがあるみたいですが…出場経験がたったの3回ってけっこう意外でしょう?
2002年のW杯に出場できたのも、フィーゴやルイコスタ、といったスター選手がそろった「当たり年」でもあったからなんです。
ちなみに、これらのスター選手は普段はスペインを始めとする、外国リーグで活躍しています。ポルトガルってあんまりお金がないから、いい選手は外国に売っちゃうんです。
ポルトガルの初のW杯は1966年・イングランド大会。この時、ポルトガル代表は初出場にして3位、という快挙を成し遂げているんです。初出場でこれほどの成績を残したナショナルチームは、ポルトガル以外にはクロアチアくらい。これは本当にスゴイことなんです。
当時、W杯3連覇を狙う、あのペレのいたブラジルにも勝っています。また、注目すべきは準々決勝の対・北朝鮮戦。0-3と北朝鮮にリードを奪われ、ゲームが決定的になったかと思いきやそこから大逆転、5-3でゲームを終えたんです。スゴイでしょう?
…で、その「スゴイこと」をやってのけたのが「黒豹・エウゼビオ」です。この66年大会はエウゼビオなしには語れません。先に書いた対・北朝鮮戦においての大逆転はこのエウゼビオによるもの。0-3とリードされた後、彼が瞬く間に4ゴールを上げ、ポルトガルを勝利に導いたんです。エウゼビオはこのW杯において9ゴールを成功させ、大会得点王にも輝きました。
実は、このエウゼビオの存在が当時のポルトガルの状況をよく表しているんです。
エウゼビオは、現在のポルトガル出身の「ポルトガル人」ではありません。彼はモザンビーク出身のポルトガル人。当時、ポルトガルはまだ、モザンビークやアンゴラなど、アフリカ地域に植民地をたくさん持っていたんです。
アフリカ諸国がサッカーにおいて注目を集めるようになったのは90年代に入ってからですが、あの地域の人たちの身体能力は、おそらく「世界一」ですよね。その世界一の身体能力を持つ選手をたくさん使うことが出来たのが、当時のポルトガルなんです。言ってしまえば、「大航海時代の遺産」で食ってたんですよね。
何と言うか…やっぱり「ファド」です。
――「やっぱり」って…。
あ、そういえば、元パラグアイにいた、広山望という日本人選手が今期からポルトガルリーグでプレイしています。「プラガ」という北部にあるチームです。ただ…ポルトガルリーグは日本ではほとんど報道されないので、広山の活躍を見るのは非常に難しいです。日本人には、ポルトガルリーグの泥臭さは受け入れやすいと思いますから、もっと注目されるようになるといいんですけどね。
もちろん、日本人以外にもポルトガルリーグで活躍している外国人選手もいますよ。例えば、ブラジルのジャルデルが、リスボンのスポルティングでプレイしてたし…スポルティングと言えば、元マンチェスター・ユナイテッドのピーター・シュマイケルもプレイしていたことがあります。…あぁ、でも、彼はマンチェスター・ユナイテッドにいると、UEFAカップやら、チャンピオンズリーグやら、いろいろあって試合数が多くなるのに疲れちゃったみたいで、言わば「保養地」を求めてポルトガルに来たみたいです(笑) 結局、今はポルトガルを離れてマンチェスター・シティーにいますけど。
やっぱり、ポルトガルのあの「わびさび」感って落ち着くんですよ(笑)
――では、今後のポルトガルサッカーの展望を。
何と言っても注目すべきは2004年のヨーロッパ選手権ですね。ポルトガルは開催国ですから、必然的に注目度大ですよ。
現在のポルトガル・ナショナルチームには、フィーゴ、ルイコスタなどのスター選手がそろっています。それらの選手の「最後の国際大会」になるでしょうから、やっぱり注目度大です。
――イタリアやスペインの華々しさと比べると、何だか………
要するに、国もサッカーも「ファド」なんですよ(笑)
でも、あの「ファド」な感じも含めて、日本人とポルトガルサッカーは相性がいいですから、注目してみると、けっこうオモシロイと思いますよ。
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